(1)
(1)
C の元を極形式で表す:
z=r(cosθ+isinθ)(r>0,−2π<θ<2π)
C は ∣∣z−21∣∣=21 と表されるため,これに代入をすると
∣∣rcosθ−21+irsinθ∣∣=21
より
(rcosθ−21)2+r2sin2θ=41
これを展開して整理すると
r2−rcosθ=0
であるため,r=cosθ である。
よって C の元は z=cosθ(cosθ+isinθ) と表されるため,ド・モアブルの公式より
z1=cosθ1(cosθ−isinθ)=1−itanθ
である。よって z1 の実部は 1 である。
なお,−2π<θ<2π であるため,虚部は任意の実数を取る。
別解
別解を2つ紹介します。今回の場合は問題ないのですが,これらの方法では,虚部のとりうる値を調べることが難しくなるため注意が必要です。
別解1
C の元は z=21cosθ+21+21isinθ(−π<θ<π)と表すことができる。
よって
z1=1+cosθ+isinθ2=(1+cosθ)2+sin2θ2(1+cosθ−isinθ)=2+2cosθ2(1+cosθ−isinθ)=1−1+cosθsinθi
より z1 の実部は 1 である。
別解2
z が満たす式は ∣∣z−21∣∣=21 である。
辺々を2乗して整理すると
zzˉ−21z−21zˉ=0
となる。z=0 であるため,辺々を zzˉ で割って整理すると,
21(z1+z1)=1
であるため,z1 の実部は 1 である。
(2)
(1) より α1,β1 は実部 1 の複素数であることに注意して変数を設定しましょう。
(2)
複素数平面上で α21+β21 のとりうる範囲を D とおく。
(1) より α1=1+ai,β1=1+bi と表される。また,α,β は異なるため,それぞれの偏角もまた異なる。ゆえに α1,β1 は異なる。したがって a=b である。
よって
α21+β21=(2−a2−b2)+2(a+b)i
と表される。
x+yi∈D(x,y は実数)を取ると,異なる2実数 a,b が存在し
{x=2−a2−b2y=2(a+b)
を満たす。
ここで a+b=p,ab=q とすると,二次方程式
t2−pt+q=0
は相異なる2実数を解に持つ。判別式は p2−4q であるため,実数 ,q は p2−4q>0 を満たす。
x,y を p,q で表すと
xy=2−(a2+b2)=2−(a+b)2+2ab=2−p2+2q=2(a+b)=2p
となる。
よって,x,y は次の条件を満たす。
- ある実数 p,q があって,
⎩⎨⎧p2−4q>0x=2−p2+2qy=2p
を満たす。
p2−4q に,順に q=21x+21p2−1,p=21y を代入することで
p2−4q=p2−2x−2p2+4=−41y2−2x+4
を得る。
よって,x,y が満たす条件は −41y2−2x+4>0 となる。整理して x<2−81y2 となる。
よって,下図斜線部(境界は含まない)

α1,β1 を 1+ai,1+bi と置く際,z1 の虚部が任意の実数を取ることを主張するとベターです。
また,異なる α,β に対して,異なる α1,β1 が対応することを記述できるとなお良いでしょう。
同値変形についての補足
より高いレベルを求めるのであれば,q,p を削除することにより次の3条件同値であることをキチンと認識しておきましょう。
上から下は代入するだけです。下から上が従うことは,パラメタを追加しているだけです。
- ある実数 p,q があって,
⎩⎨⎧p2−4q>0x=2−p2+2qy=2p
を満たす。
- ある実数 p があって,
{4−2x−p2>0y=2p
を満たす。
- x,y は
−41y2−2x+4>0
を満たす。
(3)
極方程式を用いて計算してみましょう。
(3)
(2) の境界 x=2−8y2 は,原点を焦点,x=4 を準線とする放物線であるため,極形式で表すと
r=1+cosθ4
となる。参考:二次曲線(楕円,放物線,双曲線)の極座標表示
γ=R(cosθ+isinθ)(R>0,−π<θ<π)と表す。
γ1=R1(cosθ−sinθ)
である。
γ は D に属さないため R≧1+cosθ4 である。
cosθ≧0 の場合
Re(γ1)=R1cosθ≦41cosθ(1+cosθ)
(等号成立は γ が境界線上にあるとき)を得る。
41cosθ(1+cosθ)=41(cosθ+21)2−161
であるが,今 cosθ≧0 の場合を考えているため,γ1 の実部は cosθ=1 のとき最大値 21 を取る。
cosθ<0 の場合
Re(γ1)=R1cosθ>41cosθ(1+cosθ)
(等号成立は γ が境界線上にあるとき)を得る。
cosθ<0 より γ1 の実部は cosθ=−21 のとき最小値 −161 を得る。
以上まとめて,γ1 の実部の最大値は 21,最小値は −161 となる。
別解
ライターが最初に解いたときの解答案です。xy 座標で考え,実数条件を元に二次関数の解の存在条件を考えます。方針自体はシンプルですが,少々冗長になってしまいます。
別解
(1) と同様に考えると,実数 t について ∣z−t∣=∣t∣ 上を動く0 ではない複素数 z に対して,z1 の実部は 2t1 である。
よって ∣z−t∣=∣t∣ が D の補集合と交わる t の範囲を求めればよい。
以下,z=x+yi と表して xy 平面上で考える。
∣z−t∣=∣t∣ は
(x−t)2+y2=t2
と表される。y について整理すると
y2=2tx−x2
となる。
(x,y) が y2=2tx−x2 を満たし,さらに D の補集合と交わる場合,
- ある実数 x,y が存在し,
⎩⎨⎧x≧2−81y2y2=2tx−x2⋯(a)⋯(b)
を満たす。
(a) に (b) を代入することで
x≧2−41tx+81x2
整理して
x2−2(t+4)x+16≦0
を得る。
また,(b) を満たす実数 y が存在するときは 2tx−x2≧0 であるときに限る。
以上より次の条件を考えればよい。
- ある実数 x が存在し,
{x2−2(t+4)x+16≦02tx−x2≧0⋯(a′)⋯(b′)
を満たす。
(a′) を変形すると
{x−(t+4)}2−(t2+8t)=0
であるため,軸は x=t+4 である。また,(a′) が実数解を持つのは t2+8t≦0 の場合である。これを解くと t≦−8,0≦t を得る。
それぞれの場合に (a′) の解と (b′) の解が共通部分を持つかどうか確かめる。
以下 f(x)=x2−2(t+4)x+16 とおく。
t<0 より
(b′) を解くと 2t≦x≦0 となる。
不等式
2t<t+4<0
を解くと
t<−4,t<4
である。これは t≦−8 に含まれる。
よって 2t≦x≦0 の範囲で f(x) の最小値は f(t+4)=−t2−8t≦0 である。一方 f(0)=16>0 より f(x)=0 は 2t≦x≦0 の範囲で解を持つ。
以上より t≦−8 の場合,条件を満たす実数 x が存在する。
このとき (b′) を解くと 0≦x≦2t である。
0<t+4<2t を満たすとき,4≦−8 の場合と同様に (a′),(b′) 両方を見たす実数 x が存在する。この不等式を解くと t>−4,t>4 であるため,t>4 の場合,解が存在する。
t<−4 のとき,t+4<0,f(0)=16>0 であるため,f(x) が 0<x<2t で解を持つには f(2t)≦0 を満たす必要がある。
f(2t)=4t2−4t2−16t+16=−16t+16
であるため f(2t)≦0 を解くと t≧1 である。
以上より t≧1 の場合,条件を満たす実数 x が存在する。
こうして ∣z−t∣=∣t∣ が D の補集合と交わる t の範囲は
t≦−8,1≦t
である。γ1 の実部の範囲は 2t1 のとりうる範囲であるため
−161≦2t1≦21
を得る。
ゆえに γ1 の実部の最大値は 21,最小値は −161 である。