第1問
1,2
最小多項式が重根を持たないことと対角化可能であることの同値性を用いましょう。→行列の対角化の意味と具体的な計算方法
1の解答
A の固有方程式は
∣A−tI∣=∣∣a−t0022a−t0043a−t∣∣=(a−t)(2a−t)(3a−t)
である。
a=0 のとき,固有値が異なるため対角化可能である。
a=0 のとき
A2A3=⎝⎛000000800⎠⎞=⎝⎛000000000⎠⎞
より最小多項式は x3 であるが,これは重解を持つためこのとき対角化可能ではない。
ゆえに a=0 である。
2の解答
B の固有多項式は
∣B−tI∣=∣∣t003b−t0062b−t∣∣=t(b−t)(2b−t)
である。
b=0 のとき,固有値が異なるため対角化可能である。
b=0 のとき,1と同様に計算すると最小多項式が重解を持つため,対角化可能ではない。
ゆえに b=0 である。
3
可換性から条件を絞りましょう。
3の解答
AB−BA=0 となる a,b を計算するとよい。
AB−BA=⎝⎛a0022a0043a⎠⎞⎝⎛0003b0062b⎠⎞−⎝⎛0003b0062b⎠⎞⎝⎛a0022a0043a⎠⎞=⎝⎛0003a+2b2ab01212a+8b6ab⎠⎞−⎝⎛0006a2ab01218a+4b6ab⎠⎞=⎝⎛000−3a+2b000−6a+4b0⎠⎞
であるため,AB−BA=0 であることと 3a=2b は同値である。
第2問
この問題では,「可換であれば同時対角化可能であることの証明」と同様な議論を用います。
解答
ST=TS より
STvi=TSvi=λiTvi である。よって Tvi は固有値 λi に関する固有ベクトルである。
また,
STvTSv=Sαv=αi=1∑rSvi=i=1∑rαλivi=Ti=1∑rSvi=Ti=1∑rλivi=βλ1v1+i=2∑rλiTvi
である。ST=TS より上の2つは等しい。移項することで
0=(α−β)v1+(αv2−Tv2)+⋯+(αvr+Tvr)
である。
ここで (α−β)v1 は固有値 λ1 に属する S の固有空間,αvi−Tvi は λi に属する S の固有空間である。
さて,固有空間は直和に分かれるため,
⎩⎨⎧(α−β)v1=0αv2−Tv2=0⋮αvr−Tvr=0
よって α−β=0 である。
可換性と同時対角化可能の同値性はしっかりと覚えておきましょう。