ケーリー・ハミルトンの定理(2次,3次,n次)
正方行列 に対して, という の多項式の の部分を に変えたものはゼロ行列になる。
ケーリー(Cayley)とハミルトン(Hamilton)の順番を入れ替えて「ハミルトン・ケーリーの定理」と言うこともあります。
二次の場合
二次の場合
ケーリー・ハミルトンの定理の意味を理解するために,2×2の場合について考えてみます。行列式についての知識が必要です。
この節では とします。
固有多項式は, です。
これは についての二次多項式ですが, の部分に強引に行列 を入れたものを考えるとゼロ行列になる,というのがケーリー・ハミルトンの定理です。
トレースと行列式を用いて と書くこともできます。
サイズ2の場合については成分計算で簡単に証明できます。
これらを全て足すと確かにゼロ行列になる。
三次の場合
三次の場合
が3×3行列の場合は固有多項式 は の三次多項式になります。計算はやや煩雑なので,結果のみ書いておきます。
ただし, は の二次の主小行列式の和:
n次,対角化できる場合の証明
n次,対角化できる場合の証明
ケーリー・ハミルトンの定理を証明します。
を 行列とし,その固有多項式を とおく。
の部分に を入れたものを と書く( は多項式, は行列)。
・ が対角化できる場合
なる正則行列 が存在する。ただし, は対角行列で,対角成分には の固有値 が並んだものである。
よって,任意の正の整数 に対して, が分かる。
これらの線形結合をうまく取ることで, となるが, は の固有値なので である。よって,上式の右辺はゼロ行列。
つまり, より,
・対角化できない場合
摂動を加えると対角化できる場合に帰着できる。摂動 の極限を考えればOK( は連続関数)。
対角化できない場合をごまかしました。完璧な証明をご所望の方は線形代数の本を参照して下さい。
高校数学で行列を扱っていたころは,2×2のケーリー・ハミルトンが活躍していました。
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