リーマンの可除特異点定理
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は, を孤立特異点として持ち, 上で正則かつ有界な関数とする。このとき, は除去可能特異点である。すなわち, を適切に追加で定めれば は 上で正則にできる。
ローラン展開 の記事における特異点の分類・特に可除特異点について思い出しましょう。
を孤立特異点とする複素関数 の 周りのローラン展開を とするとき, で であるとき,すなわちローラン展開の主要部が存在しないとき, を可除特異点という。
リーマンの可除特異点定理(特異点除去定理)は,孤立特異点がいつ可除なのかについての定理です。なんと有界性だけで可除であることがわかるのです。
復習:可除特異点の例
復習:可除特異点の例
sinc関数: は を可除特異点として持ちます。実際, とローラン展開されます。 は で定義されませんが,追加で と定義してやると, を含む領域で正則な関数になります。
は を可除特異点として持ちます。実際, とローラン展開されます。 は で定義されませんが,追加で と定義してやると, を含む領域で正則な関数になります。
これらの例は,ローラン展開が簡単に計算できるため,リーマンの可除特異点定理を用いずとも が可除であることを示せます。
リーマンの可除特異点定理が効いてくるのは,次の章のように一般的な議論をするとき・ローラン展開が具体的に与えられていないときです。
応用:極の位数に関する定理
応用:極の位数に関する定理
留数定理 で紹介した定理3を思い出しましょう。
-
を の孤立特異点とする。 ( は を零点に持たない正則関数) と書けたら, は の 位の極である。
また が となる最小の であるとき, は の 位の極である。 -
が の 位の零点なら, は の 位の極である。
これはリーマンの特異点除去定理を用いて証明できます。
前半
は の近傍で正則であるため, において とテイラー展開される。よって の 周りのローラン展開は と表される。こうして は を 位の極に持つ。
後半
方針
- 前半を踏まえると が正則であることを示せばよい。
- リーマンの可除特異点定理を思い出せば の有界性を示せばよい。
とおく。
が で に収束するため,任意の に対し, を適当に取ることで を得る。すなわち であれば であることが得られる。
この不等式は が で有界であることを意味する。
よってリーマンの特異点除去定理より は の可除特異点である。このことは が 全体で正則となることを意味する。
よって とおけば, は 上で正則な関数 を用いて と表されるため,前半の主張より を 位の極に持つ。
リュウビルの定理 の応用と同じような流れで,関数の有界性を示した上で大道具を使う証明でした。
複素解析において有界性が非常に強力であることもわかりますね。より一般にはコンパクトという性質が登場します。興味のある人は集合・位相の教科書を読んでみましょう。
2の証明
2の証明は1の後半から簡単にできます。リーマンの可除特異点定理の直接的な帰結ではないです。
とおく。
であれば である。一方 である。
1 の後半から は で 位の極を持つ。
リーマンの可除特異点定理の証明
リーマンの可除特異点定理の証明
本質的には,リュウビルの定理 の証明のときに登場したコーシーの係数評価の拡張を行います。
コーシーの係数評価は,正則関数のテイラー展開の係数の評価となっています。しかし,同じように主要部を持つローラン展開の係数評価を行うこともできます。
上で とする。 の の周りのローラン展開を とおく。
ローラン展開の係数は と計算されるため が得られる。
こうして のとき となる。 より とすると右辺は に収束する。よって である。
こうして の級数展開は と,主要部が存在しないことがわかる。よって は可除特異点であることが従う。
おまけ:グッツマーの不等式
おまけ:グッツマーの不等式
ローラン展開の係数の公式から という不等式を証明しましたが,グッツマーの不等式というものを使うことで証明することもできます。
とする。複素関数 は で正則である。このときローラン展開ができ,それを とおく。また, は で最大値 を取るとする。
このとき,任意の に対して となる。 が で最大値 を取るとき となる。
を 中心の という記法をすることによって,ローラン展開を フーリエ展開 のように認識できます。前半の主張は,フーリエ展開における Parseval の等式(パーセバルの等式)を思い出すと納得がいくかもしれません。
こうして正則関数 の「絶対値」を考えるとき,ローラン展開における各係数を見ればよいことがわかります。
同時に正則関数 の有界性と,ローラン展開の係数の有界性が繋がることになります。
ローラン展開から任意の に対して である。
よって となる。なお であることを用いた。
仮定より は で最大値 を取るため となり求めるべき不等式 が得られる。
そもそもグッツマーの不等式は,コーシーの係数評価より強いことを主張しているため,即座に求めたい不等式が従います。
任意の に対し, である。なお,後半の不等式はグッツマーの不等式より従う。これより を得る。
係数評価を用いたスマートな証明が好きです。