【解答・解説】東大理系数学2022

この記事は,今年2022/2/25に実施された「2022年度東京大学入学試験 数学(理系)」の速報・解答解説です。

全体分析

項目 データ
試験日時 2022/2/25(金)
試験時間 150分
解答問題数 6題
分量(前年比) 増加
難易度(前年比) 難化
特徴・傾向 状況を正しく把握して立式する能力が中心に試される。

大問分析

問題番号 分野 難易度
1 微分・積分
2 整数・数列 やや難
3 平面図形 やや易
4 図形と方程式 やや難
5 空間図形
6 確率 標準

※以下の解答・解説,講評等はいずれも東京大学が公表したものではなく,当サイトオリジナルのものです。複数名の現役理系東大生によって作成されています。問題は東京大学第2次試験問題からの引用です。

※当サイトでは「東大英語 2022」の解答・解説も公開しています。

【速報|解答・解説あり】東大英語2022

第1問

第1問

次の関数 f(x)f(x) を考える。

f(x)=(cosx)log(cosx)cosx+0x(cost)log(cost)dt(0x<π2) f(x) = (\cos x)\log(\cos x) - \cos x + \int_0^{x} (\cos t)\log (\cos t) dt \quad \left( 0 \leqq x < \dfrac{\pi}{2} \right)

(1) f(x)f(x) は区間 0x<π20 \leqq x < \dfrac{\pi}{2} において最小値を持つことを示せ。

(2) f(x)f(x) の区間 0x<π20 \leqq x < \dfrac{\pi}{2} における最小値を求めよ。

(1)

f(x)=sinxlog(cosx)+cosxsinxcosx+sinx+cosxlog(cosx)=(cosxsinx)log(cosx)=2sin(xπ4)log(cosx) \begin{aligned} &f'(x) \\ &= -\sin x \log (\cos x) + \cos x \cdot \dfrac{-\sin x}{\cos x} + \sin x + \cos x \cdot \log (\cos x)\\ &= (\cos x - \sin x) \log (\cos x)\\ &= -\sqrt{2} \sin \left(x - \dfrac{\pi}{4}\right) \cdot \log (\cos x) \end{aligned}

0x<π20 \leq x < \dfrac{\pi}{2} より, log(cosx)0 \log (\cos x) \leq 0

よって,ff の増減は以下の通り:

x0π4(π2)f(x)00+f(x) \begin{array}{c|ccccc} x & 0 & \cdots & \dfrac{\pi}{4} & \cdots & \left(\dfrac{\pi}{2}\right) \\ \hline f'(x) & 0 & - & 0 & + & \\ \hline f(x) & & \searrow & & \nearrow & \end{array}

よって,f(x)f(x)x=π4x = \dfrac{\pi}{4} で最小値を持つ。

(2) 0π4cosxlog(cosx)dx=[sinxlog(cosx)]0π40π4sinxsinxcosxdx=12log12+0π41cos2xcosxdx=12log12+[12log1+sinx1sinxsinx]0π4=12(log121)+log(2+1) \begin{aligned} &\int_0^{\frac{\pi}{4}} \cos x \cdot \log (\cos x) dx\\ &= \left[\sin x \cdot \log (\cos x)\right]_0^{\frac{\pi}{4}} - \int_0^{\frac{\pi}{4}} \sin x \cdot \dfrac{-\sin x}{\cos x} dx\\ &= \dfrac{1}{\sqrt{2}}\log \dfrac{1}{\sqrt{2}} + \int_0^{\frac{\pi}{4}}\dfrac{1 - \cos^2 x}{\cos x} dx\\ &= \dfrac{1}{\sqrt{2}}\log \dfrac{1}{\sqrt{2}} + \left[\dfrac{1}{2} \log \left|\dfrac{1 + \sin x}{1 - \sin x}\right| - \sin x\right]_0^{\frac{\pi}{4}}\\ &= \dfrac{1}{\sqrt{2}}\left(\log \dfrac{1}{\sqrt{2}} - 1\right) + \log (\sqrt{2} + 1) \end{aligned}

より,

f(π4)=12log1212+12(log121)+log(2+1)=log(2+1)2((log2)+1) \begin{aligned} &f\left(\dfrac{\pi}{4}\right)\\ &= \dfrac{1}{\sqrt{2}}\log \dfrac{1}{\sqrt{2}} - \dfrac{1}{\sqrt{2}} + \dfrac{1}{\sqrt{2}}\left(\log \dfrac{1}{\sqrt{2}} - 1\right) + \log (\sqrt{2} + 1)\\ &= \log (\sqrt{2} + 1) - \sqrt{2} \left((\log \sqrt{2}) + 1\right) \end{aligned}

第2問

第2問

数式 {an}\left\{ a_n \right\} を次のように定める。

a1=1,an+1=an2+1(n=1,2,3,) a_1 = 1, \quad a_{n+1} = a_n^2 + 1 \quad (n=1,2,3,\cdots)

(1) 正の整数 nn33 の倍数のとき, ana_n55 の倍数となることを示せ。

(2) k,nk,n を正の整数とする。ana_naka_k の倍数となるための必要十分条件を k,nk,n を用いて表せ。

(3) a2022a_{2022}(a8091)2\left( a_{8091} \right)^2 の最大公約数を求めよ。

(1) 数列 {an}\{a_n\} は合同式の法を 55 として

a11a212+12a322+10a402+11a512+12a622+10 \begin{aligned} & a_1 \equiv 1 \\ & a_2 \equiv 1^2+1 \equiv 2 \\ & a_3 \equiv 2^2+1 \equiv 0 \\ & a_4 \equiv 0^2+1 \equiv 1 \\ & a_5 \equiv 1^2+1 \equiv 2 \\ & a_6 \equiv 2^2+1 \equiv 0 \\ \end{aligned}

n123456an  (mod  5)120120 \begin{array}{c|ccccc} n & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\ \hline a_n \;(\mathrm{mod} \; 5) & 1 & 2 & 0 & 1 & 2 & 0 \\ \end{array}

のように 1,2,01,2,0 を繰りかえす。

よって nn33 の倍数のとき, ana_n55 の倍数となる。

(2)

数列 {an}\left\{ a_n \right\} は単調増加な数列であり, a1>0a_1 > 0 であることに注意すると, ana_n が初めて aka_k の倍数となるのは n=kn = k のときである。

また, 合同式の法を aka_k として

ak+1ak2+102+1a1ak+2ak+12+1a12+1a2ak+3ak+22+1a22+1a3... \begin{aligned} & a_{k+1} \equiv a_{k}^2 + 1 \equiv 0^2 + 1 \equiv a_1 \\ & a_{k+2} \equiv a_{k+1}^2 + 1 \equiv a_1^2 + 1 \equiv a_2 \\ & a_{k+3} \equiv a_{k+2}^2 + 1 \equiv a_2^2 + 1 \equiv a_3 \\ & ... \\ \end{aligned}

と繰り返す。

すなわち, ana_naka_k で割った余りは、周期を kk として a1,a2,a3,...,ak1,0a_1, a_2, a_3, ..., a_{k-1}, 0 を繰り返す。

したがって, ana_naka_k の倍数となるための必要十分条件は nnkk の倍数であることである。

(3)

A=a2022,B=a8091A = a_{2022}, B = a_{8091} とおく。

8091=2022×4+38091 = 2022 \times 4 + 3 であるから, (2)の議論より

B=a8091a35modA B = a_{8091} \equiv a_3 \equiv 5 \mod A

となる。

よって, 整数 qq を用いて B=Aq+5B = Aq + 5 と表せる。

すると,

gcd(a2022,(a8091)2)=gcd(A,B2)=gcd(A,A2q2+10Aq+25)=gcd(A,25) \begin{aligned} & \gcd(a_{2022}, (a_{8091})^2) \\ &= \gcd(A,B^2) \\ &= \gcd(A, A^2 q^2 + 10Aq + 25) \\ &= \gcd(A, 25) \end{aligned}

である。

すなわち, AAB2B^2 の最大公約数は, AA2525 の最大公約数に等しい。

数列 {an}\left\{a_n\right\} は合同式の法を 2525 として

n123456an  (mod  25)125125 \begin{array}{c|ccccc} n & 1 & 2 & 3 & 4 & 5 & 6 \\ \hline a_n \;(\mathrm{mod} \; 25) & 1 & 2 & 5 & 1 & 2 & 5 \\ \end{array}

となり, (1)と同様の議論により任意の nn について ana_n2525 の倍数でない。

一方, 2022202233 の倍数であるから, (1)より AA55 の倍数である。

したがって, AA2525 の最大公約数, すなわち a2022a_{2022}(a8091)2(a_{8091})^2 の最大公約数は 55 である。

(2) 別解

ana_naka_k の倍数である     \iff nnkk の倍数である ()\cdots(*)

を示す。

まず, すべての nn について

an+kanmodak() a_{n+k} \equiv a_n \mod a_k \quad \cdots(**)

が成り立つことを数学的帰納法により示す。

(i)(\mathrm{i}) n=1n=1 のとき

a1+kak2+11a1modaka_{1+k} \equiv a_k^2 + 1 \equiv 1 \equiv a_1 \mod a_k

より, ()(\mathrm{**}) は成立する。

(ii)(\mathrm{ii}) ある正の整数 mm で成り立つと仮定したとき

am+1+kam+k2+1am2+1(帰納法の仮定)am+1(漸化式)modak \begin{aligned} a_{m+1+k} & \equiv a_{m+k}^2 + 1 \\ & \equiv a_{m}^2 + 1 (\because \text{帰納法の仮定})\\ & \equiv a_{m+1} (\because \text{漸化式}) \\ & \mod a_k \end{aligned}

より m+1m+1 でも成り立つ。

以上 (i),(ii)(\mathrm{i}),(\mathrm{ii}) より ()(\mathrm{**}) が成り立つ。

()(\mathrm{**}) を用いると, 正の整数 n,kn,k について, 整数 q,r  (0r<k)q,r \;(0 \leqq r < k) を用いて

n=kq+r n = kq + r

とおくと

anankankqarmodak \begin{aligned} a_{n} & \equiv a_{n-k} \\ & \equiv \cdots \\ & \equiv a_{n-kq} \\ & \equiv a_{r} \\ & \mod a_k \end{aligned}

となる(ただし r=0r = 0 のときは a0=0a_0 = 0 と定める)。

よって,

ana_naka_k の倍数」     \iffara_raka_k の倍数」

となるが, 0r<k0 \leqq r < k のとき 0ar<ak0 \leqq a_r < a_kkk の帰納法でわかる。

よって

ara_raka_k の倍数である

    r=0\iff r = 0

    \iff nnkk の倍数である ()\cdots (\mathrm{*})

が成立する。

したがって, ana_naka_k の倍数となるための必要十分条件は nnkk の倍数であることである。

第3問

第3問

O\mathrm{O} を原点とする座標平面上で考える。座標平面上の 22S(x1,y1),T(x2,y2)\mathrm{S}(x_1, y_1), \mathrm{T}(x_2, y_2) に対し, 点 S\mathrm{S} が点 T\mathrm{T} から十分離れているとは,

x1x21またはy1y21 |x_1 - x_2| \geqq 1 \quad \text{または} \quad |y_1 - y_2| \geqq 1

が成り立つことと定義する。

不等式

0x3,  0y3, 0 \leqq x \leqq 3, \; 0 \leqq y \leqq 3,

が表す正方形の領域を DD とし, その 22 つの頂点 A(3,0),B(3,3)\mathrm{A}(3, 0), \mathrm{B}(3, 3) を考える。さらに, 次の条件 (i),(ii)(\mathrm{i}), (\mathrm{ii}) をともに満たす点 P\mathrm{P} をとる。

(i)(\mathrm{i})P\mathrm{P} は領域 DD の点であり, かつ, 放物線 y=x2y=x^2 上にある。

(ii)(\mathrm{ii})P\mathrm{P}33O,A,B\mathrm{O}, \mathrm{A}, \mathrm{B} のいずれからも十分離れている。

P\mathrm{P}xx 座標を aa とする。

(1) aa のとりうる値の範囲を求めよ。

(2) 次の条件 (iii),(iv)(\mathrm{iii}),(\mathrm{iv}) をともに満たす点 QQ が存在しうる範囲の面積 f(a)f(a) を求めよ。

(iii)(\mathrm{iii})Q\mathrm{Q} は領域 DD の点である。

(iv)(\mathrm{iv})Q\mathrm{Q}44O,A,B,P\mathrm{O}, \mathrm{A}, \mathrm{B}, \mathrm{P} のいずれからも十分離れている。

(3) aa は(1)で求めた範囲で動くとする。(2)の f(a)f(a) を最小にする aa の値を求めよ。

領域

上図の赤い部分は 点 O,A,B\mathrm{O},\mathrm{A},\mathrm{B} から十分離れていない領域を表す。

(1) 上図より 1a31 \leqq a \leqq \sqrt{3}

(2) 1a31 \leqq a \leqq \sqrt{3} より

{0a1312a+13+1(<3)0a2122a2+14 \begin{cases} 0 \leqq a - 1 \leqq \sqrt{3} - 1 \\ 2 \leqq a + 1 \leqq \sqrt{3} + 1 (< 3) \\ 0 \leqq a^2 - 1 \leqq 2 \\ 2 \leqq a^2 + 1 \leqq 4 \end{cases}

である。

(i)(\mathrm{i}) 0a2110 \leqq a^2 - 1 \leqq 1 のとき

領域

{0a1312a+13+12a2+13 \begin{cases} 0 \leqq a - 1 \leqq \sqrt{3} - 1 \\ 2 \leqq a + 1 \leqq \sqrt{3} + 1 \\ 2 \leqq a^2 + 1 \leqq 3 \end{cases}

であるから,

f(a)=(色が塗られていない部分の面積)=Dの面積赤色部分の面積青色部分の面積+緑色部分の面積=934 +(1(a1))(1(a21))+(a+12)(1(a21))+(a+12)(a2+12)=2+(2a)(2a2) +(a1)(2a2) +(a1)(a21)=2+2a2+a3a2a+1=a32a2a+5 \begin{aligned} f(a) &= (\text{色が塗られていない部分の面積}) \\ &= \text{Dの面積} - \text{赤色部分の面積} \\ & \quad - \text{青色部分の面積} + \text{緑色部分の面積} \\ &= 9 - 3 - 4 \\ & \quad + (1 - (a-1)) \cdot (1 - (a^2-1)) \\ & \quad + (a + 1 - 2) \cdot (1 - (a^2-1)) \\ & \quad + (a + 1 - 2) \cdot (a^2 + 1 - 2) \\ &= 2 + (2-a)(2-a^2) \\ & \quad + (a-1)(2 - a^2) \\ & \quad + (a-1)(a^2 - 1) \\ &= 2 + 2 - a^2 + a^3 - a^2 - a + 1 \\ &= a^3 - 2a^2 - a + 5 \end{aligned}

(ii)(\mathrm{ii}) 1a2121 \leqq a^2 - 1 \leqq 2 のとき

領域

{2<a+1<33a2+1 \begin{cases} 2 < a + 1 < 3 \\ 3 \leqq a^2 + 1 \end{cases}

であるから, (i)(\mathrm{i}) と同様に考えれば

f(a)=(色が塗られていない部分の面積)=Dの面積赤色部分の面積青色部分の面積+緑色部分の面積=932(3(a21))+(a+12)1=2a2+a3 \begin{aligned} f(a) &= (\text{色が塗られていない部分の面積}) \\ &= \text{Dの面積} - \text{赤色部分の面積} \\ & \quad - \text{青色部分の面積} + \text{緑色部分の面積} \\ &= 9 - 3 - 2(3 - (a^2 - 1)) + (a+1 - 2) \cdot 1 \\ &= 2a^2 + a - 3 \end{aligned}

以上より

f(a)={a32a2a+5(1a2)2a2+a3(2a3) f(a) = \begin{cases} a^3 - 2a^2 - a + 5 \quad (1 \leqq a \leqq \sqrt{2}) \\ 2a^2 + a - 3 \quad (\sqrt{2} \leqq a \leqq \sqrt{3}) \\ \end{cases}

(3)

1a21 \leqq a \leqq \sqrt{2} のとき

f(a)=3a24a1 f'(a) = 3a^2 - 4a - 1

y=f(a)y = f'(a) は軸 a=23<1a=\dfrac{2}{3} < 1 の下に凸な放物線であり f(2)=542<0f'(\sqrt{2}) = 5 - 4\sqrt{2} < 0 より 1a21 \leqq a \leqq \sqrt{2}f(a)<0f'(a) < 0 である。

2a3\sqrt{2} \leqq a \leqq \sqrt{3} のとき

f(a)=4a+1 f'(a) = 4a + 1

よって ff の増減は以下の通り。

a123f+f \begin{array}{c|ccccc} a & 1 & \cdots & \sqrt{2} & \cdots & \sqrt{3} \\ \hline f' & & - & & + & \\ \hline f & & \searrow & & \nearrow & \\ \end{array}

よって f(a)f(a) を最小にする aa の値は a=2a=\sqrt{2} である。

第4問

第4問

座標平面上の曲線

C:y=x3x C: y = x^3 -x

を考える。

(1) 座標平面上のすべての点 P\mathrm{P} が次の条件 (i)(\mathrm{i}) を満たすことを示せ。

(i)(\mathrm{i})P\mathrm{P} を通る直線 \ell で, 曲線 CC と相異なる 33 点で交わるものが存在する。

(2) 次の条件 (ii)(\mathrm{ii}) を満たす点 P\mathrm{P} のとりうる範囲を座標平面上に図示せよ。

(ii)(\mathrm{ii})P\mathrm{P} を通る直線 \ell で, 曲線 CC と相異なる 33 点で交わり, かつ, 直線 \ell と曲線 CC で囲まれた 22 つの部分の面積が等しくなるものが存在する。

(1) P(a,b)\text{P}(a,b) とおく。P\text{P} を通る直線として,実数 mm を用いて

m:y=m(xa)+b \ell_m:y=m(x-a)+b

を考える。これが CC と異なる3点で交わる条件は

x3x=m(xa)+b x^3-x =m(x-a)+b

つまり,

x3(m+1)x+mab=0 x^3-(m+1)x+ma-b=0

が異なる3つの実数解を持つことである。

以下,このような mm が必ずあることを示す。

f(x)=x3(m+1)x+mab f(x) = x^3-(m+1)x+ma-b

とおく。さて, {f(a1)=m+C1f(a+1)=m+C2 \begin{cases} f(a-1)=m+C_1 \\ f(a+1)=-m+C_2 \end{cases}

ここで C1C_1C2C_2aabb のみによる定数である。これより,mm を十分大きく取れば f(a1)>0,f(a+1)<0 f(a-1) > 0, f(a + 1) < 0

となる。よって,f(x)f(x) の値の増減は次のようになる: xa1a+1f(x) \begin{array}{c|ccccccc} x & -\infty & \cdots & a-1 & \cdots & a+1 & \cdots & \infty \\ \hline f(x) & -\infty & \cdots & \text{正} & \cdots & \text{負} & \cdots & \infty \end{array} よって,中間値の定理より,f(x)=0f(x)=0 は異なる3つの実数解を持つ。

(2) a<ba<b として,CC 上の2点 (a,a3a),(b,b3b)(a, a^3 - a), (b, b^3 - b) を通る直線 \ell:

:y=(b3b)(a3a)ba(xa)+a3a    y=(a2+ab+b21)xa2bab2 \begin{aligned} \ell &: y = \dfrac{(b^3-b)-(a^3-a)}{b-a}(x-a) + a^3 -a\\ &\iff y = (a^2 + ab + b^2 - 1)x - a^2 b - ab^2 \end{aligned} を考える。直線 \ell が直線 CC と相異なる3点 (a,a3a),(b,b3b),(c,c3c)(a, a^3-a), (b, b^3-b),(c, c^3-c) で交わり,a<c<ba<c<b で,かつ直線 \ell と曲線 CC でかこまれた2つの部分の面積が等しくなることは ab(x3x{(a2+ab+b21)xa2bab2})dx=0 \int_a^b \left(x^3 - x - \left\{(a^2 + ab + b^2 - 1)x -a^2b - ab^2\right\}\right)dx = 0

と同値である。この式の左辺について LHS=[14x412(a2+ab+b2)x2+(a2b+ab2)x]ab=14(b4a4)12(a2+ab+b2)(b2a2)+(a2b+ab2)(ba)=14(b2a2)(ab)2=14(ab)3(a+b) \begin{aligned} \mathrm{LHS} &= \left[\dfrac{1}{4} x^4 - \dfrac{1}{2}(a^2 + ab + b^2)x^2 + (a^2b + ab^2)x\right]_a^b\\ &= \dfrac{1}{4} (b^4 - a^4) - \dfrac{1}{2}(a^2 + ab + b^2)(b^2 - a^2) + (a^2b + ab^2)(b-a)\\ &= -\dfrac{1}{4}(b^2 - a^2)(a-b)^2\\ &= \dfrac{1}{4} (a-b)^3 (a + b) \end{aligned} より,直線 \ell が条件を満たすことは a+b=0,a<b a + b = 0, a < b と同値である。つまり,a+b=0,a<ba + b = 0, a < b のもとで,直線 \ell が動く領域を求めれば,それが点 P\mathrm{P} のとりうる範囲となる。

b=ab = -a とすると, :y=(a21)x \ell: y = (a^2 - 1)x とできる。よって,\ell(0,0)(0,0) を通る傾き a21a^2 - 1 の直線である。a<ba < ba+b=0a + b = 0 より a<0a < 0 だから,a21a^2 - 1(1,)(-1, \infty) の範囲を動きうる。よって,\ell の動く領域は下図のようになる:

第四問答え

第5問

第5問

座標空間内の点 A(0,0,2)\mathrm{A}(0,0,2) と 点 B(1,0,1)\mathrm{B}(1,0,1) を結ぶ線分 AB\mathrm{AB}zz 軸のまわりに 11 回転させて得られる曲面を SS とする。SS 上の点 P\mathrm{P}xyxy 平面上の点 QQPQ=2\mathrm{PQ} = 2 を満たしながら動くとき, 線分 PQ\mathrm{PQ} の中点 M\mathrm{M} が通過しうる範囲を KK とする。KK の体積を求めよ。

K\mathrm{K}z=tz=t での断面を考える。

M\mathrm{M}zz 座標が tt になるのは 点 P\mathrm{P}zz 座標が 2t2t のときである。

よって 12t1\dfrac{1}{2} \leqq t \leqq 1 として良い。

P(22t,0,2t)\mathrm{P}(2-2t, 0, 2t) のとき, 点 M\mathrm{M} は下図の赤い部分を動く。

領域

よって K\mathrm{K}z=tz=t での断面は, 上図の赤い円周を zz のまわりに 360360^{\circ} 回転させてできる図形である。

領域

上図より, 赤い円周は中心が (22t,0,t)(2-2t, 0, t) で半径が 1t2\sqrt{1-t^2} である。

よって K\mathrm{K}z=tz=t での断面は以下のようになる。

  • (i)(\mathrm{i}) 22t1t22-2t \geqq \sqrt{1-t^2} のとき

領域

  • (ii)(\mathrm{ii}) 22t1t22-2t \leqq \sqrt{1-t^2} のとき

領域

よって求める K\mathrm{K} の体積は

π121{(22t+1t2)2(22t1t2)2}dt=8π121(1t)1t2dt \begin{aligned} &\pi \int_{\frac{1}{2}}^1 \left\{\left(2 - 2t + \sqrt{1-t^2}\right)^2 - \left(2 - 2t - \sqrt{1-t^2}\right)^2\right\}dt\\ &= 8\pi \int_{\frac{1}{2}}^1 (1-t)\sqrt{1-t^2}dt \end{aligned}

ここで,t=sinθt = \sin \theta とすると,

1211t2dt=π6π2cos2θdθ=π638 \begin{aligned} &\int_{\frac{1}{2}}^1\sqrt{1-t^2}dt\\ &= \int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{2}} \cos^2 \theta d\theta\\ &= \dfrac{\pi}{6} - \dfrac{\sqrt{3}}{8} \end{aligned}

であり,また,

121t1t2dt=[23(1t2)32(12)]121=38 \begin{aligned} &\int_{\frac{1}{2}}^1t\sqrt{1-t^2}dt\\ &= \left[\dfrac{2}{3}(1-t^2)^{\frac{3}{2}}\cdot \left(-\dfrac{1}{2}\right)\right]_{\frac{1}{2}}^1\\ &= \dfrac{\sqrt{3}}{8} \end{aligned}

であるから,

8π121(1t)1t2dt=8π(π63838)=43π223π \begin{aligned} &8\pi \int_{\frac{1}{2}}^1 (1-t)\sqrt{1-t^2}dt\\ &= 8\pi \left(\dfrac{\pi}{6} - \dfrac{\sqrt{3}}{8} - \dfrac{\sqrt{3}}{8}\right)\\ &= \dfrac{4}{3}\pi^2 - 2\sqrt{3}\pi \end{aligned}

第6問

第6問

O\mathrm{O} を原点とする座標平面上で考える。00 以上の整数 kk に対して,ベクトル vkundefined\overrightarrow{v_k}

vkundefined=(cos2kπ3,sin2kπ3) \overrightarrow{v_k} = \left(\cos \dfrac{2k\pi}{3}, \sin \dfrac{2k\pi}{3}\right)

と定める。投げたとき表と裏がどちらも 12\dfrac{1}{2} の確率で出るコインを NN 回投げて,座標平面上に点 X0,X1,X2,,XN\mathrm{X}_0, \mathrm{X}_1, \mathrm{X}_2, \cdots, \mathrm{X}_N を以下の規則(i), (ii)に従って定める。

(i) X0\mathrm{X}_0O\mathrm{O} にある。

(ii) nn11 以上 NN 以下の整数とする。Xn1\mathrm{X}_{n-1} が定まったとし,Xn\mathrm{X}_n を次のように定める。

  • nn 回目のコイン投げで表が出た場合, OXnundefined=OXn1undefined+vkundefined \overrightarrow{\mathrm{OX}_n} = \overrightarrow{\mathrm{OX}_{n-1}} + \overrightarrow{v_k} により,XnX_n を定める。ただし,kk11 回目から nn 回目までのコイン投げで裏が出た回数とする。

  • nn 回目のコイン投げで裏が出た場合,Xn\mathrm{X}_nXn1\mathrm{X}_{n-1} と定める。

(1) N=8N = 8 とする。X8\mathrm{X}_8O\mathrm{O} にある確率を求めよ。

(2) N=200N = 200 とする。X200X_{200}O\mathrm{O} にあり,かつ,合計 200200 回のコイン投げで表がちょうど rr 回出る確率を prp_r とおく。ただし,0r2000 \leq r \leq 200 である。prp_r を求めよ。また prp_r が最大となる rr の値を求めよ。

まず,問題の条件により,点列 XnX_n が進む方向は,下図のように分類される。図のように,それぞれ「右向き」,「斜め上向き」,「斜め下向き」と名付ける。

点列の進み方

いま,「NN 回後に点 XNX_N が原点 OO にあるためには,右向き、斜め上向き,斜め下向きに動く回数が同じでなければならない」…(*) ことに注意する。

これより「NN 回後に点 XNX_N が原点 OO にあるためには,表が合計で3の倍数回出なければならない」…(**) ということもわかる。

(1)(**)より,88 回後に点 X8X_8 が原点 OO にあることが実現しうるような表と裏の出方は下表のような3通りであることがわかる。

036852 \begin{array}{c|ccc} \text{表} & 0 & 3 & 6 \\ \hline \text{裏} & 8 & 5 & 2 \\ \end{array}

(A)表が0回,裏が8回出るとき

裏が出た時の規則により,NN 回後に点 XNX_N は原点 OO にある。

(B)表が3回,裏が5回出るとき

(*)より,点列は8回の移動の中で,右向き,斜め上向き,斜め下向きにそれぞれ1回ずつ動く。

裏が出たあと,点の進むことができる方向は下図のようになる。

表が3回の時

ここで,最上段の数字は裏の出た回数,×印は裏のコインの印,下段の矢印は点列が進む向きを示している(左から1,4番目が「右向き」,2,5番目が「斜め上向き」,3,6番目が「斜め下向き」を表している)。

この裏コインの間に表コインを合計 33 個配置することを考える.

右向きに進むことができるのは,裏が1回も出ていないときと,裏が3回目に出てから4回目に出るまでであり,その2回のどちらかに1枚表コインを挿入すればよい。よって,右向きに進む進み方は2通り。

斜め上向き,斜め下向きの移動も同様に考えればよい。すなわち,移動できる機会は2回あり,そのいずれかで1回進めばよいから,斜め上向き,斜め下向きに進む進み方は,そのそれぞれで2通り。

したがって,88 回後に点 X8X_8 が原点 OO にあるような裏表の出方は,

23=8 2^3 =8

通りある。

(C)表が6回,裏が2回出るとき (*)より,点列は8回の移動の中で,右向き,斜め上向き,斜め下向きにそれぞれ2回ずつ動く。

裏が出たあと,点の進むことができる方向は下図のようになる。

表が6回出たとき

右向きに進むことができるのは,裏が1回も出ていないときであり,そのときに2枚表コインを挿入しなければならない。

斜め上向き,斜め下向きの移動も同様に考えればよい。すなわち,その方向に移動できる機会は1回あり,そのときに2枚表コインを挿入しなければならない。

したがって,88 回後に点 X8X_8 が原点 OO にあるような裏表の出方は1通り。

これらより,88 回後に点 X8X_8 が原点 OO にあるような裏表の出方は合計で

1+8+1=10 1+8+1=10

通りある。

また,裏表の出方の総数は

28=256 2^8=256

通りあるから,求める確率は

10256=5128 \dfrac{10}{256} = \dfrac{5}{128}

となる。

(2)(**)より,r=3kr=3k とおいてよい。このとき,表が 3k3k 回,裏が 2003k200-3k 回出ることになる。また(*)より右向き、斜め上向き,斜め下向きには各 kk 回動くことになる。

2003k200-3k33 で割った余りは 22 であることに注意すると,裏が出た後点列が進むことのできる方向は下図のようになる。

点列の進み方

上図のように,裏が3回出るごとに点列の進むことができる方向が一巡する。赤線で囲ってある部分の個数は,

1983k3+1=67k \dfrac{198-3k}{3} + 1=67-k

組ある。この組1つに対し,右向き、斜め上向き,斜め下向きに動く機会が一度ずつ存在する。

まず,右向きに進む進み方を考える。 ll 組目で右向きに進む回数を ala_l とすると,

a1+a2+...+a67k=k a_1 +a_2 + ... + a_{67-k} = k

ただし,各 ll に対して al0a_l ≥0 である。

このような (a1,a2,...,a67k)(a_1,a_2, ... ,a_{67-k}) の組の総数は,k+66kCk=66Ck{}_{k+66-k} C_k = {}_{66} C_k 通りある。

斜め上向き,斜め下向きについても同様に考えればよく,斜め上向き,斜め下向きに進む進み方は,それぞれ 66Ck{}_{66} C_k 通りある。

裏表の出方は,合計で 22002^{200} 通りあるから、求める確率 prp_r は,

pr={(66Ck)32200=(66Cr/3)32200(r0(mod3))0(r1,2(mod3)) p_r = \begin{cases} \dfrac{({}_{66} C_k)^{3}}{2^{200}} =\dfrac{({}_{66} C_{r/3})^{3}}{2^{200}} & (r \equiv 0 \pmod3 )\\ 0 & (r \equiv 1,2 \pmod3) \end{cases}

となる。

prp_r が最大になるような rr を求めるため,上式より,66Ck{}_{66} C_k が最大になるような kk を求める。k=r3k=\dfrac{r}{3} に注意する。

66Ck+1=66!(k+1)!(65k)!=66!k!(66k)!66kk+1=66Ck66kk+1 \begin{aligned} {}_{66} C_{k+1} &=\dfrac{66!}{(k+1)!(65-k)!} \\ &=\dfrac{66!}{k!(66-k)!} \dfrac{66-k}{k+1} \\ &={}_{66} C_k \dfrac{66-k}{k+1} \end{aligned} より 66Ck+1/66Ck=66kk+1 {}_{66} C_{k+1}/{}_{66} C_k=\dfrac{66-k}{k+1} である。ここで,

66kk+1>1k<652 \dfrac{66-k}{k+1} > 1 \Leftrightarrow k < \dfrac{65}{2} だから, 66C0<66C1<<66C32<66C33 {}_{66} C_{0}<{}_{66} C_{1}<\cdots<{}_{66} C_{32}<{}_{66} C_{33} が成り立つ。

また,

66kk+1<1k>652 \dfrac{66-k}{k+1} < 1 \Leftrightarrow k > \dfrac{65}{2}

だから, 66C33>66C34>>66C65>66C66 {}_{66} C_{33}>{}_{66} C_{34}>\cdots>{}_{66} C_{65}>{}_{66} C_{66} が成り立つ。以上より,66Ck{}_{66} C_k が最大になるような kkk=33k=33 であることがわかる。したがって,prp_r が最大になるような rr は,

r=99 r=99 である。

去年に引き続き,今年も難しいセットになりました・・・

受験生の皆さん,気持ちを切り替えて明日も頑張ってください!