クロソイド曲線の性質とその証明

クロソイド曲線

媒介変数 tt を用いて x(t)=0tcosθ2dθx(t)=\displaystyle\int_0^{t}\cos\theta^2d\thetay(t)=0tsinθ2dθy(t)=\displaystyle\int_0^t\sin \theta^2d\theta と表される曲線はクロソイド曲線と呼ばれる。

クロソイド曲線の性質とその証明を紹介します。

クロソイド曲線について

  • sinθ2\sin\theta^2cosθ2\cos\theta^2 の積分を使って表される曲線です。(sinθ)(\sin\theta) の二乗ではなく θ2\theta^2 のサインです。
  • オイラーの螺旋,コルニュ螺旋とも呼ばれます。
  • t=0t=0 とすると (0,0)(0,0) を通ることがわかります。
  • tt\to\infty とすると,(12π2,12π2)\left(\dfrac{1}{2}\sqrt{\dfrac{\pi}{2}},\dfrac{1}{2}\sqrt{\dfrac{\pi}{2}}\right) に近づくことが知られています。→フレネル積分(sin x^2の積分)
  • 不定積分 cosθ2dθ\displaystyle\int \cos\theta^2d\thetasinθ2dθ\displaystyle\int \sin\theta^2d\theta を初等関数で表すことはできません。
  • クロソイド曲線は,以下の著しい性質があるため有名です。
性質(大雑把な主張)

クロソイド曲線は,(一定の速さで進む)車のハンドルを一定のスピードで回転させたときに車が描く軌道である。

「ハンドルの角度が一定」ではなく「ハンドルの角速度(角度の変化のスピード)が一定」です。

クロソイド曲線の性質と証明

上記の性質を証明する前に,もう少しきちんと数学的に主張を述べます。

まず,「ハンドルの角度」はその点における「曲がりの程度」を表します。「曲がりの程度」とは,曲線を「局所的に円の弧」とみなしたときの円の半径(の逆数)のことです。→曲率・曲率半径の感覚的な意味と求め方

つまり「ハンドルを一定のスピードで回転」というのは,曲率の変化率が一定という意味です。以上をふまえると,上記の性質は以下のように表現できます:

性質(きちんとした主張)

クロソイド曲線上の点を P(α):(x(α),y(α))P(\alpha):(x(\alpha),y(\alpha)) とする。

原点から P(α)P(\alpha) までのクロソイド曲線の長さを L(α)L(\alpha), 曲率を κ(α)\kappa(\alpha) とすると,κ(α)L(α)\dfrac{\kappa(\alpha)}{L(\alpha)}α\alpha によらない定数。

証明は L(α)L(\alpha)κ(α)\kappa(\alpha) を計算するだけです。媒介変数で表された曲線に関する計算のよい練習になります。

証明

x(t)=cost2x'(t)=\cos t^2y(t)=sint2y'(t)=\sin t^2 であるので,曲線の長さを計算する積分公式(弧長積分)の媒介変数版より,

L(α)=0αx2+y2dt=0αdt=αL(\alpha)=\displaystyle\int_0^{\alpha}\sqrt{x'^2+y'^2}dt=\displaystyle\int_0^{\alpha}dt=\alpha

さらに,x(t)=2tsint2x''(t)=-2t\sin t^2y(t)=2tcost2y''(t)=2t\cos t^2 なので,曲率の公式の媒介変数版より,

κ(α)=x(α)y(α)x(α)y(α){x2(α)+y2(α)}32=2α(sin2α2+cos2α2)1=2α\kappa(\alpha)=\dfrac{x'(\alpha)y''(\alpha)-x''(\alpha)y'(\alpha)}{\{x'^2(\alpha)+y'^2(\alpha)\}^{\frac{3}{2}}}\\ =\dfrac{2\alpha(\sin^2 \alpha^2+\cos^2 \alpha^2)}{1}=2\alpha

よって,κ(α)L(α)=2\dfrac{\kappa(\alpha)}{L(\alpha)}=2

クロソイド曲線は役立つ

ハンドルを水平の状態から一瞬で一定の角度に持っていくのは大変です。そのため,直線と円をつないだ道を車で進むのは少し大変です。

クロソイド曲線

一方,ハンドルを回すスピードを 00 から一定値に一瞬で持っていくのは難しくないです。そのため,直線と円の間にクロソイド曲線を挟めば車で進みやすくなります。

このように,道路や線路において,直線とカーブの間に挟む曲線を緩和曲線と言います。クロソイド曲線は緩和曲線の代表例です。

高速道路を降りるときはクロソイド曲線を感じましょう。