第3問
三角形 ABC の内心を I, 3つの傍心のうち ∠A の二等分線の上にあるものを J とする。I と J の中点を M とする。直線 BM と 直線 AC の交点を N とする。このとき AI=MN, CN=IM であった。
以下の問いに答えよ。
(1) ∠IBJ, ∠ICJ の大きさをそれぞれ求めよ。
(2) MCBM を求めよ。
(3) ∠BAC=x∘ とおく。∠BMC は何度か。x を用いて表せ。
(4) x を求めよ。
第3問は図形の問題です。実は中学生でも解くことができます。三角関数やベクトルは用いない三角形の問題です。
三角形の五心のうち,内心・傍心・外心が登場します。
三角形の五心について復習したい人は
傍心の意味と性質・内心との比較
三角形の五心の覚えておくべき性質を整理
を参照してください。
第3問(1)
議論を簡潔にするため半直線 AB 上の点 D を取る。直線 BI は ∠ABC の二等分線,直線 BJ は ∠CBD の二等分線であることを用いると,
∠IBJ=∠IBC+∠CBJ=21∠ABC+21∠CBD=21(∠ABC+∠CBD)=90∘
である。
よって ∠IBJ=90∘ である。同様に ∠ICJ=90∘である。
解
∠IBJ= 90∘
∠ICJ= 90∘
内心と傍心は角の二等分線から定まることをうまく使って計算をしています。
おもしろい結果が出ましたね。この「90∘」が今回の大問で非常に重要な役割と果たします。
第3問(2)
1の結果より
∠IBJ+∠ICJ=90∘+90∘=180∘
である。
向かい合う角の大きさの和が 180∘ である四角形は円に内接するため I,B,J,C は共円である。この円の中心を O とおく。
∠IBJ=90∘ と円周角の定理より ∠IOJ=180∘ である。よって IJ はこの円の直径であり,IJ の中点である M は O と一致する。
したがって MI=MB=MC=MJ である。こうして MCBM=1 が得られる。
解
MCBM=1
この問題では I,B,J,C が共円で,その中心が M になることを問いました。
先ほど述べた 90∘ の役割がここで発揮されています。直角三角形の斜辺がその外接円の直径になる構図は,極めて重要な構図だと言えます。是非覚えておいてください。
円周角の定理はこの後の小問でも使っていきます。怪しいぞ!という人は 円周角の定理とその逆の証明 をチェックしてください。
また円に内接する四角形については 円に内接する四角形の性質とその証明まとめ を参照してください。
第3問(3)
∠MBC=∠IBM−∠IBC=∠IBM−∠ABI=∠BIM−∠ABI=∠BAM=∠MAC(IBは∠ABCの二等分線)(IM=IB)(IAは∠BACの二等分線)
であるので,円周角の定理の逆より A,B,M,C は共円である。
円に内接する四角形の向かい合う角の和は 180∘ である。よって ∠BMC=180∘−∠BAC=180∘−x∘である。
図を描くと以下のようになる。なお同じ大きさの角は同じ色で表されている。
解
180−x
角の二等分線であることや,(2)の結果を用いて円周角の定理の逆を用い,共円であることを示す問題です。大学受験より高校受験でよく用いられる手法ですが,こうした初等的な計算がいざというときに効いてきます。
共円の示し方には別解があります。
第3問(3) 別解
∠JBM∠JCM=∠BJM=∠BJI=∠BCI=∠ICA=∠CJM=∠CJI=∠CBI=∠IBA(IM=MB)(I,B,J,Cは共円)(ICは∠BCAの二等分線)(IM=MC)(I,B,J,Cは共円)(IBは∠ABCの二等分線)
である。よって
∠ABM+∠ACM=∠ICA+∠ICM+∠IBA+∠IBM=∠JBM+∠ICM+∠JCM+∠IBM=(∠JBM+∠IBM)+(∠JCM+∠ICA)=∠IBJ+∠ICJ=180∘
であるため A,B,M,C は共円である。
図を描くと以下のようになる。なお同じ大きさの角は同じ色で表されている。
この問題は次のように考えることもできます。
第3問(3) 別解 2
△ABC の外接円と,∠A の二等分線の交点を K とおく。△ABK と △ACK の外接円は等しい。そのため正弦定理により
KBsin∠KAB=KCsin∠KAC
である。AK が ∠A の二等分線であることから KB=KC が従う。
ゆえに K は ∠A の二等分線と,BC の垂直二等分線の交点であることがわかる。
二直線の交点は高々1つであることに注意すると, ∠A の二等分線と,BC の垂直二等分線の交点は必ず K となることがわかる。
(2) より MB=MC であるため,M は BC の垂直二等分線上にある。また仮定から M は ∠A の二等分線上にある。こうして M は K になることが従い,A,B,C,M が共円であることが分かる。
「二直線の交点は高々1つ」が重要になっていますね。この他にも「円と直線の交点は高々2つ」などの直線や曲線の交点の個数の上限は,しばしば問題を解く上で強力なツールになります。是非活用してみてください。
最後の問題は,これまでの小問で分かったことと,まだ使用されていない条件 AI=MN を組み合わせることがカギとなります。
今回,2つの二等辺三角形が見つかります。二等辺三角形の底角の大きさが等しいことに着目することで,角度に関する連立方程式が得られます。
第3問(4)
∠ABC=y∘ とおく。
CN=IM=MC より △CMN は二等辺三角形である。
よって ∠CNM=∠CMN=x∘ である。また ∠CNM=∠ANB=∠ABN であるため,△BAN は二等辺三角形である。
△BAN は二等辺三角形であるため,AB=BN である。また BN=BM+MN=IM+IA=AM であるため,AB=AM が得られる。したがって △ABM は二等辺三角形である。
△BAN の内角に注目すると,
180=∠BAN+∠ANB+∠NBA=x+x+(y+21x)=25x+y
が得られる。また △ABM の内角に注目すると,
180=∠BAM+∠AMB+∠MBA=∠BAM+2∠AMB=21x+2(y+21x)=23x+2y
が得られる。こうして連立方程式
⎩⎨⎧25x+y=18023x+2y=180
が得られる。これを解いて x=7360 が得られる。
図を描くと以下のようになる。なお同じ大きさの角は同じ色で表されている。同じ長さの辺を強調するために,∘ を用いている。
解
7360
実は「∠ABC=y∘ とおく」という操作もポイントになります。今回の ∠ABC=y∘ は解答自体には関係ありませんが,連立方程式を立てる補助になります。いわば触媒になっているわけです。
こうした問題を解く場合のコツをまとめましょう。
- 現状自分が見つけた「一致しているもの」をまとめる。
- 「触媒」をうまく利用して目的の数値を計算する。