三角関数のグラフの特徴と簡単な書き方

この記事では三角関数のグラフの書き方を説明します。物理でも正弦波として頻出です。是非おさえておきましょう。

sin と cos のグラフ

まず,sinθ,cosθ\sin\theta,\cos\theta の意味を確認しましょう。角 θ\theta の動径と単位円の交点 P\mathrm{P}xx 座標,yy 座標がそれぞれ cosθ,sinθ\cos\theta ,\sin \theta でした。

pic01

この定義に基づいて y=sinxy = \sin x のグラフと y=cosxy = \cos x のグラフを描くと,下の図の右側のようになります。

pic02

  • y=sinxy = \sin x のグラフと y=cosxy = \cos x のグラフは「同じ形」ですね。実際,sin(x+π2)=cosx\sin \left(x + \dfrac{\pi}{2} \right) = \cos x であることから,y=cosxy = \cos x のグラフは y=sinxy = \sin x のグラフを π2\dfrac{\pi}{2} だけ平行移動させたものだとわかります。

  • y=sinxy=\sin xy=cosxy = \cos x の形をしたグラフを正弦曲線といいます。

  • 上のグラフを見ると「同じ形」が連続しています。実際,sin(x+2π)=sinx\sin (x + 2\pi) = \sin x なので,正弦曲線は 2π2\pi ごとに同じ形を繰り返します。

  • このように,ある実数 aa について,f(x+a)=f(x)f(x+a) = f(x) となる関数を周期関数といいます。aa周期といいます。y=sinxy=\sin xy=cosxy=\cos x の周期は 2π2\pi です。

tan のグラフ

次は,y=tanxy=\tan x のグラフです。P(cosθ,sinθ)\mathrm{P} (\cos \theta , \sin \theta) とおくと,直線 OP\mathrm{OP}y=(tanθ)xy = (\tan \theta) x と表されます。ここで x=1x=1 のとき,y=tanθy = \tan \theta となります。図にすると次のようになります。

pic03

θ\theta を動かすことで y=tanxy= \tan x のグラフは次のように描かれます。

pic04

  • 0<x<π20 < x < \dfrac{\pi}{2} の範囲で,xxπ2\dfrac{\pi}{2} に近付けると tanx\tan x の値は限りなく大きくなっていきます。つまり,y=tanxy = \tan x のグラフが直線 x=π2x = \dfrac{\pi}{2} に近付いていきます。このようにグラフがある直線に近付くとき,その直線を漸近線といいます。

  • y=tanxy = \tan x の周期は π\pi です。実際,tan(x+π)=tanx\tan (x+\pi) = \tan x です。

ここまでのまとめ
  • y=sinx,y=cosx,y=tanxy=\sin x,y=\cos x,y=\tan x のグラフの形は覚える
  • y=sinxy=\sin xy=cosxy=\cos x は同じ形で,片方を π2\dfrac{\pi}{2} 平行移動すると重なる
  • y=sinxy=\sin xy=cosxy=\cos x の周期は 2π2\piy=tanxy=\tan x の周期は π\pi

様々な正弦曲線

例題

次の式のグラフを描け。

  1. y=sin(xπ3)y = \sin \left( x - \dfrac{\pi}{3} \right)
  2. y=2sinxy=2 \sin x
  3. y=2sin(xπ3)y = 2 \sin \left( x - \dfrac{\pi}{3} \right)
  4. y=cos2xy = \cos 2x
  5. y=cos(x+π6)y= \cos \left( x + \dfrac{\pi}{6} \right)
  6. y=cos(2x+π3)y = \cos \left( 2x + \dfrac{\pi}{3} \right)

正弦曲線の平行移動

sin\sin のなかが xx に定数を足し(引い)ている場合は,元の正弦曲線を平行移動させたものとなります。例えば y=sin(xπ3)y = \sin \left( x - \dfrac{\pi}{3} \right)y=sinxy=\sin xπ3\dfrac{\pi}{3} 平行移動した曲線です。そのため本体 (0,0)(0,0) となるところは (π3,0)\left( \dfrac{\pi}{3} , 0 \right) に移動します。

解答 1

pic13

y=sin(xπ3)y = \sin \left( x - \dfrac{\pi}{3} \right)y=sinxy=\sin x を比較してみましょう。

pic14

yy 軸方向の拡大

三角関数に定数を掛けたもののグラフは,元々のグラフを縦方向(yy 軸方向)に定数倍したものになります。例えば y=2sinxy= 2 \sin xy=sinxy = \sin xyy 軸方向に2倍拡大したものとなります。

解答 2

pic11

y=2sinxy=2\sin xy=sinxy=\sin x を比較してみましょう。

pic12

解答 3

3番は1番と2番を組み合わせることで得られます。

pic15

xx 軸方向の拡大

y=cos2xy = \cos 2xy=cosxy = \cos xxx 軸方向に 1/2に縮小したものとなります。また,xx 軸方向の拡大では周期が変化します。例えば cos2(x+π)=cos(2x+2π)=cos2x\cos 2 (x + \pi) = \cos (2x + 2\pi) = \cos 2x となるため,周期が π\pi です。一般に sinkx,coskx\sin kx , \cos kx の周期は 2πk\dfrac{2\pi}{k} となります。

解答 4,5

pic16

5は平行移動したものです。ただし π6-\dfrac{\pi}{6} 平行移動していることに気を付けてください。

pic17

xx 軸方向の拡大と平行移動が組み合わさる場合は,少々複雑になります。

解答 6

y=cos(2x+π3)=cos2(x+π6)y = \cos \left( 2x + \dfrac{\pi}{3} \right) = \cos 2 \left( x + \dfrac{\pi}{6} \right) であるため,y=cos2xy = \cos 2xxx 軸方向に π6-\dfrac{\pi}{6} 平行移動させたものになる。

pic18

y=cos(2x+π3)y = \cos \left( 2x + \dfrac{\pi}{3} \right)xx 軸方向に π3-\dfrac{\pi}{3} 平行移動させたものではないです。(x定数)(x - \text{定数}) の形を作るようにしましょう。

正弦関数を簡単に描く方法

関数を描くときは,目盛りが正確に描かれていれば問題はありません。すなわち次の2つはグラフとしては同じになります。

pic21

pic22

次のような方法で描くと簡単に描けます。

  1. 正弦曲線と xx 軸を描く。
  2. 平行移動前の原点がどこに移動したのか調べて yy 軸を描く。
  3. yy 座標の最大最小を調べて書く。
  4. 周期を調べて xx 軸に目盛りを書く。

実際に y=cos(2x+π3)y = \cos \left( 2x + \dfrac{\pi}{3} \right) を描いてみましょう。

pic23

  1. 2x+π3=2(x+π6)2x + \dfrac{\pi}{3} = 2 \left( x + \dfrac{\pi}{6} \right) から,y=cos2xy = \cos 2x の原点は (π6,0)\left( -\dfrac{\pi}{6} , 0 \right) に移動します。 pic24

  2. y=cos(2x+π3)y = \cos \left( 2x + \dfrac{\pi}{3} \right) の最大値・最小値は111-1 です。 pic25

  3. 周期が π\pi であることを考えて目盛りを書きこみます。 pic26

正弦曲線は物理において波の分野で頻出します。合わせて勉強しましょう。