確率漸化式の定義と問題例
確率漸化式は「漸化式を利用して確率を求める」ような問題です。
この記事では,例題3問を通じて確率漸化式の解き方・考え方を説明します。
確率漸化式の基本的な解き方
確率漸化式のポイント
確率漸化式の基本的な解き方
確率漸化式は「試行回数が 回」の問題で有効です。
コインを 回投げ,表なら を,裏なら を足していく。 回目までの和を としたとき, が偶数となる確率を求めよ。
確率漸化式の問題は,以下のような流れで解けることが多いです。
- 回目の確率を とおく
- 回目と 回目の状態を遷移図で表す
- 2で表した遷移図を元に漸化式を立てて計算する
まず, 回目に が偶数である確率を とおく。
続いて,以下のように状態を遷移図に表す。
遷移図より,
整理すると,
つまり,
また, と合わせて
遷移図を書くときに,偶数側を ,奇数側を とおきました。このように,確率漸化式では 全ての確率の総和が1であることを使って立式します。
この問題は,答えが によらない定数になりました(漸化式を解く部分は楽な問題でした)。
確率漸化式のポイント
基本的な確率漸化式の考え方は以上です。ここからは,追加で気をつけるべきポイントを紹介します。
事象の間の対称性を見つける
例題1の場合,「 が偶数」と「 が奇数」の2つの事象しかなかったので,全ての事象を のみで表せました。しかし,同時に現れる事象がより多い場合には, だけでは表せない場合もあります。
そのようなときは,複数の事象の間に対称性を見つけて,複数の確率を1つの文字で表せないか考えるとよいです。
以下の例題2では, 回目に「 で割った余りが になる確率」と「 で割った余りが になる確率」は対称性より等しいので, という同じ文字で両方の確率を表すことができます。
サイコロを 回振り, か が出たときには を, か が出たときには を, か が出たときには を足す。 回サイコロを降ったときの和を とするとき, が の倍数である確率を とする。 を求めよ。
回目に の倍数である確率は と設定されている。
また, で割った余りが である場合と である場合は対称性より,どちらも確率を とおける。
このとき,以下の遷移図が書ける。
確率の総和は なので, となる。つまり,
また,遷移図を元に考えると,
となる。この2つから を消去すると,
つまり,
と合わせて,
今回も答えが によらない定数になりました(漸化式を解く部分は楽な問題でした)。
三項間漸化式を用いる場合
これまでの問題では二項間漸化式で考えましたが,三項間漸化式が登場する問題もあります。
コインを投げて,「表が出たら階段を 段,裏が出たら階段を 段上がる」という操作を十分な回数行う。何回目かの操作の後にちょうど 段目にいる確率を求めよ。
まず,何回目かの操作の後にちょうど 段目にいる確率を とおく。
が 以上の場合について,以下のように状態を遷移図に表す。
遷移図を元に考えると,
漸化式は以下のように変形できる:
に注意すると,二つの漸化式のそれぞれの一般項は
両辺を引くと, について解くと,
のときもこれを満たすので,
このように,三項間漸化式を用いる問題でも考え方は同じです。その場合には,遷移図を三つの状況の間で表すことになります。
遷移図を作ることができれば,その後は三項間漸化式を解くだけです。
三項間漸化式の解き方については,三項間漸化式の3通りの解き方を参考にしてください。
確率漸化式の応用問題
少し難しめの応用問題として,破産の確率と漸化式について扱った記事もあります。 確率漸化式の難問を解いてみたい人はこちらから →破産の確率と漸化式
遷移図を書いている時ってなんだか楽しいですよね。