確率漸化式の解き方と例題

更新日時 2021/06/14

確率漸化式(漸化式を利用して確率を求める問題)について,解き方と例題3問を解説します。

目次
  • 確率漸化式の例題

  • 確率漸化式の解き方

  • 確率漸化式の応用問題

確率漸化式の例題

まずは確率漸化式の簡単な例題です。

例題1

11 から 55 がそれぞれ書かれた計 55 枚のカードがある。「カードを1枚引いて戻す」操作を nn 回繰り返したとき,引いたカードに書かれている数字の合計が奇数になる確率を求めよ。

解答

求める確率を ana_n とおく。

nn 回目の合計が奇数になるのは以下の2パターン。

  • n1n-1 回目までの合計が奇数で,nn 回目が偶数
    このようになる確率は an1×25a_{n-1}\times\dfrac{2}{5}
  • n1n-1 回目までの合計が偶数で,nn 回目が奇数
    このようになる確率は (1an1)×35(1-a_{n-1})\times\dfrac{3}{5} 確率漸化式の遷移図

よって,

an=25an1+35(1an1)=15an1+35a_n=\dfrac{2}{5}a_{n-1}+\dfrac{3}{5}(1-a_{n-1})\\ =-\dfrac{1}{5}a_{n-1}+\dfrac{3}{5}

この漸化式の特性方程式は α=15α+35\alpha=-\dfrac{1}{5}\alpha+\dfrac{3}{5} であり解は α=12\alpha=\dfrac{1}{2}

よって,

an12=(15)n1(a112)a_n-\dfrac{1}{2}=\left(-\dfrac{1}{5}\right)^{n-1}\left(a_1-\dfrac{1}{2}\right)

a1=35a_1=\dfrac{3}{5} より,an=12+110(15)n1a_n=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{10}\left(-\dfrac{1}{5}\right)^{n-1}

例題1のように、同じ試行を nn 回繰り返すような確率の問題では,漸化式を使うことが多いです。

確率漸化式の解き方

例題1で見たように,確率漸化式の問題は以下のような流れで解けることが多いです。

確率漸化式の解き方の流れ
  1. 求めたい「nn 回目の確率」を ana_n とおく
  2. ana_nan1a_{n-1} の関係を漸化式で表す
  3. 漸化式を解く

得点力を上げるコツ

  • 漸化式を立てる2がポイントです。例題1の解答中に記載したような「遷移図」を描くと漸化式を立てやすいです。

  • 答えに n=1,2n=1,2 を代入したり nn\to\infty の極限を考えて検算しましょう。例題1では nn\to\inftyan12a_n\to\dfrac{1}{2} となり直感と合います。

  • 確率漸化式の問題が解けなかったときは,上記の1~3のどのステップができなかったのか振り返って,できなかった部分を重点的に復習しましょう。

確率漸化式の応用問題

三項間漸化式が登場するパターン

例題1は二項間漸化式でしたが,三項間漸化式が登場する問題もあります。

例題2

コインを投げて「表が出たら階段を 22 段,裏が出たら階段を 11 段上がる」という操作を十分な回数行う。何回目かの操作の後にちょうど nn 段目にいる確率を求めよ。

考え方は同じです。3つの状態を考えて遷移図を描きます。

解答

まず,何回目かの操作の後にちょうど nn 段目にいる確率を pnp_n とおく。

nn33 以上の場合について,以下のように状態を遷移図に表す。 確率漸化式 遷移図3

遷移図を元に考えると, pn=12pn1+12pn2(n3)p_n = \dfrac{1}{2}p_{n-1} +\dfrac{1}{2}p_{n-2}\quad(n \geqq 3)

漸化式は以下のように変形できる: pnpn1=12(pn1pn2)(n3)p_n - p_{n-1}= -\dfrac{1}{2}\left(p_{n-1}-p_{n-2}\right)\quad(n \geqq 3) pn+12pn1=pn1+12pn2(n3)p_n + \dfrac{1}{2}p_{n-1}=p_{n-1} +\dfrac{1}{2} p_{n-2}\quad(n \geqq 3)

p1=12,p2=34p_1 = \dfrac{1}{2},\:p_2 = \dfrac{3}{4} に注意すると,二つの漸化式のそれぞれの一般項は

pn+1pn=(p2p1)(12)n1=(12)n+1(n3)pn+1+12pn=p2+12p1=1(n3) \begin{aligned} p_{n+1} - p_n=(p_2 -p_1)\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}&=\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n+1}\quad(n \geqq 3)\\ p_{n+1} + \dfrac{1}{2}p_n=p_2 +\dfrac{1}{2}p_1 &= 1\quad(n \geqq 3) \end{aligned}

両辺を引くと, 32pn=1(12)n+1(n3)\dfrac{3}{2}p_n=1 -\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n+1}\quad(n \leqq 3) pnp_n について解くと, pn=23+13(12)n(n3)p_n=\dfrac{2}{3}+\dfrac{1}{3}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^n \quad(n \geqq 3)

n=1,n=2n=1,n=2 のときもこれを満たすので, pn=23+13(12)np_n = \dfrac{2}{3}+\dfrac{1}{3}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^n

三項間漸化式の解き方については,三項間漸化式の3通りの解き方を参考にしてください。

複数の数列が登場するパターン

例題1,2は数列 {an}\{a_n\} のみが登場しましたが,以下の例題3は複数の数列が登場します。

例題3

サイコロを nn 回振り,1144 が出たときには 11 を,2255 が出たときには 22 を, 3366 が出たときには 33 を足す。nn 回サイコロを降ったときの和を BB とするとき,BB33 の倍数である確率を bnb_n とする。bnb_n を求めよ。

ポイントは,対称性を使って考える数列の数をできるだけ減らすことです。

解答

nn 回目に 33 の倍数である確率は bnb_n と設定されている。

また,33 で割った余りが 11 である場合と 22 である場合は対称性より,どちらも確率を cnc_n とおける。

このとき,以下の遷移図が書ける。

確率漸化式 遷移図2

確率の総和は 11 なので,2cn+bn=12c_n+b_n = 1 となる。つまり,

cn=12(1bn)c_n = \dfrac{1}{2}(1 - b_n)

また,遷移図を元に考えると,

bn+1=13bn+23cn(n1)b_{n+1} = \dfrac{1}{3}b_n +\dfrac{2}{3}c_n \quad(n \geqq 1)

となる。この2つから cnc_n を消去すると,

bn+1=13(n1)b_{n+1} = \dfrac{1}{3}\quad(n \geqq 1)

つまり,bn=13(n2)b_n = \dfrac{1}{3} \quad(n \geqq 2)

b1=13b_1 = \dfrac{1}{3} と合わせて,bn=13b_n = \dfrac{1}{3}

今回は答えが nn によらない定数になりました(漸化式を解く部分は楽な問題でした)。なお,直感的に答えが 13\dfrac{1}{3} になるのは明らかですね。

確率漸化式の応用問題

少し難しめの応用問題として,破産の確率と漸化式について扱った記事もあります。 確率漸化式の難問を解いてみたい人はこちらから →破産の確率と漸化式

遷移図を書いている時ってなんだか楽しいですよね。