確率漸化式の解き方と例題

確率漸化式(漸化式を利用して確率を求める問題)について,解き方と例題3問を解説します。

確率漸化式の例題

まずは確率漸化式の簡単な例題です。

例題1

11 から 55 がそれぞれ書かれた計 55 枚のカードがある。「カードを1枚引いて戻す」操作を nn 回繰り返したとき,引いたカードに書かれている数字の合計が奇数になる確率を求めよ。

解答

求める確率を ana_n とおく。

nn 回目の合計が奇数になるのは以下の2パターン。

  • n1n-1 回目までの合計が奇数で,nn 回目が偶数
    このようになる確率は an1×25a_{n-1}\times\dfrac{2}{5}
  • n1n-1 回目までの合計が偶数で,nn 回目が奇数
    このようになる確率は (1an1)×35(1-a_{n-1})\times\dfrac{3}{5} 確率漸化式の遷移図

よって,

an=25an1+35(1an1)=15an1+35\begin{aligned} a_n &= \dfrac{2}{5}a_{n-1}+\dfrac{3}{5} (1-a_{n-1})\\ &= -\dfrac{1}{5}a_{n-1}+\dfrac{3}{5} \end{aligned}

この漸化式の特性方程式は α=15α+35\alpha=-\dfrac{1}{5}\alpha+\dfrac{3}{5} であり解は α=12\alpha=\dfrac{1}{2}

よって,

an12=(15)n1(a112) a_n-\dfrac{1}{2}=\left(-\dfrac{1}{5}\right)^{n-1}\left(a_1-\dfrac{1}{2}\right)

a1=35a_1=\dfrac{3}{5} より,求めるものは an=12+110(15)n1 a_n=\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{10}\left(-\dfrac{1}{5}\right)^{n-1} となる。

例題1のように、同じ試行を nn 回繰り返すような確率の問題では,漸化式を使うことが多いです。

確率漸化式の解き方

例題1で見たように,確率漸化式の問題は以下のような流れで解けることが多いです。

確率漸化式の解き方の流れ
  1. 求めたい「nn 回目の確率」を ana_n とおく
  2. ana_nan1a_{n-1} の関係を漸化式で表す
  3. 漸化式を解く

得点力を上げるコツ

  • 漸化式を立てる 2 がポイントです。例題1の解答中に記載したような「遷移図」を描くと漸化式を立てやすいです。

  • 答えに n=1,2n=1,2 を代入したり nn\to\infty の極限を考えて検算しましょう。例題1では nn\to\inftyan12a_n\to\dfrac{1}{2} となり直感と合います。

  • 確率漸化式の問題が解けなかったときは,上記の1~3のどのステップができなかったのか振り返って,できなかった部分を重点的に復習しましょう。

確率漸化式の応用問題

三項間漸化式が登場するパターン

例題1は二項間漸化式でしたが,三項間漸化式が登場する問題もあります。

例題2

コインを投げて「表が出たら階段を 22 段,裏が出たら階段を 11 段上がる」という操作を十分な回数行う。何回目かの操作の後にちょうど nn 段目にいる確率を求めよ。

考え方は同じです。3つの状態を考えて遷移図を描きます。

解答

まず,何回目かの操作の後にちょうど nn 段目にいる確率を pnp_n とおく。

nn33 以上の場合について,以下のように状態を遷移図に表す。 確率漸化式 遷移図3

遷移図を元に考えると, pn=12pn1+12pn2(n3)p_n = \dfrac{1}{2}p_{n-1} +\dfrac{1}{2}p_{n-2}\quad(n \geqq 3)

漸化式は以下のように変形できる: pnpn1=12(pn1pn2)(n3)pn+12pn1=pn1+12pn2(n3)\begin{aligned} p_n - p_{n-1} &= -\dfrac{1}{2}\left(p_{n-1}-p_{n-2}\right) &(n \geqq 3)\\ p_n + \dfrac{1}{2}p_{n-1} &= p_{n-1} +\dfrac{1}{2} p_{n-2} &(n \geqq 3) \end{aligned}

p1=12,p2=34p_1 = \dfrac{1}{2},\:p_2 = \dfrac{3}{4} に注意すると,二つの漸化式のそれぞれの一般項は

pn+1pn=(p2p1)(12)n1=(12)n+1(n3)pn+1+12pn=p2+12p1=1(n3) \begin{aligned} p_{n+1} - p_n &= (p_2 -p_1)\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\\ &=\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n+1} &(n \geqq 3)\\ p_{n+1} + \dfrac{1}{2}p_n&=p_2 +\dfrac{1}{2}p_1 \\ &= 1 &(n \geqq 3) \end{aligned}

両辺を引くと, 32pn=1(12)n+1(n3)\dfrac{3}{2}p_n=1 -\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n+1}\quad(n \leqq 3) pnp_n について解くと, pn=23+13(12)n(n3)p_n=\dfrac{2}{3}+\dfrac{1}{3}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^n \quad(n \geqq 3)

n=1,n=2n=1,n=2 のときもこれを満たすので, pn=23+13(12)np_n = \dfrac{2}{3}+\dfrac{1}{3}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^n

三項間漸化式の解き方については,三項間漸化式の3通りの解き方を参考にしてください。

複数の数列が登場するパターン

例題1,2は数列 {an}\{a_n\} のみが登場しましたが,以下の例題3は複数の数列が登場します。

例題3

サイコロを nn 回振り,1144 が出たときには 11 を,2255 が出たときには 22 を, 3366 が出たときには 33 を足す。nn 回サイコロを降ったときの和を BB とするとき,BB33 の倍数である確率を bnb_n とする。bnb_n を求めよ。

ポイントは,対称性を使って考える数列の数をできるだけ減らすことです。

解答

nn 回目に 33 の倍数である確率は bnb_n と設定されている。

また,33 で割った余りが 11 である場合と 22 である場合は対称性より,どちらも確率を cnc_n とおける。

このとき,以下の遷移図が書ける。

確率漸化式 遷移図2

確率の総和は 11 なので,2cn+bn=12c_n+b_n = 1 となる。つまり,

cn=12(1bn)c_n = \dfrac{1}{2}(1 - b_n)

また,遷移図を元に考えると,

bn+1=13bn+23cn(n1)b_{n+1} = \dfrac{1}{3}b_n +\dfrac{2}{3}c_n \quad(n \geqq 1)

となる。この2つから cnc_n を消去すると,

bn+1=13(n1)b_{n+1} = \dfrac{1}{3}\quad(n \geqq 1)

つまり,bn=13(n2)b_n = \dfrac{1}{3} \quad(n \geqq 2)

b1=13b_1 = \dfrac{1}{3} と合わせて,bn=13b_n = \dfrac{1}{3}

今回は答えが nn によらない定数になりました(漸化式を解く部分は楽な問題でした)。なお,直感的に答えが 13\dfrac{1}{3} になるのは明らかですね。

いろいろな確率漸化式の問題

破産の確率

問題

nn 円持っている。勝ったら 11 円もらえ,負けたら 11 円失う勝負を繰り返し行う。勝つ確率は pp である。NN 円になったら十分儲かったとみなして勝負は終了する。このとき所持金が 00 円になって終了する確率(破産する確率)を求めよ。

少し難しめの応用問題として,破産の確率と漸化式について扱った記事もあります。

確率漸化式の難問を解いてみたい人はこちらから →破産の確率と漸化式

東大の過去問

東大2019文系第三問

正八角形の頂点を反時計回りに A,B,C,D,E,F,G,H\mathrm{A,B,C,D,E,F,G,H} とする。また,投げたとき表裏の出る確率がそれぞれ 12\dfrac{1}{2} のコインがある。

P\mathrm{P} が最初に点 A\mathrm{A} にある。次の操作を10回繰り返す。

操作:コインを投げ,表が出れば点 P\mathrm{P} を反時計回りに隣接する頂点に移動させ,裏が出れば点 P\mathrm{P} を時計回りに隣接する頂点に移動させる。

例えば,点 P\mathrm{P} が点 H\mathrm{H} にある状態で,投げたコインの表が出れば点 A\mathrm{A} に移動させ,裏が出れば点 G\mathrm{G} に移動させる。

以下の事象を考える。

事象 SS : 操作を10回行なった後に点 P\mathrm{P} が点 A\mathrm{A} にある。

事象 TT : 1回目から10回目の操作によって,点 P\mathrm{P} は少なくとも1回,点 F\mathrm{F} に移動する。

(1) 事象 SS が起こる確率を求めよ。

(2) 事象 SS と事象 TT がともに起こる確率を求めよ。

解説は 東大文系数学2019入試過去問解答解説 をどうぞ。

遷移図を書いている時ってなんだか楽しいですよね。