補集合の定義と具体例・問題例
集合 の補集合とは,「全体」の中で に含まれない要素をすべて集めたもの。
補集合とは
補集合とは
「全体」が決まっているとき,「全体」の中で に含まれない要素をすべて集めたものを の補集合と呼びます。
例えば,「全体」が1から5の整数 で, のとき, の補集合は です。
「全体」を表す集合を全体集合といい, で表すことが多いです。また, の補集合を や と書くことが多いです。→集合の記号の意味まとめ
補集合の定義は,集合の記号を使って と表すこともできます。
余談:差集合と補集合
ある集合 の中から,別の集合 の要素を取り除いた残りの要素でできた集合を,差集合といいます。 を特別に全体集合 としたとき,この差集合を の補集合と呼びます。この意味で補集合は差集合の特別な場合と言えます。
補集合の具体例
補集合の具体例
全体集合 と に対し,補集合 を求めよ。
に入っていなくて, に入っているものを選べば良いので
全体集合 を正の数全体の集合,つまり とし, としたとき, を求めよ。
に入っていなくて, に入っているものを集めると「2以下かつ0より大きい数すべて」になります。つまり, となります。境界はどちらに含まれるか(この問題で言えば は と のどちらに含まれるか)に気をつけましょう。
全体集合 を実数全体の集合とし,としたとき, を求めよ。
集合の記号を使って表すと となります。例2,例3を見てわかる通り, が同じでも全体集合 が変わると補集合も変わることに注意しましょう。
以下のように各数字を要素として含む集合 を考える。
このとき,集合 を求めよ。
の円の中には含まれていて, の円の中には含まれていない要素を列挙すればよいので, が答えです。要素としては のみが答えですが,集合を答えよと言われているので と答えないように気をつけましょう。
補集合と要素数
補集合と要素数
集合 に対して,その要素数を と書くことにします。例えば, なら です。
実は,補集合の要素数について, という式が成立します。 「 の補集合」は「全体集合 」 から「 に含まれるものを除いたもの」なので,上の式が成立します。移項して, と書くこともできます。
多くの場合,全体集合の要素数はわかっているので がわかれば もわかると言えます。
補集合に関する応用問題
補集合に関する応用問題
のとき, を求めよ。
さきほど紹介した補集合の要素数についての式: を使って計算します。また,右辺の は3つに分解: してそれぞれ数えます。式だけ眺めていてもよくわからない場合,ベン図を書いて状況を想像してみてください。
に含まれて, に含まれない部分について, が成立するから, 同様に, に含まれて, に含まれない部分について, が成立するから, よって により よって, を得る。
次に,問題1とは毛色の異なった問題を考えてみます。
1から5の数字が書かれた5個のボールが入った袋がある。袋の中からボールを1個とり,数字を確認して袋にもどす一連の流れを「操作」と呼ぶことにする。10回「操作」を行って,確認した数字を左から書き並べて10桁の数字を作った時,その数字の中に1が少なくとも1つ入っている場合は何通りあるか。
まずは,補集合の考え方を使わず,正面から解いてみます(大変です)。
10桁の数字の中で1つだけ1があるものは 通りある。 同様に10桁の数字の中で 個 だけ1があるものは 通りであるので,「少なくとも1が1つある」とは,「1〜10個の1がある」ことと同じであることを考慮すると,求める場合の数は ここで二項定理(→二項定理の意味と2通りの証明)により, であるから, を代入して,求める場合の数は 通りとなる。
とても大変ですね。これはこれで二項定理の復習になるので勉強して損はないですが,補集合を用いることで,よりスマートに解けます。
10桁の数字は全部で 通りあるが,そのうち「1が1つも含まれない」ものは 通りある。「1が1つも含まれない」ものの集合の補集合は,「1が少なくとも1つ入っている」数字の集合であるから,答えは 通りとなる。
このようにとても簡単な引き算一発で求めることができました。正攻法では時間がかかり過ぎる問題も,補集合を使うと簡単に計算できることがあります。以下を覚えておくとよいでしょう。
よりも の方が計算しやすい時は として考えるのが良い。
ちなみに,さらに複雑な問題になると,補集合の場合の数を求めるのも大変な場合があります。その場合は,ド・モルガンの法則を使うと道が開けることがあります。→ド・モルガンの法則の解説
ちなみに, の補集合の補集合は になります。