多項定理の例題と2通りの証明
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を展開したときの の係数は,
(ただし, かつ は 以上)
多項定理の意味・例題3問・2通りの証明を解説します。
多項定理の使用例
多項定理の使用例
を展開したときの の係数と の係数を求めよ。
の場合であり,多項定理より の係数は となる。
-
の係数は, として,
- の係数も同様にして,
※ に注意してください。
多項定理の証明1
多項定理の証明1
例題1で見たように を展開したときの の係数は でした。この理由をもう少し詳しく見てみます。
- を展開したときに出てくる1つの項は,「 の中でどれか つを選ぶ」という操作を 回行い,選んだものを全てかけあわせたもの。
- が出てくるのは, の4パターン。 よって, は4個出てくるので係数は4。
以上の具体例が理解できれば,多項定理の証明は簡単です。よく分からない方は二項定理の意味と係数を求める例題・2通りの証明の証明1を読んで下さい。
を展開したときに出てくる1つの項は,
「 の中でどれか つを選ぶ」という操作を 回行い,選んだものを全てかけあわせたもの。
よって,展開後は の指数の和が である項のみが登場し, の係数は である( 回のうちどの 回で を選び,どの 回で を選び,どの 回で を選ぶかのパターンの数,これは同じものを含む順列の公式から分かる)。
多項定理の一般形
多項定理の一般形
項が2つの場合が二項定理,3つの場合は冒頭で紹介した式ですが,4つ以上の場合でも多項定理は使えます。
を展開したときの の係数は
かつ各 が非負なら
(そうでないなら )
を展開したときの の係数を求めよ。
として多項定理を使うと, の係数は,
多項定理の証明2
多項定理の証明2
多項定理の一般形を「二項定理+数学的帰納法」で証明します。
に関する帰納法で証明する。 のときは自明, のときは二項定理そのもの。
まで正しいと仮定すると,二項定理より,
目標の項は の部分から出てくる。 の部分は,
よって,帰納法の仮定より, の項の係数は,
なお, ではなく に関する帰納法でも証明できます。少し計算が煩雑ですがおもしろいのでやってみてください。
多項定理の応用問題
多項定理の応用問題
を展開したときの の係数を求めよ。
の項は「 と つ, を つ」または「 を つ, を つ」選んだときに登場する項から出てくる。前者は であり,後者は である。
よって,答えは
多項定理のさらなる応用については,以下を参照ください。
- 対称式を素早く正確に展開する3つのコツ:多項定理の使いこなして対称式を素早く展開できるようになりましょう。
- ペラン数列の一般項および素数との関係:多項定理を使って数列のおもしろい性質を証明します。
- ライプニッツの公式の証明と二項定理:積の微分と多項定理の関係です。
多項定理は教科書には登場しませんが, の場合については軽く言及されています。