余事象の考え方と例題

余事象(よじしょう)の公式

AA が起こる確率」11AA が起こらない確率」

余事象

余事象の意味を説明したあと,余事象の考え方を使う確率の問題を解説します。

余事象の意味

事象 AA に対して「AA が起こらない」という事象を AA の余事象と言います。

  • コインを一枚投げたとき「表が出る」の余事象は「表が出ない」つまり「裏が出る」

  • サイコロを投げたとき「偶数の目が出る」の余事象は「奇数の目が出る」

AA の余事象を,A\overline{A}AcA^{\mathrm{c}} などと表します。

練習問題

サイコロを二個投げたとき「出目の和が3以上」という事象の余事象は?

解答

余事象は「出目の和が2以下」

余事象の確率

事象 AA が起こる確率 P(A)P(A) と,その余事象 A\overline{A} が起こる確率 P(A)P(\overline{A}) の和は必ず 11 です。場合の数を用いた確率の定義から証明してみます。

証明

P(A)P(A)

== (AA が起こる場合の数) ÷\div (全ての場合の数)

== ((全ての場合の数)-(AA が起こらない場合の数)) ÷\div (全ての場合の数)

=1=1- (AA が起こらない場合の数) ÷\div (全ての場合の数)

=1P(A)=1-P(\overline{A})

  • AA が起こる確率」11AA が起こらない確率」
    であることがわかりました。
  • よって,AA が起こらない確率」がわかればAA が起こる確率」も計算できます!

例題

余事象の考え方を使う例題を紹介します。

まずは非常に簡単な例題です。

例題1

表の出る確率が 12\dfrac{1}{2} であるコインを2枚投げるとき,少なくとも1回表が出る確率を求めよ。

解答

少なくとも1回表が出るの余事象は表が1回も出ないである。表が1回も出ない確率1212=14\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{4} である。よって求める確率114=341-\dfrac{1}{4}=\dfrac{3}{4}

注:余事象を使わずに直接求めることも簡単です。この場合,表が1回出る確率 24\dfrac{2}{4} と表が2回出る確率 14\dfrac{1}{4} を足して 34\dfrac{3}{4} と分かります。

時間に余裕があれば,このように余事象を使う方法と余事象を使わない方法の両方でやってみることをオススメします。両者の答えが一致することを確認すれば答えに自信を持てるからです!

ここからは,余事象の考え方を使う(と楽に解ける)有名問題を紹介します。難易度は一気に上がります。

例題2

nn 人いるときにその中に同じ誕生日である二人組が存在する確率を求めよ。

「同じ誕生日である二人組が存在する」の余事象は「全員の誕生日が異なる」です。 →同じ誕生日の二人組がいる確率について

例題3

nn 人でじゃんけんをしたときにあいこになる確率を求めよ。

「あいこになる」の余事象は「全員の出す手が2種類」です。 →じゃんけんであいこになる確率の求め方と値

例題4(難)

1,2,,n1, 2,\cdots, n を並び替えてできる順列のうち,全ての i=1,2,,ni=1, 2, \cdots, n に対して ii 番目が ii でないものの個数を求めよ。

→攪乱順列(完全順列)の個数を求める公式

なお,高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ のT153では,余事象に関する計算が複雑な問題と,計算ミスを減らすコツを紹介しています。

ちなみに測度論的確率論では確率測度の公理から P(A)=1P(A)P(A)=1-P(\overline{A}) が導けます。

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