極値集合論の美しい2つの定理
極値集合論(extremal set theory)の美しい定理を2つ解説します。やや難しいですが,数学オリンピックを目指す高校生には理解して欲しい内容です。
極値集合論とは
極値集合論とは
集合 の部分集合を,様々な制約のもと最大で(または最小で)何個取ってこれるかを考える分野です。
例えば簡単ですが の部分集合で要素数が2のものは最大何個取れるか? という問題です(答えは の3個です)。
他の例:Erdös-Ko-Radoの定理
取ってくる部分集合の要素数が2に固定されている場合, を頂点集合とするグラフで表現できる(枝 は要素数2の集合とみなせる)ので極値グラフ理論と言うこともあります。
マンテルの定理(Mantel’s Theorem)
マンテルの定理(Mantel’s Theorem)
頂点数 のグラフが三角形を含まないとき,その辺数は 以下である。また,任意の に対して,辺数が であるような三角形を含まないグラフが存在する。
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の部分集合を「 を全て同時に選んではダメ」という制約のもとで最大で何個取ってこれるか考えるとそれは 個である,ということです。
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は を超えない最大の整数を表します。→ガウス記号の定義と3つの性質
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テュランの定理の特殊ケースです。
マンテルの定理の証明
マンテルの定理の証明
まずは主張の後半「任意の に対して,辺数が であるようなグラフが存在する」を証明します。こちらは簡単です。
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が偶数の場合
頂点を ずつに分けてその間を全て辺で結んだグラフ(完全二部グラフ )を考える。このグラフには明らかに三角形がない。そして辺の数は である。 -
が奇数の場合
同様に を考えればよい。
続いて前半部分を証明します。
三角形を含まないグラフ について考える。頂点 から出ている辺の数を と書く。
三角形がないという条件から, のとき,他の任意の頂点 に対して または である。つまり,
よって,
(真ん中の式では各 が 回足されているので の和と等しい)
また,コーシー・シュワルツの不等式より,
以上から,
となり示された。
オッドタウンの定理
オッドタウンの定理
二つ目です。こちらは証明が難しい(線形代数を用いる)ので定理の主張のみ紹介します。
の部分集合を以下の二つの条件を満たすように 個以上取ってくることはできない。
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各部分集合の要素数は奇数
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任意の二つの部分集合の共通の要素数は偶数
久しぶりの数学オリンピックっぽい記事です!