内接円の半径と三角形の面積

内接円の半径の計算方法

内接円の半径1

内接円とは,三角形の3つの辺全てに接する円のこと。内接円の半径は, S=r2(a+b+c)S=\dfrac{r}{2}(a+b+c) という公式を使って計算できる。

三角形の内接円について解説します。前半では,内接円の半径を計算する方法を解説し,後半では公式を2通りの方法で証明します。

内接円とは

三角形が与えられたときに,3つの辺全てに接する円のことを内接円と言います。また,内接円の中心を内心と言います。

この記事では,以下のような「内接円の半径を求める問題」について詳しく解説します。

例題1

三辺の長さが 3,4,53,4,5 である三角形 ABCABC の内接円の半径を求めよ。

内接円の半径を計算する公式

内接円の半径 rr を計算する問題では, S=r2(a+b+c)S=\dfrac{r}{2}(a+b+c) という公式を使います。

ただし,a,b,ca,b,c は三角形の三辺の長さで,SS は面積です。

さきほどの例題1を解いてみましょう。

例題1の解答

実は,三角形 ABCABC は直角三角形である。実際,32+42=523^2+4^2=5^2 であり,三平方の定理の逆から直角三角形であることが分かる。

したがって,面積は

3×4×12=63\times 4\times\dfrac{1}{2}=6

よって,内接円の半径を rr とすると,公式より

6=r2(3+4+5)6=\dfrac{r}{2} (3+4+5)

よって,r=1r=1

このように,三角形の三辺の長さと面積が分かれば内接円の半径も分かります。

一般の三角形の内接円の半径

例題1は直角三角形でしたが,直角三角形でない場合も内接円の半径を計算する場合には,同じ公式 S=r2(a+b+c)S=\dfrac{r}{2}(a+b+c) を使います。

例題2

三辺の長さが 5,6,75,6,7 である三角形の内接円の半径を求めよ。

例題2の解答

今度は直角三角形でないので,ヘロンの公式を用いて三角形の面積 SS を求める。 5+6+72=9\dfrac{5+6+7}{2}=9 であり,

S=9432=66S=\sqrt{9\cdot 4\cdot 3\cdot 2}=6\sqrt{6}

内接円の半径を求める公式より,66=r2(5+6+7)6\sqrt{6}=\dfrac{r}{2}(5+6+7)

よって r=26618=236r=\dfrac{2\cdot 6\sqrt{6}}{18}=\dfrac{2}{3}\sqrt{6}

公式の証明1

内接円の半径を計算する公式 S=r2(a+b+c)S=\dfrac{r}{2}(a+b+c) を2通りの方法で証明します。まずは,多くの参考書に載っている有名な証明方法です。

三角形 ABIABI の面積を ABI|ABI| などと書きます。

証明

内接円の半径1

内接円の中心を II とおくと,

S=ABI+BCI+CAIS=|ABI|+|BCI|+|CAI|

ここで,ABI=cr2|ABI|=\dfrac{cr}{2}BCI=ar2|BCI|=\dfrac{ar}{2}CAI=br2|CAI|=\dfrac{br}{2} より,S=r2(a+b+c)S=\dfrac{r}{2}(a+b+c)

三角形を,内心を使って3つに分けて,それぞれの面積を計算するというテクニックです。非常に重要なテクニックなので,覚えることをおすすめします。

公式の証明2

内接円の半径の公式を証明する方法は他にもあります。証明1に比べて計算も大変で筋が悪いですが,全てを a,b,ca,b,c で表すという方針でも証明できます。

証明
  • ヘロンの公式より,S2=116(a+b+c)(a+b+c)(ab+c)(a+bc)S^2=\dfrac{1}{16}(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)

内接円の半径2

  • 図において r=xtanA2r=x\tan\dfrac{A}{2}
    ここで (cx)+(bx)=a(c-x)+(b-x)=a
    より x=a+b+c2x=\dfrac{-a+b+c}{2} であり,
    tan2A2=1cosA1+cosA=2bcb2c2+a22bc+b2+c2a2=a2(bc)2(b+c)2a2=(ab+c)(a+bc)(a+b+c)(a+b+c)\begin{aligned} \tan^2\dfrac{A}{2}&=\dfrac{1-\cos A}{1+\cos A}\\ &=\dfrac{2bc-b^2-c^2+a^2}{2bc+b^2+c^2-a^2}\\ &=\dfrac{a^2-(b-c)^2}{(b+c)^2-a^2}\\ &=\dfrac{(a-b+c)(a+b-c)}{(a+b+c)(-a+b+c)} \end{aligned}

以上より

r2=(a+b+c)24(ab+c)(a+bc)(a+b+c)(a+b+c)=14(a+b+c)(ab+c)(a+bc)a+b+c\begin{aligned} r^2&=\dfrac{(-a+b+c)^2}{4}\dfrac{(a-b+c)(a+b-c)}{(a+b+c)(-a+b+c)}\\ &=\dfrac{1}{4}\dfrac{(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)}{a+b+c} \end{aligned}

二つの式から S2=r24(a+b+c)2S^2=\dfrac{r^2}{4}(a+b+c)^2 となり,公式は証明された。

なお,傍心に関しても似たような公式が成立します。→傍心の意味と性質・内心との比較

面積を用いない方法

直角三角形の場合,面積を用いないで内接円の半径を求めることもできます。

例題1(再掲)

三辺の長さが 3,4,53,4,5 である三角形 ABCABC の内接円の半径を求めよ。

例題1の別解

図のように記号を定める。P,Q,RP,Q,R は接点。 内接円の半径の別解

C\angle C が直角であることなどから,IPCQIPCQ は1辺の長さが rr の正方形になる。1辺の長さは内接円の半径 rr である。

さらに,同じ点から引いた2本の接線の長さは等しいので

5=AB=AR+RB=AQ+PB=(3r)+(4r)=72r\begin{aligned} 5&=AB\\ &=AR+RB\\ &=AQ+PB\\ &=(3-r)+(4-r)\\ &=7-2r \end{aligned}

よって,2r=22r=2r=1r=1

面積で考える方法も,接線の長さで考える方法も,どちらも同じくらい楽しいです。

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