無限等比級数の収束,発散の条件と証明など

無限等比級数の公式

1<r<1-1<r<1 のとき,

a+ar+ar2+=a1ra+ar+ar^2+\cdots=\dfrac{a}{1-r}

無限等比級数の意味・公式・例題をわかりやすく解説します。

無限等比級数とは

a,ar,ar2,...a,ar,ar^2,... は初項が aa で公比が rr の等比数列です。

この各項を足し合わせた無限和 a+ar+ar2+a+ar+ar^2+\cdots のことを無限等比級数と言います。

例えば,1+12+14+18+1161+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{8}+\dfrac{1}{16}\cdotsa=1,r=12a=1,r=\dfrac{1}{2} である無限等比級数です。

無限等比級数の公式

冒頭で述べたように,公比 rr1<r<1-1<r<1 を満たすとき, a+ar+ar2+=a1ra+ar+ar^2+\cdots=\dfrac{a}{1-r} が成立します。

例題1

1+12+14+18+1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{8}+\cdots という無限等比級数を計算せよ。

解答

初項 a=1a=1,公比 r=12r=\dfrac{1}{2} として無限等比級数の公式を使うと,

a1r=1+12+14+18+=1112=2\dfrac{a}{1-r}\\ =1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{8}+\cdots\\ =\dfrac{1}{1-\frac{1}{2}}\\ =2

余談:図による説明

公式を知らなくても,例題1の級数が 22 に収束することは下図を見れば納得できます。

無限等比級数の図

発散する無限等比級数の例

以下,初項について a0a\neq 0 とします。

無限等比級数は 1<r<1-1<r<1 の場合は収束しますが,r1|r|\geqq 1 の場合は収束せず発散します。より詳しく言うと,

  • a>0,r1a > 0,r \geqq 1 のとき正の無限大に発散(→例題2)
  • a<0,r1a <0,r \geqq 1 のとき負の無限大に発散(→例題3)
  • r1r\leqq -1 のとき振動(→例題4)

です。→数列の発散,収束,振動の意味と具体例

例題2

1+2+4+8+1+2+4+8+\cdots という無限等比級数は収束するか?

解答

初項が a=1a=1,公比が r=2r=2 である無限級数なので,発散する(正の無限大に発散する)。

例題3

(2)+(6)+(18)+(54)+(-2)+(-6)+(-18)+(-54)+\cdots という無限等比級数は収束するか?

解答

初項が a=2a=-2,公比が r=3r=3 である無限級数なので,発散する(負の無限大に発散する)。

例題4

1+(2)+4+(8)+1+(-2)+4+(-8)+\cdots という無限等比級数は収束するか?

解答

公比が r=2r=-2 である無限級数なので,発散する(振動する)。

高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ のT160では,もう少しだけ難しい問題と,計算ミスを減らすコツを紹介しています。

無限等比級数の公式の証明

では,以下の無限等比級数の公式を証明してみましょう。

無限等比級数の公式

a0a\neq 0 とする。

  • 1<r<1-1 < r < 1 のとき,
    k=1ark1=a+ar+ar2+=a1r\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}ar^{k-1}=a+ar+ar^2+\cdots=\dfrac{a}{1-r}

  • r1,1rr\leqq -1,1\leqq r のとき,上記の級数は発散する。

等比数列の和の公式を知っていれば,極限を取るだけで簡単に証明できます。ただし,r=1r=1 の場合は等比数列の和の形が異なるので場合分けが必要です。

証明
  • r=1r=1 のとき,求める無限級数の値は a+a+a+a+a+a+\cdots となり発散。

  • r1r\neq 1 のとき,無限等比級数の第 nn 項目までの和を SnS_n とおく:
    Sn=a+ar+ar2++arn1S_n=a+ar+ar^2+\cdots +ar^{n-1}
    これは,等比数列の和の公式より簡単に計算できる→等比数列の和の公式(例題・証明・応用)
    Sn=aarn1rS_n=\dfrac{a-ar^n}{1-r}
    求める無限級数の値は limnSn\displaystyle\lim_{n\to\infty}S_n である。
    これは,1<r<1-1 <r <1 のとき a1r\dfrac{a}{1-r} に収束,r1,1<rr \leqq -1, 1 <r のときに発散する。

補足

  • a+ar+ar2+a+ar+ar^2+\cdots をシグマを使って表すと,
    a+ar+ar2+=k=1ark1a+ar+ar^2+\cdots=\displaystyle\sum_{k=1}^{\infty}ar^{k-1} となります。

  • 等比数列の和の公式 a(rn1)r1\dfrac{a(r^n-1)}{r-1} よりも無限等比級数の公式 a1r\dfrac{a}{1-r} の方が綺麗です。これは,極限を取る操作のおかげで arnar^n の項が消えるためです。

  • 「無限級数」という言葉は「無限項の和」を表します。「無限級数の和」という言葉にはやや違和感を感じます(頭痛が痛いみたいな感じ)。

  • a1r\dfrac{a}{1-r} に収束する場合について,以下が成立するのは直感的にも納得できます。

    • 無限等比級数の値が初項 aa に比例する
    • 公比 rr11 に近いほど(絶対値が)大きくなり r1r\to 1 で発散する

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