因数分解公式(ソフィージェルマンの恒等式)

ソフィー・ジェルマン(Sophie Germain)の恒等式

a4+4b4=(a2+2ab+2b2)(a22ab+2b2)a^4+4b^4\\=(a^2+2ab+2b^2)(a^2-2ab+2b^2)

左辺は因数分解できなさそうな式ですが,因数分解できます! 整数問題で威力を発揮する恒等式です。

恒等式の導出

  • 右辺を展開して左辺に一致することを確認すれば,簡単に証明できます。

  • 恒等式を知らなくても,左辺を右辺に因数分解できます:

因数分解の流れ

a4+4b4=a4+4a2b2+4b44a2b2=(a2+2b2)24a2b2=(a2+2ab+2b2)(a22ab+2b2)a^4+4b^4\\ =a^4+4a^2b^2+4b^4-4a^2b^2\\ =(a^2+2b^2)^2-4a^2b^2\\ =(a^2+2ab+2b^2)(a^2-2ab+2b^2)

なぜ係数が4なのか

44 以外の場合にも同様の公式が得られないか探してみます。

より一般的に a4+kb4a^4+kb^4 に同様の手法を適用して強引に因数分解すると,

a4+kb4=(a2+2kab+kb2)(a22kab+kb2)a^4+kb^4=(a^2+\sqrt{2\sqrt{k}}ab+\sqrt{k}b^2)(a^2-\sqrt{2\sqrt{k}}ab+\sqrt{k}b^2)

となり,残念ながらルートが出てきてしまいます。

k2k\sqrt{k}と\sqrt{2\sqrt{k}} が整数になると嬉しそうです。そのような kk の条件を求めると,k=4n4(nk=4n^4\:(n は整数)となり,そのとき恒等式の左辺は a4+4n4b4a^4+4n^4b^4 となります。これはソフィージェルマンの恒等式で b=nbb=nb としたものに他なりません。

数学オリンピックの問題へ応用

ソフィー・ジェルマンの恒等式の威力を実感してもらうために,1969年の国際数学オリンピックルーマニア大会の問題を紹介します。

問題

「任意の自然数 nn に対して n4+an^4+a が素数でない」という条件を満たす自然数 aa が無限個存在することを証明せよ。

方針

ソフィージェルマンの恒等式を知らないとかなり厳しい問題です。 n4+an^4+a が合成数であるような aa が無限個存在することを示せばよいので,a=4k4a=4k^4 とすれば恒等式が使えます。

解答

a=4k4(ka=4k^4\:(k22 以上の自然数) のとき問題の条件を満たすことを示せば良い。つまり,任意の自然数 k2,nk\geq 2, n に対して n4+4k4n^4+4k^4 が合成数であることを示せば良い。

n4+4k4=(n2+2nk+2k2)(n22nk+2k2)n^4+4k^4=(n^2+2nk+2k^2)(n^2-2nk+2k^2)

と因数分解できるので,(n22nk+2k2)2(n^2-2nk+2k^2)\geq 2 を示せばよいが,これは

n22nk+2k2=(nk)2+k2n^2-2nk+2k^2=(n-k)^2+k^2 より成立。

積分の計算への応用

1x4+4\dfrac{1}{x^4 + 4} の積分をするときに応用できます。

x4+1=(x2+2x+1)(x22x+1) x^4 + 1 = (x^2 + \sqrt{2} x + 1) (x^2 - \sqrt{2} x + 1) を用いて部分分数分解をします。

dxx4+1=dx(x2+2x+1)(x22x+1)=122(x+2x2+2x+1+x+2x22x+1)dx\begin{aligned} &\int \dfrac{dx}{x^4 + 1}\\ &= \int \dfrac{dx}{(x^2 + \sqrt{2} x + 1) (x^2 - \sqrt{2} x + 1)}\\ &= \dfrac{1}{2\sqrt{2}} \int \left( \dfrac{x+\sqrt{2}}{x^2 + \sqrt{2} x + 1} + \dfrac{-x+\sqrt{2}}{x^2 - \sqrt{2} x + 1} \right) dx \end{aligned} というように部分分数分解ができます。

これ以降は x+2x2+2x+1dx=122x+2x2+2x+1+12dxx2+2x+1=12(x2+2x+1)x2+2x+1+12dx(x+22)2+12=12log(x2+2x+1)+arctan(2x+1)\begin{aligned} &\int \dfrac{x+\sqrt{2}}{x^2 + \sqrt{2} x + 1} dx\\ &= \dfrac{1}{2} \int \dfrac{2x+\sqrt{2}}{x^2 + \sqrt{2}x + 1} + \dfrac{1}{\sqrt{2}} \int \dfrac{dx}{x^2 + \sqrt{2}x + 1} \\ &= \dfrac{1}{2} \int \dfrac{(x^2 + \sqrt{2}x + 1)'}{x^2 + \sqrt{2}x + 1} + \dfrac{1}{\sqrt{2}} \int \dfrac{dx}{\left( x+\dfrac{\sqrt{2}}{2} \right)^2 + \dfrac{1}{2}}\\ &= \dfrac{1}{2} \log (x^2 + \sqrt{2}x + 1) + \arctan (\sqrt{2} x + 1) \end{aligned} と計算されます。

知名度は低いですが,数学オリンピックなどの難問ではたまに使う渋い恒等式です。

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