因数分解公式(ソフィージェルマンの恒等式)

更新日時 2021/03/07
ソフィー・ジェルマン(Sophie Germain)の恒等式

a4+4b4=(a2+2ab+2b2)(a22ab+2b2)a^4+4b^4\\=(a^2+2ab+2b^2)(a^2-2ab+2b^2)

左辺は因数分解できなさそうな式ですが,因数分解できます! 整数問題で威力を発揮する恒等式です。

目次
  • 恒等式の導出

  • なぜ係数が4なのか

  • 数学オリンピックの問題へ応用

恒等式の導出

  • 右辺を展開して左辺に一致することを確認すれば,簡単に証明できます。

  • 恒等式を知らなくても,左辺を右辺に因数分解できます:

因数分解の流れ

a4+4b4=a4+4a2b2+4b44a2b2=(a2+2b2)24a2b2=(a2+2ab+2b2)(a22ab+2b2)a^4+4b^4\\ =a^4+4a^2b^2+4b^4-4a^2b^2\\ =(a^2+2b^2)^2-4a^2b^2\\ =(a^2+2ab+2b^2)(a^2-2ab+2b^2)

なぜ係数が4なのか

44 以外の場合にも同様の公式が得られないか探してみます。

より一般的に a4+kb4a^4+kb^4 に同様の手法を適用して強引に因数分解すると,

a4+kb4=(a2+2kab+kb2)(a22kab+kb2)a^4+kb^4=(a^2+\sqrt{2\sqrt{k}}ab+\sqrt{k}b^2)(a^2-\sqrt{2\sqrt{k}}ab+\sqrt{k}b^2)

となり,残念ながらルートが出てきてしまいます。

k2k\sqrt{k}と\sqrt{2\sqrt{k}} が整数になると嬉しそうです。そのような kk の条件を求めると,k=4n4(nk=4n^4\:(n は整数)となり,そのとき恒等式の左辺は a4+4n4b4a^4+4n^4b^4 となります。これはソフィージェルマンの恒等式で b=nbb=nb としたものに他なりません。

数学オリンピックの問題へ応用

ソフィー・ジェルマンの恒等式の威力を実感してもらうために,1969年の国際数学オリンピックルーマニア大会の問題を紹介します。

問題

「任意の自然数 nn に対して n4+an^4+a が素数でない」という条件を満たす自然数 aa が無限個存在することを証明せよ。

方針

ソフィージェルマンの恒等式を知らないとかなり厳しい問題です。 n4+an^4+a が合成数であるような aa が無限個存在することを示せばよいので,a=4k4a=4k^4 とすれば恒等式が使えます。

解答

a=4k4(ka=4k^4\:(k22 以上の自然数) のとき問題の条件を満たすことを示せば良い。つまり,任意の自然数 k2,nk\geq 2, n に対して n4+4k4n^4+4k^4 が合成数であることを示せば良い。

n4+4k4=(n2+2nk+2k2)(n22nk+2k2)n^4+4k^4=(n^2+2nk+2k^2)(n^2-2nk+2k^2)

と因数分解できるので,(n22nk+2k2)2(n^2-2nk+2k^2)\geq 2 を示せばよいが,これは

n22nk+2k2=(nk)2+k2n^2-2nk+2k^2=(n-k)^2+k^2 より成立。

知名度は低いですが,数学オリンピックなどの難問ではたまに使う渋い恒等式です。

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