国際数学オリンピックの超難問3選

国際数学オリンピック(IMO)の過去問の中でも,完答者が極めて少ない超難問を3問紹介します。

・マスターデーモン(整数問題)
・20世紀最難問(幾何不等式)
・過去問の中で最難問だった(組合せ)

3問とも解説が大変なので解答はつけていません。勇者は挑戦してみてください。

※マスターデーモンのみヒントをつけているのでネタバレ注意です。

マスターデーモン

1990年 IMO中国大会 第3問です。数学オリンピック事典でマスターデーモンと呼ばれている超難問です。

問題

22 以上の整数 nn2n+1n2\dfrac{2^n+1}{n^2} が整数となるようなものを全て求めよ。

平均点は約2点。そんなに低いわけではありませんが,多くの人が部分点止まりです。完答した人は猛者308人中16人です。

問題文なら中学生でも理解できますが,私が知っている解き方では多くの高校生が知らない二つの大道具を使います。興味がある人は考えてみてください。

20世紀最難問

1996年 IMOインド大会 第5問です。20世紀のIMOの問題の中で最も平均点が低い問題です。

問題

凸六角形 ABCDEFABCDEF において,AB//DEAB//DEBC//EFBC//EFCD//FACD//FA とする。また,三角形 FABFABBCDBCDDEFDEF の外接円の半径を RA,RC,RER_A,\:R_C,\:R_E とおく。また,六角形の周の長さを PP とおく。

このとき RA+RC+REP2R_A+R_C+R_E\geq \dfrac{P}{2} を証明せよ。

凸とはへこんでないという意味です。

平均点は0.493/7点。完答した人は424人中6人!

幾何不等式は美しく,私の大好物でしたが全く手がでませんでした(^_^;)

ちなみに20世紀で二番目に平均点が低い難問は整数問題です。→数オリのテクニック〜Vieta jumping〜で解説しています。

21世紀最難問

21世紀は平均点0.5を下回る問題がバンバン出ています。→数学オリンピックの合格点推移

平均点と完答者数を考慮して自分が過去最難問だと思ったものを紹介します。2009年 IMOドイツ大会 第6問です。

問題

a1,a2,,ana_1,\:a_2,\cdots ,a_n を相異なる正の整数とし,MMn1n-1 個の正の整数からなる集合とする。また,MMs=a1+a2++ans=a_1+a_2+\cdots +a_n を含まない。数直線の 00 の地点にいるバッタが数直線の正の向きに nn 回ジャンプする。 nn 回のジャンプの距離は a1,a2,,ana_1,\:a_2,\cdots ,a_n の並び替えである。このとき並び替えをうまく選べばバッタが MM の要素に対応する n1n-1 点に一度も着地しないようにできることを証明せよ。

平均点は0.168/7点。完答した人は565人中3人!

そのうちの1人が日本人!(副島氏)

彼はその年,6問とも満点で2009年数学オリンピックの(同率)世界チャンプです。

2021年追記:2017年に平均点0.042点の問題が出題されました。

IMOの問3,問6は鑑賞するには良いですが,難しすぎるので演習として解くなら問1,問4からがオススメです。