この問題は arctan(tan の逆関数)とフィボナッチ数列に関する出題です。
ポイントはフィボナッチ数列に関する等式
an+1an−1−an2=(−1)n
でしょう。
これにより
a2m+11=a2m+12a2m+1=1+a2ma2m+2a2m+1=1+a2ma2m+2a2m+2−a2m
と変形できます。
tan の加法定理 tan(x+y)=1−tanxtanytanx+tany の辺々に arctan を当てはめると
x+y=arctan(1−tanxtanytanx+tany)
となります。x=arctanp,y=arctanq とおきなおすと
arctanp+arctanq=arctan1−pqp+q
という arctan の加法定理が得られます。
a2m+11=1+a2ma2m+2a2m+2−a2m
と見比べることで
arctana2m+11=arctana2m+2−arctana2m⋯⋯(∗)
が得られます。
ゆえに
m=0∑∞b2m+1=m→∞limarctana2m+2−arctana2+arctana1=2π−4π+4π=2π
と計算されます。
なお,(∗) で tanx=2π−tanx1 に注意すると
arctana2m+11=arctana2m1−arctana2m+21
(つまり b2m+1+b2m+2=b2m)が得られます。
このようにフィボナッチ数列の性質と arctan の加法定理を融合させることにより本問の結論が得られるのです。arctan は高校範囲ではないため,適切に調整した誘導が (2) ということになります。
余談ですが,フィボナッチ数列の等式を用いると次のような無限級数も計算できます。
n=1∑∞anan+1(−1)n−1=n=1∑∞anan+1anan+2−an+12=n=1∑∞(an+1an+2−anan+1)=n→∞lim(an+1an+2−a1a2)=21+5−1=25−1
3年ほど前からフィボナッチ数列の逆数和にまつわる問題が医科単科大学の入試で出題されるだろうと予想していましたが,まさか東京科学大学とは思っていませんでした。医科歯科と東工大が合併した影響が大きく出ている問題だと思います。