微分と極限の交換
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この記事では,微分と極限の交換についての例や定理を見ていきます。
- は 上の微分可能な関数列で に収束
かつ
- は 上で一様収束
ならば, となる。つまり,微分と極限が交換できる。
※一様収束の意味は,→各点収束と一様収束の違いと具体例
例
例
交換できる例
上の関数 を考えます。これは, に収束します(対数関数のマクローリン展開)。
そして, は, に一様収束します。これは, からわかります。つまり, です。
交換できない例
元の関数列は収束するが,導関数の列は(一様)収束しない例を考えてみましょう。
上の関数 を考えます。
とすると,各 で となります。
一方,導関数については となります。
よって となってしまいます。
定理の条件を満たさないが交換できる例
定理の条件を満たさないが交換できる例
この定理は十分条件を述べていますが必要条件ではありません。導関数列が一様収束しないが,微分と極限が交換できる例もあります。
関数列 を考えてみます(定義域は正の実数全体とします)。
です。そのため です。
また, より です。
しかし, は一様収束しません。実際下図を見ると「とんがり」があるため,一様収束しないこと分かります。
このように が一様収束しなくても,微分と極限が交換できることがあります。
定理の証明
定理の証明
「一様収束 → 積分と極限が交換できる」ことを利用します。
を任意に取る。
である。
が一様収束することから,積分と極限を交換できるので, となる。
両辺を で微分することで を得る。
上の証明から, が に収束する必要はなく, さえ成立すれば十分となります。
微分と極限の交換はあまり登場しません。というのもルベーグ積分の方法では微分が定義しにくいからです。