重積分を用いたバーゼル問題の美しい証明 でも説明していますが,
n=1∑∞n21=k=0∑∞(2k+1)21+m=1∑∞(2m)21=k=0∑∞(2k+1)21+41m=1∑∞m21
と変形することで
n=1∑∞n21=34k=0∑∞(2k+1)21
が得られます。
よって次の式を証明すればよいことになります。
定理
k=0∑∞(2k+1)21=8π2
今回は
∫01x2−1logxdx
を用います。
ステップ1
まずは積分とバーゼル問題の関係付けをします。
ステップ1
x2−11 をマクローリン展開する。
x2−11=−k=0∑∞x2k
よって
x2−1logx=−k=0∑∞x2klogx
である。
これより
∫01x2−1logxdx=−∫01k=0∑∞x2klogxdx
となる。ここで単調収束定理(詳しくは ルベーグの収束定理 を参照)を用いると,積分と極限が交換でき
∫01x2−1logxdx=−k=0∑∞∫01x2klogxdx
となる。
項別積分すると
∫01x2klogx=[2k+11x2k+1logx]01−2k+11∫01x2k+1⋅x1dx=−(2k+1)21[x2k+2]01=−(2k+1)21
となる。
よって
∫01x2−1logxdx=k=0∑∞(2k+1)21
を得る。
ステップ2
積分が実際に 8π2 であることを証明します。
計算の流れは 留数定理による対数・無理関数の積分 の例題3と同じです。
ステップ2-1
ステップ2-1(設定)
もとめる積分を I とおく。
まず与式を x=y1 に置換する。
∫∞1x−2−1−logx(−x2dx)=∫1∞x2−1logxdx
よって
2I=∫0∞x2−1logxdx
となる。
この積分を留数定理で計算する。
そのまま計算するのではなく
∮Cz2−1(logz)2dz
を考える。
なお,下図のような積分路 C を考える。
- C1:半径 R,中心 0 の円のうち,Re(z)>0, −δ<Im(z)<δ の部分を取り除いたもの
- C2+:半径 ε,中心 0 の円のうち,Im(z)>δ の部分
- C2−:半径 ε,中心 0 の円のうち,Im(z)<−δ の部分
- C3:半径 ε,中心 0 の円のうち,Re(z)>0, −δ<Im(z)<δ の部分を取り除いたもの
- L1+:C2+ と C3 を結ぶ線分
- L1−:C2− と C3 を結ぶ線分
- L2+:C2+ と C1 を結ぶ線分
- L2+:C2− と C1 を結ぶ線分
(L1+,L1−,L2+,L2− は虚部が δ であることに注意)

留数定理より
∮Cz2−1(logz)2dz=2πiRes(z2−1(logz)2,−1)=2πiz→−1limz−1(logz)2=−πi(log(−1))2=−πi(πi)2=π3i
である。
以下,各積分路での計算を行う。
ステップ2-2:C1,C2
ステップ2-2
C1 上での積分を評価する。
R→∞lim∣∣∫C1z2−1(logz)2∣∣≦R→∞lim∫C1∣z∣2−1∣logz∣2∣dz∣≦R→∞lim∫02πR2−1R(logR)2+Rθ2dθ=R→∞lim(R2−12πR(logR)2+3(R2−1)8π3R)=0
である。
z=Reiθ と置換している。途中で
∣logz∣2=∣logR+iθ∣2≦(logR)2+θ2
と計算している。
なお θ での積分の範囲は [0,2π] ではないが,[0,2π] に含まれるため,上記のような不等式で評価してよい。
次に C3 上での積分を評価する。z2−11 は C3 上で正則であるため,最大値 M を持つことを用いる。
ε→0lim∣∣∫C3z2−1(logz)2dz∣∣≦ε→0lim∫C3∣z2−1∣∣logz∣2∣dz∣≦ε→0lim∫02πMε((logε)2+θ2)dθ=0
である。
ステップ2-3:C2±
ステップ2-3
logz は z=1 近傍でローラン展開することで
log(z)=(z−1)+21(z−1)2+⋯
と表される
C2+ の計算
z=εeiθ+1 と置換する。このとき,ローラン展開により
log(z)=εeiθ+21ε2e2iθ+⋯
と表される。一方,十分小さい ε において
z2−11=εeiθ(εeiθ+2)1∼2εeiθ1
と表される。(これらの差分は ε→0 で 0 に収束する)
よって,十分小さい ε において
z2−1(logz)2∼2εeiθεeiθ+O(ε2)=2εeiθ+O(ε)
と表される。
こうして
δ→0limε→0lim∫C2+z2+1(logz)2dz→ε→0lim∫π0(2εeiθ+O(ε))εieiθdθ=ε→0limε×(ε の整式)=0
となる。
C2− の計算
同様に置換をする。
前のケースとは異なり,偏角 2π 分 log の値がずれて
logz=log(1+εeiθ)+2πi
と表される。よって
(logz)2∼(2πi)2+4πiεeiθ+O(ε2)
となる。ゆえに
z2−1(logz)2∼2εeiθ−4π2+4πiεeiθ+O(ε)=−εeiθ2π2+2πi+O(ε)
と表される。
こうして
δ→0limε→0lim∫C2−z2+1(logz)2dz=ε→0lim∫π2π(−εeiθ2π2+2πi+O(ε))εieiθdθ=ε→0lim∫π2π(−2πi+O(ε))dθ=−2π3i
ステップ2-4:Li±
最後の直線上の積分を確認しましょう。
ステップ2-4
以下,L+=L1+∪L2+,L−=L1−∪L2− とする。
L+,L− 上での積分を評価する。
L+ 上で被積分関数は (x+iδ)2−1(log(x+iδ))2 となる。有界区間(今は [ε,R] 上を考える)これは δ→0 で x2−1(logx)2 に一様収束する。
よって
δ→0lim∫L+z2−1(logz)2dz=∫ε1−ε′x2−1(logx)2dx+∫1+ε′Rx2−1(logx)2dx
が得られる。(ただし ε′ は ε→0 で 0 に収束する十分小さい正数)
同様に L− で被積分関数は (x+iδ)2−1(log(x−iδ))2 となり,δ→0 で x2−1(logx+2πi)2 に一様収束する。なお,logz=log∣z∣+iargz であったことから,L− において argz→2π であることに注意する。
こうして
δ→0lim∫L−z2−1(logz)2dz=∫R1+ε′x2−1(logx+2πi)2dx+∫1−ε′εx2−1(logx+2πi)2dx=−∫ε1−ε′x2−1(logx+2πi)2dx−∫1+ε′Rx2−1(logx+2πi)2dx
が得られる。
まとめ
証明
以上をまとめると
R→∞limε→0limδ→0lim∮Cz2−1(logz)2dz=∫0∞x2−1(logx)2dx−∫0∞x2−1(logx+2πi)2dx=∫0∞x2−14π2−4πilogxdx=4π2∫0∞x2−11dx−4iπ∫0∞x2−1logxdx
となる。一方で
R→∞limε→0limδ→0lim∮Cz2−1(logz)2dz=π3i−2π3i=−π3i
である。
虚部を比較することで
I=21∫0∞x2−1logxdx=8π2
が得られる。