留数定理を用いたバーゼル問題の美しい証明

バーゼル問題

n=11n2=π26 \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^2} = \dfrac{\pi^2}{6}

この記事ではバーゼル問題を留数定理を用いて証明します。

留数定理については

を参照してください。バーゼル問題については

もどうぞ。

重積分を用いた別証もあります。

証明

重積分を用いたバーゼル問題の美しい証明 でも説明していますが,

n=11n2=k=01(2k+1)2+m=11(2m)2=k=01(2k+1)2+14m=11m2\begin{aligned} \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^2} &= \sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{1}{(2k+1)^2} + \sum_{m=1}^{\infty} \dfrac{1}{(2m)^2}\\ &= \sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{1}{(2k+1)^2} + \dfrac{1}{4} \sum_{m=1}^{\infty} \dfrac{1}{m^2} \end{aligned} と変形することで n=11n2=43k=01(2k+1)2 \sum_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^2} = \dfrac{4}{3} \sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{1}{(2k+1)^2} が得られます。

よって次の式を証明すればよいことになります。

定理

k=01(2k+1)2=π28 \sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{1}{(2k+1)^2} = \dfrac{\pi^2}{8}

今回は

01logxx21dx \int_0^1 \dfrac{\log x}{x^2-1} dx

を用います。

ステップ1

まずは積分とバーゼル問題の関係付けをします。

ステップ1

1x21\dfrac{1}{x^2-1} をマクローリン展開する。

1x21=k=0x2k \dfrac{1}{x^2-1} = - \sum_{k=0}^{\infty} x^{2k}

よって logxx21=k=0x2klogx \dfrac{\log x}{x^2-1} = -\sum_{k=0}^{\infty} x^{2k} \log x である。

これより 01logxx21dx=01k=0x2klogxdx \int_0^1 \dfrac{\log x}{x^2 - 1} dx = - \int_0^1 \sum_{k=0}^{\infty} x^{2k} \log x dx となる。ここで単調収束定理(詳しくは ルベーグの収束定理 を参照)を用いると,積分と極限が交換でき 01logxx21dx=k=001x2klogxdx \int_0^1 \dfrac{\log x}{x^2 - 1} dx = - \sum_{k=0}^{\infty} \int_0^1 x^{2k} \log x dx となる。

項別積分すると 01x2klogx=[12k+1x2k+1logx]0112k+101x2k+11xdx=1(2k+1)2[x2k+2]01=1(2k+1)2\begin{aligned} &\int_0^1 x^{2k} \log x \\ &= \Big[ \dfrac{1}{2k+1} x^{2k+1} \log x \Big]_0^1\\ &\quad - \dfrac{1}{2k+1} \int_0^1 x^{2k+1} \cdot \dfrac{1}{x} dx\\ &= -\dfrac{1}{(2k+1)^2} \Big[ x^{2k+2} \Big]_0^1\\ &= - \dfrac{1}{(2k+1)^2} \end{aligned} となる。

よって 01logxx21dx=k=01(2k+1)2 \int_0^1 \dfrac{\log x}{x^2-1} dx = \sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{1}{(2k+1)^2} を得る。

ステップ2

積分が実際に π28\dfrac{\pi^2}{8} であることを証明します。

計算の流れは 留数定理による対数・無理関数の積分 の例題3と同じです。

ステップ2

もとめる積分を II とおく。

まず与式を x=1yx = \dfrac{1}{y} に置換する。 1logxx21(dxx2)=1logxx21dx\begin{aligned} &\int_{\infty}^1 \dfrac{-\log x}{x^{-2}-1} \left( - \dfrac{dx}{x^2} \right)\\ &= \int_1^{\infty} \dfrac{\log x}{x^2-1} dx \end{aligned}

よって 2I=0logxx21dx 2I = \int_0^{\infty} \dfrac{\log x}{x^2-1} dx となる。

この積分を留数定理で計算する。

そのまま計算するのではなく C(logz)2z21dz \oint_{C} \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} dz を考える。

なお,下図のような積分路 CC を考えている。

picy

留数定理より C(logz)2z21dz=2πi  Res((logz)2z21,1)=2πilimz1(logz)2z1=πilog2(1)=π3i\begin{aligned} &\oint_{C} \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} dz\\ &= 2\pi i \; \mathrm{Res} \left( \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} , -1 \right)\\ &= 2\pi i \lim_{z \to -1} \dfrac{(\log z)^2}{z-1}\\ &= -\pi i \log^2 (-1)\\ &= - \pi^3 i \end{aligned} である。

各積分路の計算

CRC_R 上での積分を評価する。

limRCR(logz)2z21limRCRlogz2z21dzlimR02πR(logR)2+Rθ2R21dθ=limR(2πR(logR)2R21+8π3R3(R21))=0\begin{aligned} \lim_{R \to \infty} \left| \int_{C_R} \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} \right| & \leqq \lim_{R \to \infty} \int_{C_R} \dfrac{|\log z|^2}{|z|^2-1} |dz|\\ & \leqq \lim_{R \to \infty} \int_0^{2\pi} \dfrac{R(\log R)^2 + R\theta^2}{R^2-1} d\theta\\ &= \lim_{R \to \infty} \left( \dfrac{2 \pi R (\log R)^2}{R^2-1} + \dfrac{8\pi^3 R}{3(R^2-1)} \right)\\ &= 0 \end{aligned} である。

z=Reiθz = Re^{i\theta} と置換している。途中で logz2=logR+iθ2(logR)2+θ2\begin{aligned} |\log z|^2 &= |\log R + i\theta|^2\\ &\leqq (\log R)^2 + \theta^2 \end{aligned} と計算している。

なお θ\theta での積分の範囲は [0,2π][0,2\pi] ではないが,[0,2π][0,2\pi] に含まれるため,上記のような不等式で評価してよい。

  \;

次に CεC_{\varepsilon} 上での積分を評価する。1z21\dfrac{1}{z^2-1}CεC_{\varepsilon} 上で正則であるため,最大値 MM を持つことを用いる。 limε0Cε(logz)2z21dzlimε0Cεlogz2z21dzlimε002πMε((logε)2+θ2)dθ=0\begin{aligned} \lim_{\varepsilon \to 0} \left| \int_{C_{\varepsilon}} \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} dz \right| &\leqq \lim_{\varepsilon \to 0} \int_{C_\varepsilon} \dfrac{|\log z|^2}{|z^2-1|}|dz|\\ &\leqq \lim_{\varepsilon \to 0} \int_0^{2 \pi} M\varepsilon ((\log \varepsilon)^2 + \theta^2) d\theta\\ &= 0 \end{aligned} である。

\:

L+,LL_{+},L_{-} 上での積分を評価する。

L+L_{+} 上で被積分関数は (log(x+iδ))2(x+iδ)21\dfrac{(\log (x+i\delta))^2}{(x+i\delta)^2-1} となる。有界区間(今は [ε,R][\varepsilon , R] 上を考える)これは δ0\delta \to 0(logx)2x21\dfrac{(\log x)^2}{x^2-1} に一様収束する。

よって limδ0L+(logz)2z21dz=εR(logx)2x21dx \lim_{\delta \to 0} \int_{L_{+}} \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} dz = \int_{\varepsilon}^{R} \dfrac{(\log x)^2}{x^2-1} dx が得られる。

同様に LL_{-} で被積分関数は (log(xiδ))2(x+iδ)21\dfrac{(\log (x-i\delta))^2}{(x+i\delta)^2-1} となり,δ0\delta \to 0(logx+2πi)2x21\dfrac{(\log x + 2\pi i)^2}{x^2-1} に一様収束する。なお,logz=logz+iargz\log z = \log |z| + i \arg z であったことから,LL_{-} において argz2π\arg z \to 2\pi であることに注意する。

こうして limδ0L(logz)2z21dz=Rε(logx+2πi)2x21dx=εR(logx+2πi)2x21dx\begin{aligned} \lim_{\delta \to 0} \int_{L_{-}} \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} dz &= \int_{R}^{\varepsilon} \dfrac{(\log x + 2\pi i)^2}{x^2-1} dx\\ &= -\int_{\varepsilon}^R \dfrac{(\log x + 2\pi i)^2}{x^2-1} dx \end{aligned} が得られる。

以上をまとめると limRlimε0limδ0C(logz)2z21dz=0(logx)2x21dx0(logx+2πi)2x21dx=04π24πilogxx21dx=4π201x21dx4iπ0logxx21dx\begin{aligned} &\lim_{R \to \infty} \lim_{\varepsilon \to 0} \lim_{\delta \to 0} \oint_C \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} dz\\ &= \int_{0}^{\infty} \dfrac{(\log x)^2}{x^2-1} dx -\int_{0}^{\infty} \dfrac{(\log x + 2\pi i)^2}{x^2-1} dx\\ &= \int_{0}^{\infty} \dfrac{4\pi^2-4\pi i \log x}{x^2-1} dx\\ &= 4\pi^2\int_{0}^{\infty} \dfrac{1}{x^2-1} dx-4 i \pi \int_{0}^{\infty} \dfrac{\log x}{x^2-1} dx \end{aligned} となる。一方で limRlimε0limδ0C(logz)2z21dz=π3i \lim_{R \to \infty} \lim_{\varepsilon \to 0} \lim_{\delta \to 0} \oint_C \dfrac{(\log z)^2}{z^2-1} dz =- \pi^3 i である。

虚部を比較することで I=120logxx21dx=π28 I = \dfrac{1}{2} \int_{0}^{\infty} \dfrac{\log x}{x^2-1} dx = \dfrac{\pi^2}{8} が得られる。

この積分は東大数学科の院試でも登場しています。