置換積分で簡単になる計算例

置換積分の公式(不定積分)

x=g(t)x=g(t) と置換すると, f(x)dx=f(g(t))dxdtdt \int f(x)dx=\int f(g(t))\dfrac{dx}{dt}dt である。

この記事では置換積分がうまく効く例題を紹介します。

置換積分のキソは 置換積分の公式の証明と例題 をどうぞ。

三角関数と置換積分パート1

これらの問題は三角関数の逆関数に関係する積分です。

例題1

次の積分を計算せよ

  1. 0111+x2dx\displaystyle \int_0^{1} \dfrac{1}{1+x^2} dx
  2. 0111x2dx\displaystyle \int_0^1 \dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}} dx

1 は tan\tan の逆関数と関係します。2 は sin\sin の逆関数と関係します。

証明
  1. x=tanθx = \tan \theta と置換する。
    このとき dx=1cos2θdθdx = \dfrac{1}{\cos^2 \theta} d\theta となる。 0111+x2dx=0π411+tan2θdθcos2θ=0π4dθ=π4\begin{aligned} \int_0^1 \dfrac{1}{1+x^2} dx &= \int_0^{\frac{\pi}{4}} \dfrac{1}{1+\tan^2 \theta} \dfrac{d\theta}{\cos^2 \theta}\\ &= \int_0^{\frac{\pi}{4}} d\theta\\ &= \dfrac{\pi}{4} \end{aligned}

  2. x=sinθx = \sin \theta と置換する。
    このとき dx=cosθdθdx = \cos \theta d\theta となる。 0111x2dx=0π2cosθdθ1sin2θ=0π2dθ=π2\begin{aligned} \int_0^1 \dfrac{1}{\sqrt{1-x^2}} dx &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{\cos \theta d\theta}{\sqrt{1-\sin^2 \theta}}\\ &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} d\theta\\ &= \dfrac{\pi}{2} \end{aligned}

より発展的なことを知りたい方は → 逆三角関数(Arcsin,Arccos,Arctan)の意味と性質 をどうぞ。

三角関数と置換積分パート2

三角関数の有理式が登場する場合,必勝法があります。

例題2

次の積分を計算せよ。

dxsinx \int \dfrac{dx}{\sin x}

tanx2=t\tan \dfrac{x}{2} = t と置換しましょう。すると cosx=1t21+t2sinx=2t1+t2dx=21+t2dt \cos x = \dfrac{1-t^2}{1+t^2}\\ \sin x = \dfrac{2t}{1+t^2}\\ dx = \dfrac{2}{1+t^2} dt と置換されます。その結果被積分関数がシンプルなものになります。

上の式の詳しい計算過程は 三角関数の有理式の積分 をご覧ください。

証明

tanx2=t\tan \dfrac{x}{2} = t と置換すると sinx=2t1+t2\sin x = \dfrac{2t}{1+t^2}dx=21+t2dtdx = \dfrac{2}{1+t^2} dt となるため dxsinx=1+t22t21+t2dx=1tdt=logt=logtanx2\begin{aligned} \int \dfrac{dx}{\sin x} &= \int \dfrac{1+t^2}{2t} \cdot \dfrac{2}{1+t^2} dx\\ &=\dfrac{1}{t} dt\\ &= \log |t|\\ &= \log \left| \tan \dfrac{x}{2} \right| \end{aligned}

被積分関数の対称性を活用するパターン

例題3

次の積分を計算せよ。

0π2sinθsinθ+cosθdθ \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{\sin \theta}{\sin \theta + \cos \theta} d\theta

King Property abf(x)dx=abf(a+bx)dx \int_a^b f(x) dx = \int_a^b f(a+b-x) dx を用いる問題です。

解答

I=0π2sinθsinθ+cosθdθ I = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{\sin \theta}{\sin \theta + \cos \theta} d\theta とおく。

θ=π2ϕ\theta = \dfrac{\pi}{2} - \phi と置換すると, I=π20cosθsinθ+cosθ(dθ)=0π2cosθsinθ+cosθdθ\begin{aligned} I &= \int_{\frac{\pi}{2}}^0 \dfrac{\cos \theta}{\sin \theta + \cos \theta} (-d\theta)\\ &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{\cos \theta}{\sin \theta + \cos \theta} d\theta \end{aligned} となる。

よって 2I=0π2sinθ+cosθsinθ+cosθdθ=0π2dθ=π2\begin{aligned} 2I &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{\sin \theta + \cos \theta}{\sin \theta + \cos \theta} d\theta\\ &= \int_0^{\frac{\pi}{2}} d\theta\\ &= \dfrac{\pi}{2} \end{aligned} である。こうして I=π4I = \dfrac{\pi}{4} を得る。

偶関数・奇関数に変形できるパターン

例題4

次の積分を計算せよ。

122logxx2+1dx \int_{\frac{1}{2}}^2 \dfrac{\log x}{x^2 + 1} dx

f(x)f(x) が偶関数だと aaf(x)dx=20af(x)dx \int_{-a}^a f(x) dx = 2 \int_0^a f(x) dx で,奇関数だと aaf(x)dx=0 \int_{-a}^a f(x) dx = 0 となります。

詳しくは 偶関数と奇関数の意味,性質などまとめ をご覧ください。

非常に難しく思える積分もよく見ると奇関数だったため積分値は 00 というパターンがしばしばあります。

解答
  1. logx=t\log x = t と置換すると x=etx = e^t となる。また dx=etdtdx = e^t dt となる。よって 122logxx2+1dx=log2log2te2t+1etdt=log2log2tet+etdt\begin{aligned} \int_{\frac{1}{2}}^2 \dfrac{\log x}{x^2 + 1} dx &= \int_{-\log 2}^{\log 2} \dfrac{t}{e^{2t}+1} e^t dt\\ &= \int_{-\log 2}^{\log 2} \dfrac{t}{e^{t}+e^{-t}} dt\\ \end{aligned} となる。ここで et+ete^t + e^{-t} は偶関数で tt は奇関数であるため, log2log2tet+etdt=0 \int_{-\log 2}^{\log 2} \dfrac{t}{e^{t}+e^{-t}} dt = 0 となる。

応用すると 0logxx2+1dx=0 \int_0^{\infty} \dfrac{\log x}{x^2+1} dx = 0 となります。

難しい積分をスマートに解けると楽しいです。