例題
不定積分
∫sinx+cosxsinxdx
を計算せよ。
三角関数の有理式の中では比較的単純なものですが,この方法でやると(機械的にできますが)計算はかなり大変です。ちなみに,これは対称性を用いた定積分の計算(King Property)の問題1にも登場する関数です。
Arctan
が登場するので厳密には高校数学範囲外ですが,適切な区間の定積分にすれば高校範囲内です。
解答
まず,tan2x=t
と置換すると,上記の公式より求める不定積分は
∫2t+(1−t2)2t⋅1+t22dt=−4∫(t2+1)(t−1+2)(t−1−2)tdt
これを部分分数分解すると,
−4∫{t2+1At+B+t−1+2C+t−1−2D}dt
ただし,A=B=−41,C=D=81
よって,上式は
∫{t2+1t+1−2(t−1+2)1−2(t−1−2)1}dt=21log(t2+1)+Arctant−21log∣t−1+2∣−21log∣t−1−2∣+C=21log(t2+1)+Arctant−21log∣t2−2t−1∣+C
(Arctan
は
tan
の逆関数です→逆三角関数(Arcsin,Arccos,Arctan)の意味と性質)
ここまででもOKだが,t
を
x
に戻すと(たまたま)きれいになる:
2x−21log∣sinx+cosx∣+C
なお,この例題に関しては tan2x=t と置換しないおもしろい別解もあります。
別解1
I=∫sinx+cosxsinxdx,J=∫sinx+cosxcosxdx
とおく。
I+J=∫1dx=x+C
および
I−J=∫sinx+cosxsinx−cosxdx=−∫(sinx+cosx)(sinx+cosx)′dx=−log∣sinx+cosx∣+C
より I=2x−21log∣sinx+cosx∣+C
別解2
分母を単純な三角関数にするために合成してから x+4π=t と置換する:
∫sinx+cosxsinxdx=∫2sin(x+4π)sinxdx=∫sintsin(t−4π)dt=21∫sintsint−costdt=21t−21log∣sint∣+C=21x−21log∣sinx+cosx∣+C
→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT25では,このような定積分で計算ミスを減らすコツも紹介しています。
例題の積分,相当頭のいい人なら直感で原始関数を思いつくかもしれませんね。