座標を用いた射影平面の定義

定義

R3\{O}\mathbb{R}^3 \backslash \{ \mathrm{O} \} に次のように同値関係 \sim を定める。

(x,y,z),(x,y,z)R3\{O}(x,y,z) , (x' , y' , z') \in \mathbb{R}^3 \backslash \{ \mathrm{O} \} に対して
(x,y,z)(x,y,z)    (x,y,z) \sim (x' , y' , z') \iff ある 00 でない実数 kk があって,x=kxx = kx'y=kyy = ky'z=kzz = kz'

この同値関係による商 R3\{O}/\mathbb{R}^3 \backslash \{ \mathrm{O} \} / \sim射影平面 RP2\mathbb{R} P^2という。

この記事では座標を用いた射影平面の定義を紹介します。

射影平面における直線・曲線の式

「射影平面における直線・曲線」について考えてみます。

f(x,y,z)=0f(x,y,z)=0 が射影平面上の曲線を表すのはどのようなときでしょうか?

斉次式

多項式 f(x,y,z)f(x,y,z)同じ次数の単項式の和で表される とき 斉次多項式 という。

斉次多項式の例
  1. f(x,y,z)=ax+by+czf(x,y,z) = ax + by + cz
  2. g(x,y,z)=x3+3x2y+3xy2+y3=(x+y)3g(x,y,z) = x^3 + 3x^2y + 3x y^2 + y^3 = (x+y)^3
  3. h(x,y,z)=x4+xy3+xy2zh(x,y,z) = x^4 + xy^3 + xy^2z
定理

f(x,y,z)f(x,y,z)dd 次式からなる斉次多項式とする。このとき,k0k \neq 0 となる任意の実数について f(kx,ky,kz)=kdf(x,y,z) f( k x , k y , kz ) = k^d f(x,y,z) となる。

斉次多項式によって RP2\mathbb{R} P^2 上の曲線が与えられます。実際,[x,y,z][x,y,z][x,y,z]\sim [x',y',z'] なら,f(x,y,z)=0    f(x,y,z)=0f(x,y,z)=0 \iff f(x',y',z')=0 が成立します。つまりff が斉次式なら射影平面上の各点に対して f=0f=0 か否かがきちんと定義できるというわけです。

ただし,(x,y,z)(x,y,z)\sim による同値類を [x,y,z][x,y,z] と書きました。

射影平面のイメージ

射影平面の3通りの定義 の定義と等価であることを確認していきます。

平面に無限遠点を追加した集合

R2\mathbb{R}^2RP2\mathbb{R} P^2 に次のような対応を定めます。

R2(x,y)RP2[x,y,1] \begin{matrix} \mathbb{R}^2\\ (x,y) \end{matrix} \begin{matrix} \longrightarrow\\ \longrightarrow \end{matrix} \begin{matrix} \mathbb{R} P^2\\ [x,y,1] \end{matrix}

こうして射影平面の中に R2\mathbb{R}^2 を埋め込むことができました。

一方で Z0Z \neq 0 となる [X,Y,Z][X,Y,Z] に対して,同値関係より [X,Y,Z]=[XZ,YZ,1][X,Y,Z] = \left[ \dfrac{X}{Z} , \dfrac{Y}{Z} , 1 \right] となります。

よって (XZ,YZ)\left( \dfrac{X}{Z} , \dfrac{Y}{Z} \right) とすると R2\mathbb{R}^2 の元が得られます。

ここまでの議論では [X,Y,0][X,Y,0] という元が溢れますね。

X0=\dfrac{X}{0} = \infty のようなイメージを持つと,[X,Y,0][X,Y,0]R2\mathbb{R}^2 において「無限遠」に対応します。

半球を貼りあわせたもの

このイメージは同値関係の定義からの着想です。

R3\{O}\mathbb{R}^3 \backslash \{ \mathrm{O} \} の点 (x,y,z)(x,y,z) を任意に取ったとき, (xx2+y2+z2,yx2+y2+z2,zx2+y2+z2) \left( \dfrac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} , \dfrac{y}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} , \dfrac{z}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} \right) は単位球面上の点です。

この点は (x,y,z)(x,y,z) と同値になります。

よって RP2\mathbb{R} P^2 を考える際,R3\{O}\mathbb{R}^3 \backslash \{\mathrm{O}\} を3次元単位球面に制限しても問題がないことになります。

三次元空間中の原点を通る直線の集合

同値関係の定義を思い出すと,R3\mathbb{R}^3 で原点を通る直線上の点はすべて RP3\mathbb{R} P^3 上で一致することになります。

斉次化

R2\mathbb{R}^2 上の曲線 CC から,RP2\mathbb{R} P^2 上の曲線 C~\tilde{C} への以下のような対応を考えます。

f(x,y)=0f(x,y) = 0 で表される R2\mathbb{R}^2 上の曲線 CC に対して,

Zdf(XZ,YZ)=0 Z^d f \left( \dfrac{X}{Z} , \dfrac{Y}{Z} \right) = 0 が表す曲線 C~\tilde{C} への対応を考える。

ただし,多項式 f(x,y)f(x,y) の最高次数を dd とした。

yx2=0y - x^2 = 0 で与えられる R2\mathbb{R}^2 上の曲線 CC を考える。

x=XZ,y=YZx = \dfrac{X}{Z} , y = \dfrac{Y}{Z} を代入すると YZ(XZ)2=0\dfrac{Y}{Z} - \left( \dfrac{X}{Z} \right)^2 = 0 となる。

両辺に Z2Z^2 を掛けて YZX2=0YZ - X^2 = 0 を得る。

これは斉次式であり,RP2\mathbb{R} P^2 上の曲線を表す。

射影平面のアイデアは楕円曲線などに応用されます。