入試数学コンテスト第7回第6問解答解説

更新日時 2022/02/05
目次
  • 第6問

第6問

第6問

p,q>0p,q>0 とする。xyzxyz 空間において立体 D1,D2,D3D_1 , D_2 , D_3 を次のように定義する。

  • D1D_1:中心 (p,0,0)(p,0,0),半径 qq である xyxy 平面内の円盤を yy 軸中心に1回転させてできるドーナツ状の立体。
  • D2D_2:中心 (0,p,0)(0,p,0),半径 qq である yzyz 平面内の円盤を zz 軸中心に1回転させてできるドーナツ状の立体。
  • D3D_3:中心 (0,0,p)(0,0,p),半径 qq である zxzx 平面内の円盤を xx 軸中心に1回転させてできるドーナツ状の立体。

D1D2D3D_1 \cup D_2 \cup D_3 の体積を V(p,q)V(p,q) とおく。

(1) pqp \geqq q のとき,D1D_1 の表面積と体積をそれぞれ p,qp,q を用いて表せ。

(2) limp(limqV(p,q)paqb) \lim_{p \to \infty} \left( \lim_{q \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^a q^b} \right) が0でない実数値に収束するような実数 a,ba,b を求め,そのときの極限値を求めよ。

(3) limq(limpV(p,q)pcqd) \lim_{q \to \infty} \left( \lim_{p \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^c q^d} \right) が0でない実数値に収束するような実数 c,dc,d を求め,そのときの極限値を求めよ。

(4) D1D2D3=D_1 \cap D_2 \cap D_3 = \emptyset であるための必要十分条件を p,qp,q を用いて表せ。

空間図形の問題です。立体の表面積,体積計算についての知識と,図形の動きをイメージする能力が求められます。

観察

まずは図を描いてみましょう。D1D_1 は次のような立体です。

図1

また yy 軸を含む平面での断面は以下のようになるので,

図2

D1D_1 を表す不等式は D1 ⁣:(x2+z2p)2+y2q2D_1 \colon \left(\sqrt{x^2+z^2}-p\right)^2+y^2\leq q^2 となることがわかります。

(1)

(1) は単純な表面積,体積の計算です。(→回転体の体積を求める公式

第6問(1)

D1D_1 は不等式(xp)2+y2r2(x-p)^2+y^2 \leq r^2で表される領域を yy 軸について回転させた図形である。

図3

pqp \geq q だから,領域の境界は図のように x=p±q2y2x=p \pm \sqrt{q^2-y^2} という曲線であり,dxdy=±yr2y2\frac{dx}{dy}=\pm \frac{y}{\sqrt{r^2-y^2}}である。

よって D1D_1 の表面積 SSS=qq2π(p+q2y2)1+y2q2y2dy+qq2π(pq2y2)1+y2q2y2dy=2πqq2pq2q2y2dy=4πpqqqdyq2y2=4πpqπ/2π/2qcosθdθqcosθ=4π2pq \begin{aligned} S&=\int_{-q}^{q}2\pi\left(p+\sqrt{q^2-y^2}\right)\sqrt{1+\frac{y^2}{q^2-y^2}}dy\\ &\quad +\int_{-q}^{q}2\pi\left(p-\sqrt{q^2-y^2}\right)\sqrt{1+\frac{y^2}{q^2-y^2}}dy\\ &=2\pi\int_{-q}^{q}2p\sqrt{\frac{q^2}{q^2-y^2}}dy\\ &=4\pi pq\int_{-q}^{q}\frac{dy}{\sqrt{q^2-y^2}}\\ &=4\pi pq \int_{-\pi/2}^{\pi/2} \frac{q\cos \theta d\theta}{q \cos \theta}\\ &=4\pi^2pq \end{aligned} である。ただし途中でy=qsinθy=q\sin\thetaとして置換積分した。

また体積VVV=qqπ(p+q2y2)2dyqqπ(pq2y2)2dy=πqq4pq2y2dy=4πp12πq2=2π2pq2 \begin{aligned} V&=\int_{-q}^q \pi \left(p+\sqrt{q^2-y^2}\right)^2dy\\ &\quad-\int_{-q}^q \pi \left(p-\sqrt{q^2-y^2}\right)^2dy\\ &=\pi \int_{-q}^q 4p\sqrt{q^2-y^2}dy\\ &=4\pi p \cdot \frac{1}{2}\pi q^2\\ &=2\pi^2 pq^2 \end{aligned} である。ただし途中で qqq2y2dy\int_{-q}^q \sqrt{q^2-y^2}dy が半径 qq の半円の面積であることを使った。

またバウムクーヘン積分パップスギュルダンの定理を使っても計算できます。

(2)

qq \to \inftypp \to \infty の順に極限をとったときに D1D2D3D_1 \cup D_2 \cup D_3 の体積 V(p,q)V(p,q) がどのように振る舞うかを考える問題です。そこでpp を固定してqq \to \infty としたときに各 D1,D2,D3D_1, D_2, D_3 がどのような立体になるか考えてみます。

図4

D1D_1 は図のような図形を回転させたリンゴ形の立体になり,ほとんど半径 qq の球のようになってしまうことがわかります。D2,D3D_2,D_3 も同様のリンゴ形になります。

さて,求めたいのは D1D2D3D_1 \cup D_2 \cup D_3 の体積 V(p,q)V(p,q) ですが,3つのリンゴ形の和集合の体積を求めるのはなかなか難しそうです。しかしこの問題で問われているのは V(p,q)V(p,q) の式そのものではなく極限での振る舞いですから,はさみうちの原理を使ってリンゴ形の体積を評価すれば十分です。

第6問(2)

q>pq>p のとき,原点中心で半径が qp,q+pq-p,q+p の球をそれぞれ B(qp),B(q+p)B(q-p),B(q+p) とおくと,上の図より B(qp)D1B(q+p)B(q-p) \subset D_1 \subset B(q+p)が成り立つ。同様に B(qp)D2B(q+p)B(q-p) \subset D_2 \subset B(q+p) B(qp)D3B(q+p)B(q-p) \subset D_3 \subset B(q+p)も成り立つから,これらより B(qp)D1D2D3B(q+p)B(q-p) \subset D_1 \cup D_2 \cup D_3 \subset B(q+p)となるから,体積を考えると 43π(qp)3V(p,q)43π(q+p)3\frac{4}{3}\pi(q-p)^3 \leq V(p,q) \leq \frac{4}{3}\pi(q+p)^3が成り立つ。(下につづく。)

よって pp を固定して qq \to \infty としたときに V(q,p)V(q,p)q3q^3 のオーダーで増加することになります。これを踏まえるとlimp(limqV(p,q)paqb) \lim_{p \to \infty} \left( \lim_{q \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^a q^b} \right) が0でない実数値に収束するためには b=3b=3 が必要です。

第6問(2) 続き

上の不等式よりlimqV(p,q)paqb\lim_{q \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^a q^b} 00 でない値に収束するためには b=3b=3 が必要で,そのときはさみうちの原理より limqV(p,q)paq3=4π3pa\lim_{q \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^a q^3} =\frac{4\pi}{3p^a}である。さらにこれが limp\lim_{p \to \infty}00 でない値に収束するためには a=0a=0 が必要である。以上より a=0,b=3a=0,b=3 で求める極限値はlimp(limqV(p,q)p0q3)=43π \lim_{p \to \infty} \left( \lim_{q \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^0 q^3} \right) = \frac{4}{3}\pi である。

(3)

(2) と極限をとる順番が逆になっているので,qq を固定して pp \to \infty としたときに D1D_1 がどのような図形になるか考えてみます。これはつまり

「ドーナツの太さををのままに大きくしていく」

ということなので,D1D_1 は「非常に細いひもでできた円周」のようになることがわかります。これがわかれば,D1D2D3D_1 \cup D_2 \cup D_3 の体積の計算について,次のようなアイデアが思い浮かびます。

考察

qq を固定して pp \to \infty としたとき,D1D2D3D_1 \cup D_2 \cup D_3 の体積において D1D2D_1\cap D_2 などの「ドーナツどうしの交わり」の部分の寄与は非常に小さい。

この「ドーナツどうしの交わり」の部分の寄与が実際にどれくらいの大きさなのかを不等式で評価してやれば,D1D2D3D_1 \cup D_2 \cup D_3 の体積は

(ドーナツ3個分の体積)++ (「ドーナツどうしの交わり」による誤差)のように計算できることになります。

第6問(3)

qq を固定して pp を大きくしたとき,D1D_1D2D_2 の交わり D1D2D_1\cap D_2 は2つの部分に分かれるが,どちらも「半径 qq の円柱2つが直角に交わるときにできる図形」に近づいていく。その体積は1辺 2q2q の立方体の体積以下だから,8q38q^3 以下である。よってD1D2D_1 \cap D_2 の体積は ppが十分大きいとき定数CCにより Cq3Cq^3 以下になる。他のドーナツの交わりも同様だから,ppqq に 比べて十分大きいとき(定数CCをとりなおして)V(p,q)6π2pq2Cq3|V(p,q)-6\pi^2pq^2| \leq Cq^3 が成り立つ。(ドーナツ 1個の体積は (1) より 2π2pq22\pi^2pq^2 であることに注意。)

よって6π2pq2Cq3V(p,q)6π2pq2+Cq36\pi^2pq^2-Cq^3 \leq V(p,q) \leq 6\pi^2pq^2+Cq^3だから, limpV(p,q)pcqd\lim_{p \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^c q^d}00 でない値に収束するためには c=1c=1 が必要で,そのとき不等式より limpV(p,q)p1qd=6π2q2d\lim_{p \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^1 q^d} =6\pi^2q^{2-d}となる。つまり求める c,dc,dc=1,d=2c=1,d=2 で,そのときlimpV(p,q)p1q2=6π2\lim_{p \to \infty} \dfrac{V(p,q)}{p^1 q^2}=6\pi^2 となる。

(4)

D1D2D3=D_1 \cap D_2 \cap D_3 = \emptyset であるための必要十分条件を問う問題です。直感的には pp を大きく,qq を小さくすれば良さそうですが,厳密に必要十分条件を求めるには図形的考察と数式を使った考察の両方を駆使することになります。

第6問(4)

まずDiD_iたちは D1 ⁣:(x2+z2p)2+y2q2D_1 \colon \left(\sqrt{x^2+z^2}-p\right)^2+y^2\leq q^2 D2 ⁣:(y2+x2p)2+z2q2D_2 \colon \left(\sqrt{y^2+x^2}-p\right)^2+z^2\leq q^2 D3 ⁣:(z2+y2p)2+z2q2D_3 \colon \left(\sqrt{z^2+y^2}-p\right)^2+z^2\leq q^2と表せる。よってD1D2D3D_1 \cap D_2 \cap D_3は連立不等式 (x2+z2p)2+y2q2(y2+x2p)2+z2q2(z2+y2p)2+x2q2 \begin{aligned} \left(\sqrt{x^2+z^2}-p\right)^2+y^2 &\leq q^2\\ \left(\sqrt{y^2+x^2}-p\right)^2+z^2 &\leq q^2\\ \left(\sqrt{z^2+y^2}-p\right)^2+x^2 &\leq q^2 \end{aligned} で表される領域である。

p>3qp>\sqrt{3}q が必要十分であることを示す。

  • 必要性

D1D2D3=D_1 \cap D_2 \cap D_3 = \emptyset ならば D1D2D3D_1 \cap D_2 \cap D_3 と直線 x=y=zx=y=z の交わりも \emptyset である。よって連立不等式に x=y=zx=y=z を代入した(x2+x2p)2+x2q2\left(\sqrt{x^2+x^2}-p\right)^2+x^2\leq q^2が実数解を持たないことが必要。変形すると3x222px+p2q203x^2-2\sqrt{2}p|x|+p^2-q^2\leq 03(x23p)2+13p2q203\left(|x|-\frac{\sqrt{2}}{3}p\right)^2+\frac{1}{3}p^2-q^2 \leq 0となる。23p>0\frac{\sqrt{2}}{3}p>0 に注意すると,これが実数解を持たないための条件は13p2q2>0\frac{1}{3}p^2-q^2>0つまり p>3qp>\sqrt{3}q となる。よって p>3qp>\sqrt{3}q が必要である。

  • 十分性

p>3qp>\sqrt{3}q のとき D1D2D3=D_1 \cap D_2 \cap D_3 = \emptyset であることを示す。D1D2D3D_1 \cap D_2 \cap D_3 が空集合かどうかは図形を拡大縮小しても変わらない,つまり ppqq の比 p/qp/q のみによって決まるから,p=1p=1 としてよい。

背理法で示す。p=1>3qp=1>\sqrt{3}q つまり p=1,q<13p=1,q<\frac{1}{\sqrt{3}} のときに連立不等式(x2+z21)2+y2q2(y2+x21)2+z2q2(z2+y21)2+z2q2 \begin{aligned} \left(\sqrt{x^2+z^2}-1\right)^2+y^2 &\leq q^2\\ \left(\sqrt{y^2+x^2}-1\right)^2+z^2 &\leq q^2\\ \left(\sqrt{z^2+y^2}-1\right)^2+z^2 &\leq q^2 \end{aligned} が実数解(x,y,z)(x,y,z)を持ったと仮定する。これらを全て足して展開すると3(x2+y2+z2)2(x2+z2+y2+x2+z2+y2)+33q23(x^2+y^2+z^2)-2\left(\sqrt{x^2+z^2}+\sqrt{y^2+x^2}+\sqrt{z^2+y^2}\right)+3\leq 3q^2となる。q<13q<\frac{1}{\sqrt{3}}と合わせると3(x2+y2+z2)2(x2+z2+y2+x2+z2+y2)+3<13(x^2+y^2+z^2)-2\left(\sqrt{x^2+z^2}+\sqrt{y^2+x^2}+\sqrt{z^2+y^2}\right)+3<1が成り立つ。ここで A=x2+z2,B=y2+x2,C=z2+y2A=\sqrt{x^2+z^2},B=\sqrt{y^2+x^2},C=\sqrt{z^2+y^2} とおくと2x2+2y2+2z2=A2+B2+C22x^2+2y^2+2z^2=A^2+B^2+C^2だから不等式は32(A2+B2+C2)2(A+B+C)+2<0\frac{3}{2}(A^2+B^2+C^2)-2(A+B+C)+2<0と書ける。ここでコーシーシュワルツの不等式より(A+B+C)23(A2+B2+C2)(A+B+C)^2 \leq 3(A^2+B^2+C^2)だから,この2つの不等式を合わせると12(A+B+C)22(A+B+C)+2<0\frac{1}{2}(A+B+C)^2-2(A+B+C)+2<0が成り立つ。しかし左辺は12(A+B+C2)20\frac{1}{2}(A+B+C-2)^2 \geq 0だから矛盾する。よって背理法により p>3qp >\sqrt{3}q のとき D1D2D3=D_1 \cap D_2 \cap D_3 = \emptyset である。