1/(1-x) のテイラー展開と近似式

11x=1+x+x2+\dfrac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots

(1<x<1)(-1 < x < 1)

単純に初項 11,公比 xx の無限等比級数(→無限等比級数の収束,発散の条件と証明など)と考えることもできますが,他の見方もあります。

有名な近似式

xx00 に近いとき,冒頭の式で xx の二次以上の項を無視することで,

11x1+x\dfrac{1}{1-x}\fallingdotseq 1+x

を得ます。これは物理でもときどき使う近似式です。

11+x1x\dfrac{1}{1+x}\fallingdotseq 1-x

と書くこともできます。

より一般に,b0b\neq 0 のとき,

abcx=ab11(cbx)ab(1+cbx)\dfrac{a}{b-cx}=\dfrac{a}{b}\cdot\dfrac{1}{1-(\frac{c}{b}x)}\\ \fallingdotseq\dfrac{a}{b}\left(1+\dfrac{c}{b}x\right)

という xx00 に近いときに使える一次近似式が成立します。

テイラー展開から導出

実は,冒頭の式は 11x\dfrac{1}{1-x}x=0x=0 におけるテイラー展開(マクローリン展開)とみなせます。これを確認してみましょう。

前提知識:マクローリン展開

証明

11x\dfrac{1}{1-x} のテイラー展開です。

f(x)=11x=(1x)1f(x)=\dfrac{1}{1-x}=(1-x)^{-1} とおくと,

f(x)=(1)(1x)2(1)=(1x)2f'(x)=(-1)(1-x)^{-2}\cdot(-1)=(1-x)^{-2}

二階微分は,

f(x)=(2)(1x)3(1)=2(1x)3f''(x)=(-2)(1-x)^{-3}\cdot(-1)\\ =2(1-x)^{-3}

以下同様にして,

f(n)(x)=n!(1x)n1f^{(n)}(x)=n!(1-x)^{-n-1}

であることが分かる。

よって,全ての非負整数 nn に対して

f(n)(0)=n!f^{(n)}(0)=n!

である。

したがって,テイラー展開の式

f(x)=f(0)+f(0)1!x+f(0)2!x2+f(x)=f(0)+\dfrac{f'(0)}{1!}x+\dfrac{f''(0)}{2!}x^2+\cdots

より,

11x=1+x+x2+\dfrac{1}{1-x}=1+x+x^2+\cdots

となる。

グラフ

1/1-xのテイラー展開と近似

せっかくなのでグラフの概形を書いてみました。

青:y=11xy=\dfrac{1}{1-x} (反比例のグラフを平行移動させたもの)

黒:y=1+xy=1+x

たしかに xx00 に近いとき,青と黒は近いです。

赤:y=1+x+x2+x3y=1+x+x^2+x^3

(三次の項まで残して四次以上を無視したもの)

は黒よりもさらに y=11xy=\dfrac{1}{1-x} に近いです。

分母が二次式になると,高階導関数を計算するのが一気に大変になります。