log xのn階微分とテイラー展開

対数関数のテイラー展開

1<x1-1 < x \leq 1 のとき,

log(1+x)=xx22+x33x44+\log (1+x)=x-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^3}{3}-\dfrac{x^4}{4}+\cdots

  • y=logxy=\log xnn 次導関数
  • logx\log xx=1x=1 でのテイラー展開

について解説します。

対数関数の nn 階微分

まずは高校数学の教科書レベルです。テイラー展開の準備として対数関数の nn 階微分を求めます。nn 階微分を求める問題→予想して帰納法という典型的なパターンです。

例題

y=logxy=\log xnn 次導関数 y(n)y^{(n)} を求めよ。

解答

何回も微分してみると,y=1xy'=\dfrac{1}{x}

y(2)=1x2y(3)=2x3y(4)=3!x4\begin{aligned} y^{(2)}&=-\dfrac{1}{x^2}\\ y^{(3)}&=\dfrac{2}{x^3}\\ y^{(4)}&=-\dfrac{3!}{x^4} \end{aligned}

より,一般に y(n)=(1)n1(n1)!xny^{(n)}=(-1)^{n-1}\dfrac{(n-1)!}{x^n} となることが予想できる。

実際,これは以下のように帰納法で証明できる:

  • n=1n=1 のときOK
  • n=kn=k のときOKと仮定すると,

y(k+1)=ddx{(1)k1(k1)!xk}=(1)kk!xk+1\begin{aligned} y^{(k+1)}&=\dfrac{d}{dx}\left\{(-1)^{k-1}\dfrac{(k-1)!}{x^k}\right\}\\ &=(-1)^k\dfrac{k!}{x^{k+1}} \end{aligned}

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT49では,上記のような例題で計算ミスを減らすためのコツを紹介しています。

log (1+x)を考える理由

対数関数 logx\log x を多項式で近似したいという状況を考えます。

sinx,cosx,ex\sin x,\:\cos x,\:e^xx=0x=0 でテイラー展開(マクローリン展開)することができました(→sinとcosのn階微分とマクローリン展開→e^xのマクローリン展開)が,logx\log xx=0x=0 で定義されていないのでマクローリン展開できません。

そこで,logx\log xx=1x=1テイラー展開することを考えます(x=2x=2 など別の値でも展開できますが,きれいな式にはなりません)。

これは(平行移動して考えると),log(1+x)\log (1+x)x=0x=0 で展開(マクローリン展開)するともみなせます。

対数関数のテイラー展開

というわけで,f(x)=log(1+x)f(x)=\log (1+x) をマクローリン展開します。

f(x)f(x)nn 階微分は,logx\log xnn 階微分を 1-1 平行移動したものです:

f(n)(x)=(1)n1(n1)!(x+1)n f^{(n)}(x)=(-1)^{n-1}\dfrac{(n-1)!}{(x+1)^n}

よって,f(n)(0)=(1)n1(n1)!f^{(n)}(0)=(-1)^{n-1}(n-1)!

これをマクローリン展開の式:

f(0)+f(0)x+f(2)(0)2!x2+f(3)(0)3!x3 f(0)+f'(0)x+\dfrac{f^{(2)}(0)}{2!}x^2+\dfrac{f^{(3)}(0)}{3!}x^3 に代入すると, xx22+x33x44+ x-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^3}{3}-\dfrac{x^4}{4}+\cdots となります。

xnx^n の係数 ana_nf(n)(0)n!=(1)n1(n1)!n!=(1)n1n\dfrac{f^{(n)}(0)}{n!}=\dfrac{(-1)^{n-1}(n-1)!}{n!}=\dfrac{(-1)^{n-1}}{n} となる)

等式が成立する範囲

log(1+x)\log(1+x)xx22+x33x44+x-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^3}{3}-\dfrac{x^4}{4}+\cdots と級数展開できることがわかりました。

この級数が収束してもとの関数値と等しいこと: log(1+x)=xx22+x33x44+\log(1+x)=x-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^3}{3}-\dfrac{x^4}{4}+\cdots を証明するには,剰余項を評価する必要があります。→ テイラーの定理とテイラー展開~例と証明

頑張って評価すると,1<x1-1< x \leq 1 では上記の等式が正しいことが分かります。0<x10 < x \leq 1 の場合の評価のみ紹介します。

証明

nn\to\infty で剰余項 Rn=f(n)(c)xnn!(0<c<x)R_n=f^{(n)}(c)\dfrac{x^n}{n!}\:(0 < c < x)00 に収束することを示したい。これは,以下よりわかる。

  • Rn=(1)n1xnn(c+1)nR_n=\dfrac{(-1)^{n-1}x^n}{n(c+1)^n}
  • 0<c<x10<c<x\leq 1 より,xc+1<1\dfrac{x}{c+1}<1

ちなみに,x=1x=1 のときは別の議論により等式の正しさを証明することもできます。→log2に収束する交代級数の証明

収束半径

なお, xx22+x33x44+x-\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^3}{3}-\dfrac{x^4}{4}+\cdots の収束半径 RR11 です(つまり 1<x<1-1 < x < 1 でこの級数が収束することは保証される)。→収束半径の意味と求め方

これはダランベールの判定法から分かります:

1R=limnan+1an=limnnn+1=1 \dfrac{1}{R}= \lim_{n\to\infty}\left|\dfrac{a_{n+1}}{a_n}\right| = \lim_{n\to\infty}\dfrac{n}{n+1}=1

n!n!(n1)!(n-1)! が打ち消し合うのが非常にきれい!