Kiepertの定理とその証明

Kiepert(キエペルト,キーペルト)の定理

キエペルトの定理

三角形 ABC\mathrm{ABC} の外側(または内側)に相似な二等辺三角形 ABF,BCD,CAE\mathrm{ABF},\mathrm{BCD},\mathrm{CAE} をつくる。このとき,AD,BE,CF\mathrm{AD},\mathrm{BE},\mathrm{CF} は1点 X\mathrm{X} で交わる。

垂心,フェルマー点,ナポレオン点などを包含している非常に美しい定理です。

証明

以下,二等辺三角形の底角を θ\theta とし,三角形 ABC\mathrm{ABC} の面積を ABC|\mathrm{ABC}| などと表します。

Kiepertの定理を証明します。チェバの定理の逆を用います。

証明

A=BACA = \angle \mathrm{BAC}B=ABCB = \angle \mathrm{ABC}C=ACBC = \angle \mathrm{ACB} とおく。

AD\mathrm{AD}BC\mathrm{BC} の交点を P\mathrm{P}BE\mathrm{BE}CA\mathrm{CA} の交点を Q\mathrm{Q}CF\mathrm{CF}AB\mathrm{AB} の交点を R\mathrm{R} とおく。 ARRBBPPCCQQA=1\dfrac{\mathrm{AR}}{\mathrm{RB}} \dfrac{\mathrm{BP}}{\mathrm{PC}} \dfrac{\mathrm{CQ}}{\mathrm{QA}}=1 を示す。

ここで, ARRB=ACFBCF=ACsin(A+θ)BCsin(B+θ) \dfrac{\mathrm{AR}}{\mathrm{RB}} =\dfrac{|\mathrm{ACF}|}{|\mathrm{BCF}|} =\dfrac{\mathrm{AC}\sin(A+\theta)}{\mathrm{BC}\sin(B+\theta)} である。同様に, BPPC=ABsin(B+θ)ACsin(C+θ),CQQA=BCsin(C+θ)ABsin(A+θ) \dfrac{\mathrm{BP}}{\mathrm{PC}} =\dfrac{\mathrm{AB}\sin(B+\theta)}{\mathrm{AC}\sin(C+\theta)},\\ \dfrac{\mathrm{CQ}}{\mathrm{QA}} =\dfrac{\mathrm{BC}\sin(C+\theta)}{\mathrm{AB}\sin(A+\theta)} である。

よって,目標の式の左辺を計算すると約分されて 11 になる。

なお,この証明は三角形と円の幾何学という本を参照しています。この本は図形マニアにとてもオススメです。

Kiepert双曲線

以下,三角形 ABC\mathrm{ABC} は二等辺三角形でないとします(例えば AB=AC\mathrm{AB}=\mathrm{AC} だと A=D\mathrm{A}=\mathrm{D} となることがあるのでそのような特殊ケースは除外したい)。

θ\theta を動かすと,三直線の交点 XX も動きます。 θ\theta を動かしたときに X\mathrm{X} が動く軌跡は直角双曲線になることが知られており,これを Kiepert hyperbola (キエペルト/キーペルト双曲線) と言います。

なお,軌跡が直角双曲線になることの証明については,

  • 三線座標を用いた証明がThe Conics of Ludwig Kiepert:(外部PDF)にあります。
  • 直交座標でも証明できると思うのですが,自分にはできませんでした(計算がゴツすぎて挫折しました)。直交座標で証明できた方はぜひ教えて下さい。

いろいろな点を含むこと

特定の θ\theta の値について考えてみます。

θ=0\theta=0^{\circ}:重心

D,E,FD,E,F は各辺の中点になります。

θ90\theta\to 90^{\circ}:垂心

めちゃくちゃ大きい二等辺三角形が三つあるのをイメージしてください。このとき,例えば ADADBCBC は(極限で)直交することが分かります。

θ=±60\theta=\pm 60^{\circ}:フェルマー点

マイナスのときは二等辺三角形を内側に作ると解釈してください。 θ=60\theta=60^{\circ} のとき,フェルマー点と一致します。→三角形のフェルマー点の3通りの証明

θ=±30\theta=\pm 30^{\circ}:ナポレオン点

これも三角形の「中心」の一つとして有名な点です。

θ=A\theta=-A:頂点 AA

Kiepert双曲線は三角形 ABCABC の各頂点を通ることも分かります(AA が鋭角の場合と鈍角の場合で図が変わることに注意)。

久しぶりの図形&数学オリンピックレベルの記事です!