三平方の定理の4通りの美しい証明

ピタゴラスの定理

三平方の定理(ピタゴラスの定理): C=90\angle C=90^{\circ} であるような直角三角形において,a2+b2=c2a^2+b^2=c^2

英語ですが,三平方の定理の証明を105個解説しているすさまじいサイトがあります。→Pythagorean Theorem

105個の中で,個人的に「簡単で美しい」と思った証明を4つ(#3,6,42,47)ほど紹介します。

正方形を用いた証明

直角三角形四つと小さい正方形を組合せて大きい正方形を作る方法です。100個以上ある証明の中でも最も有名だと思います。

証明1

正方形を用いた三平方の定理の証明

図において大きい正方形の面積 SS を二通りで表す。

  • 一辺(a+b)(a+b) の正方形なので S=(a+b)2S=(a+b)^2

  • 一辺 cc の正方形と直角三角形4つの和なので,S=c2+412abS=c^2+4\cdot\dfrac{1}{2}ab

よって,(a+b)2=c2+2ab(a+b)^2=c^2+2ab

整理すると a2+b2=c2a^2+b^2=c^2

となり三平方の定理を得る。

相似を用いた証明

三角形の相似に注目したピタゴラスの定理の証明を二通り紹介します。

証明2

相似を用いた三平方の定理の証明

CC から ABAB に下ろした垂線の足を HH とおく。

  • 三角形 BHCBHCBCABCA は相似なので, BC2=BH×ABBC^2=BH\times AB

  • 三角形 AHCAHCACBACB は相似なので, AC2=AH×ABAC^2=AH\times AB

以上二つの式を辺々加えると,

a2+b2=(AH+BH)c=c2a^2+b^2=(AH+BH)c=c^2

を得る。

証明3

三角形 ABCABCCDECDE が合同になるように,図のように D,ED,E を取る。

四角形 ACBDACBD の面積 SS を二通りの方法で表す。

  • ABABCDCD は直交するので, S=12AB×CD=c22S=\dfrac{1}{2}AB\times CD=\dfrac{c^2}{2}

  • 三角形 BCDBCD の面積は a22\dfrac{a^2}{2},三角形 ACDACD の面積は b22\dfrac{b^2}{2} より S=12(a2+b2)S=\dfrac{1}{2}(a^2+b^2)

以上2つの式より三平方の定理を得る。

内接円を用いた証明

内心,内接円の存在は三平方の定理を用いることなく証明できるので,三平方の定理の証明に使うことができます。個人的にかなり好きな方法です。 内心と傍心の性質の比較の内心の性質1,性質2を使います。

証明4

内接円を用いた三平方の定理の証明

三角形 ABCABC の面積を SS ,内接円の半径を rr とおくと,

S=12ab=12r(a+b+c)S=\dfrac{1}{2}ab=\dfrac{1}{2}r(a+b+c)

である。

また,内接円と BCBC との接点を DD とおくと,r=CD=a+bc2r=CD=\dfrac{a+b-c}{2} である。

以上より,ab=(a+bc2)(a+b+c)ab=(\dfrac{a+b-c}{2})(a+b+c)

これを展開して整理すると a2+b2=c2a^2+b^2=c^2 を得る。

注意

三平方の定理の証明が全部で何通りあるのか?証明の一覧はあるのか?という類の疑問は意味がないと思います。証明が本質的に異なるのか,似ているけど違うものとみなすのかは人によって微妙に異なるからです。

ちなみに上記のサイトでは本質的にほぼ同じ証明を別のものとカウントしていると感じられる部分もありました。

また,ヘロンの公式を使った三平方の定理の証明もありましたが,ヘロンの公式の証明には(少なくとも自分の知っている限りでは)三平方の定理が必要であり,循環論法な気がします。

追記:三平方の定理を用いないヘロンの公式の証明が載っているサイトを読者の方に教えていただきました!→ヘロンの公式

三平方の定理を使わないヘロンの公式の証明方法をご存じの方はご一報ください。

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