Shapiroの不等式

Shapiroの不等式(Shapiro’s inequality)は、Nesbittの不等式を一般化した有名な巡回不等式です。

Shapiro(シャピロ)の不等式

nn を13以下の正の整数とする。

正の実数 x1,x2,,xnx_1,x_2,\dots,x_n に対し xn+1=x1,xn+2=x2x_{n+1}=x_1,\,x_{n+2}=x_2 と定めると,

i=1nxixi+1+xi+2n2\sum_{i=1}^{n}\frac{x_i}{x_{i+1}+x_{i+2}}\ge \frac{n}{2}

が成立する。

n14n\geq 14 の場合は成立するとは限らないおもしろい不等式です。

nが3以下の場合の確認

n=1n=1 のときは両辺ともに 12\dfrac{1}{2} になります。

n=2 のとき

n=2n=2 のとき,x3=x1,x4=x2x_3=x_1,\,x_4=x_2 であり,シャピロの不等式は x1x2+x1+x2x1+x21\frac{x_1}{x_2+x_1}+\frac{x_2}{x_1+x_2}\geq 1 という形になります。この式は等号で成立しますね。

n=3 の場合:Nesbittの不等式

n=3n=3 とすると x1x2+x3+x2x3+x1+x3x1+x232\frac{x_1}{x_2+x_3}+\frac{x_2}{x_3+x_1}+\frac{x_3}{x_1+x_2}\ge \frac{3}{2} となります。

これはNesbittの不等式と呼ばれます。

Nesbittの不等式の詳しい証明(複数通り)は、こちらの記事にまとめています: →Nesbittの不等式の6通りの証明

n=4 の場合

シャピロの不等式は ab+c+bc+d+cd+a+da+b2\frac{a}{b+c}+\frac{b}{c+d}+\frac{c}{d+a}+\frac{d}{a+b}\ge 2 となります。

2通りの方法で証明します。

証明1

シュワルツの不等式の応用公式と例題を知っていれば簡単に思いつける証明です。

証明1

ab+c=a2a(b+c)\frac{a}{b+c}=\frac{a^2}{a(b+c)} bc+d=b2b(c+d)\frac{b}{c+d}=\frac{b^2}{b(c+d)} cd+a=c2c(d+a)\frac{c}{d+a}=\frac{c^2}{c(d+a)} da+b=d2d(a+b)\frac{d}{a+b}=\frac{d^2}{d(a+b)} より,シュワルツの不等式を使うと, ab+c+bc+d+cd+a+da+b(a+b+c+d)2a(b+c)+b(c+d)+c(d+a)+d(a+b)\frac{a}{b+c}+\frac{b}{c+d}+\frac{c}{d+a}+\frac{d}{a+b} \ge\\ \frac{(a+b+c+d)^2}{a(b+c)+b(c+d)+c(d+a)+d(a+b)} となる。右辺の分母を整理すると a(b+c)+b(c+d)+c(d+a)+d(a+b)=ab+bc+cd+da+2(ac+bd)a(b+c)+b(c+d)+c(d+a)+d(a+b)\\ =ab+bc+cd+da+2(ac+bd) したがって,以下を示せば十分: (a+b+c+d)2ab+bc+cd+da+2(ac+bd)2\frac{(a+b+c+d)^2}{ab+bc+cd+da+2(ac+bd)}\ge 2 すなわち (a+b+c+d)22{ab+bc+cd+da+2(ac+bd)}(a+b+c+d)^2 \ge 2\{ab+bc+cd+da+2(ac+bd)\} を示せば良い。左辺−右辺を計算すると (a+b+c+d)22{ab+bc+cd+da+2(ac+bd)}=(ac)2+(bd)20(a+b+c+d)^2-2\{ab+bc+cd+da+2(ac+bd)\}\\ =(a-c)^2+(b-d)^2\ge 0

よって不等式が成立する。等号は a=ca=c かつ b=db=d のとき。

証明2

これはなかなか思いつきにくい変形です。巡回不等式であることをうまく使います。

証明

巡回対称性があるため、変数をズラしても値は変わらない。よって,ac,dba\geq c,d\geq b を仮定できる。

(厳密な説明:a,b,c,da,b,c,d を正方形の頂点に順に配置する。 各対角線について、小さい方から大きい方へ矢印を引く。すると必ず、両端が矢印の始点になっている辺が1本存在する。 変数をズラして,その辺が dada になるようにする)

この条件のもとで次が成立する: ab+c+cd+aad+c+cb+a. \frac{a}{b+c}+\frac{c}{d+a} \geq \frac{a}{d+c}+\frac{c}{b+a}. (上の不等式の証明:上の式を変形すると a(1b+c1d+c)c(1b+a1d+a)a \left( \frac{1}{b+c}-\frac{1}{d+c} \right) \geq c \left( \frac{1}{b+a}-\frac{1}{d+a} \right) 両辺を通分し、分母の積を掛けると a(b+a)(d+a)c(b+c)(d+c) a(b+a)(d+a) \geq c(b+c)(d+c) であり aca\geq c なので成立)

さて,先ほどの不等式を用いると ab+c+bc+d+cd+a+da+b \frac{a}{b+c} + \frac{b}{c+d} + \frac{c}{d+a} + \frac{d}{a+b} は以下より大きい: ad+c+bc+d+cb+a+da+b=a+bc+d+c+da+b2 \frac{a}{d+c} + \frac{b}{c+d} + \frac{c}{b+a} + \frac{d}{a+b}\\ =\dfrac{a+b}{c+d}+\dfrac{c+d}{a+b}\geq 2 (最後の不等号は相加相乗平均の不等式より)

n=14n=14 の場合は反例があるそうです。