x が正の実数の場合について,ガンマ関数の積分での定義から無限積表示を導出します。
計算
Γ(x)=n→∞lim∫0ntx−1e−tdt=n→∞lim∫0ntx−1(1−nt)ndt
(→2つめの等号については後ほど補足)
In=∫0ntx−1(1−nt)ndt
とおく。
nt=u と置換すると,
In=nx∫01ux−1(1−u)ndu=nxB(x,n+1)
B はベータ関数 である。
ベータ関数の性質から
In=nxΓ(x+n+1)Γ(x)Γ(n+1)=(x+n)⋯(x+1)xΓ(x)nxn!Γ(x)=x(x+1)⋯(x+n)nxn!
となる。
2つめの等号について
表記簡略化のために fn(t)=(1−nt)n とおきます。
目標は,任意の ε>0 に対してある整数 N が存在して n>N なら ∣∣Γ(x)−∫0nfn(t)tx−1dx∣∣<ε
を示すことです。イプシロンエヌ論法で証明します。
正数 ε を任意に取りましょう。
ステップ1
まず,ガンマ関数の収束性から,ある整数 N′ が存在して n>N′ なら
∫n∞e−ttx−1dt<21ε
とできます。
ステップ2
n′ を N′ より大きい整数の中で1つ固定します。このとき,n>n’ ならば
0≦Γ(x)−∫0nfn(t)tx−1dx<Γ(x)−∫0n′fn(t)tx−1dt=∫0n′(e−t−fn(t))tx−1dt+∫n′∞e−ttx−1dt<∫0n′(e−t−fn(t))tx−1dt+21ε
ここで,[0,n′] 上で fn は e−t に一様収束します。
→ 各点収束と一様収束の違いと具体例の例題4
よって N を十分大きくすると,n>N で e−t−fn(t)<2n′xxε とできます。このとき上の不等式の1項目は 21ε 未満となります。
以上より n>N であれば,
∣∣Γ(x)−∫0nfn(t)tx−1dx∣∣<ε
となります。
こうして ∫0nfn(t)tx−1dt→Γ(x) であり,等式が示されました。
無限積による極限は x が負でも収束します。もっというと負の整数ではない任意の複素数に対して収束します。
解析接続の理論を用いると,ガンマ関数は無限積の形で複素数全体に拡張されたということになります。