非常に簡単な例
自明な多様体
Rn はもちろん多様体です。アトラスとして {(Rn,idRn,Rn)} を取ればよいです。
n×n 行列全体の集合を Mn(R) と書きます。Mn(R) は R2n と見なせるため多様体になります。
離散集合
離散集合は,離散位相を入れることで 0 次元多様体と見なせます。
X={x1,⋯,xn} とし,1点 {xi}i=1,⋯,n を開基としましょう。
このとき,Ui={xi} に対して Vi=R0=1 点集合 とし ϕi を自明な写像とすると多様体の構造が入ります。
n 次元球面
n 次元球面
Sn={(x1,⋯,xn+1)∈Rn+1∣x12+⋯+xn+12=1}
これは(Rn+1 の部分位相空間として)C∞ 級多様体になります。
証明
ハウスドルフ性
ハウスドルフ空間の部分空間はハウスドルフであるため,Sn はハウスドルフである。→ ハウスドルフ空間
チャートの設定
1≦i≦n+1 に対して
Ui,+={(x1,⋯,xn+1)∈Sn∣xi>0}Ui,−={(x1,⋯,xn+1)∈Sn∣xi<0}
と定める。
Vi,±={(y1,⋯,yn)∣y12+⋯+yn2<1}
と定める。
このとき Sn=i=1⋃n+1Ui,+∪i=1⋃n+1Ui,− となる。
ϕi,±:Ui,±→Vi,± を
ϕi,±(x1,⋯,xn+1)=(x1,⋯,xi−1,xi+1,⋯,xn+1)
と定める。(i 番目の座標だけを取り除く)
これは微分同相写像である。実際,
ψi,±(y1,⋯,yn)=(y1,⋯,yi−1,±1−y12−⋯−yn2,yi,⋯,yn)
と逆写像が得られる。
これらを踏まえると,ϕi,±∘ϕj,±−1 の成分に現れる関数は
- yi
- 1−(y12+⋯+yn2)
であるため,ϕi,±∘ϕj,±−1 は C∞ 級関数である。
以上より Sn は C∞ 級多様体である。
射影空間
定義
Rn+1\{O} に次のように同値関係 ∼ を定める。
x=(x0,⋯,xn),y=(y0,⋯,yn) に対して
すべての i に対して xi=cyi (c=0)⟺x∼y
この同値関係による商
Rn+1\{O}/∼
を射影空間 Pnと定義する。
Pn は C∞ 級多様体である。
証明のスケッチ
ハウスドルフ性
射影空間のハウスドルフ性・コンパクト性~商位相空間 を参照
チャートの設定
Ui={[x0:⋯:xn]∣xi=0}
と定義する。Ui は Pn の開集合となり,{Ui} は Pn を被覆する。
さらに ϕi:Ui→Rn を
ϕi([x0:⋯:xn])=(xix0,⋯,xixi−1,xixi+1,⋯,xixn)
と定める。
ϕi は同相写像である。実際,逆写像として
ψi(y1,⋯,yn)=[y1:⋯:yi:1:yi+1:⋯:yn]
が得られる。
ϕi(Ui∩Uj)
座標変換
ϕj∘ϕi−1:ϕi(Ui∩Uj)→ϕj(Ui∩Uj) を計算すればよい。
ϕi(Ui∩Uj)={(y1,⋯,yn)∣yj=0}
となる。
ϕj∘ϕi−1 の成分に現れる関数は yjym (m=k),yk1 が,ϕi(Ui∩Uj) 上でこれらは C∞ 級である。
こうして多様体の構造が入る。