ヘルマート変換の意味・アフィン変換との関係

定義(ヘルマート変換)

X=axby+cY=bx+ay+d\begin{aligned}X&=ax-by+c\\ Y&=bx+ay+d\end{aligned}

という式で (x,y)(x,y)(X,Y)(X,Y) にうつすような変換をヘルマート変換と言う。

ヘルマート変換は,測量などに用いられる変換です。

意味

ヘルマート変換の意味1 ヘルマート変換は,図形の形を保つ変換です。図形の大きさ・向き・位置は変わるかもしれませんが,形は変わりません。相似変換とも言います。

形が変わらないことは,以下の定理からわかります。

定理

ヘルマート変換は「平行移動」「回転」「拡大・縮小」という3種類の変換の合成で表される。

ヘルマート変換の意味2 ただし,a=b=0a=b=0 の場合は除いて考えます。

証明

ヘルマート変換を行列で表すと (XY)=(abba)(xy)+(cd)\begin{pmatrix}X\\Y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a&-b\\b&a\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}c\\d\end{pmatrix} である,r=a2+b20r=\sqrt{a^2+b^2}\neq 0 とおく。ある θ\theta が存在して (abba)=r(arbrbrar)=r(cosθsinθsinθcosθ)\begin{pmatrix}a&-b\\b&a\end{pmatrix}=r\begin{pmatrix}\frac{a}{r}&-\frac{b}{r}\\\frac{b}{r}&\frac{a}{r}\end{pmatrix}=r\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix} となる。つまり,ヘルマート変換は「θ\theta 回転」と「rr 倍の拡大」と「(c,d)(c,d) の平行移動」という3つの変換の合成で表される。

アフィン変換・線形変換との関係

  • 中学数学で習う比例の多変数バージョンが線形変換(1次変換)です。2変数の場合, X=ax+byY=cx+dy\begin{aligned}X&=ax+by\\ Y&=cx+dy\end{aligned} と書けます。
    →一次変換の意味と重要な5つの例(折り返し・回転・対称移動)

  • 平行移動も考えると1次関数になりますが,その多変数バージョンがアフィン変換です。2変数の場合, X=ax+by+cY=dx+ey+f\begin{aligned}X&=ax+by+c\\ Y&=dx+ey+f\end{aligned} と書けます。

  • 上記のアフィン変換の式で,特に a=ea=eb=db=-d を満たすものがヘルマート変換です。 他の変換との関係

各変換の構成要素

  • ヘルマート変換は「平行移動」「回転」「拡大・縮小」の3つの合成で表されます。

  • アフィン変換は「平行移動」「回転」「拡大・縮小」に加えて「せん断(スキュー)」という4つの基本的な変換の合成で表されます。「せん断」は図のように正方形(点線)を平行四辺形(実線)に歪めるような変換です。 せん断

  • 線形変換は「回転」「拡大・縮小」「せん断」の3つの合成で表されます。平行移動は許容しません。

なお,アフィン変換線形変換は2次元だけでなく一般の nn 次元でも考えることができますが,3次元以上の場合のヘルマート変換は考えないと思います(少なくとも私は見たことがありません)。

ヘルマート変換と言うとかっこいいですが,ただの相似変換です。ただし,行列 AA に対して P1APP^{-1}AP という変換を相似変換と言うこともあるのでややこしいです。