ディオファントス近似にまつわる入試問題

この記事ではディオファントス近似にまつわる入試問題をまとめました。

是非チャレンジしてみてください。

ディオファントス近似とは?

実数 rr に対して, rpq<1q2\left|r-\dfrac{p}{q}\right|<\dfrac{1}{q^2} を満たす整数 p,qp,q を探すという問題を ディオファントス近似 といいます。

ここでは簡単に知っておくと見通しがよくなる概念を紹介します。

詳しくは 実数を分数で近似する【ディリクレのディオファントス近似定理】 をご覧ください。

良い近似の個数

上の条件式を満たす既約分数を 良い近似 ということにします。良い近似については次の事実が知られています。

定理

rr が有理数であれば良い近似は有限個,rr が無理数であれば良い近似は無限個ある。

無理数度

定義と定理

rpq<1qA を満たす既約分数 pq が無限にある \left|r-\dfrac{p}{q}\right|<\dfrac{1}{q^A} \ \text{を満たす既約分数} \ \dfrac{p}{q} \ \text{が無限にある} という条件を満たす AA の最大値を実数 rr の無理数度という。

このとき次が成り立つ。

  • 有理数の無理数度は 11 である。
  • 代数的な無理数(nn 次方程式の解になる無理数)の無理数度は 22 である。

九州大学2022後期

問題

正の整数 1,2,3,1,2,3,\cdots を自然数と呼ぶ.以下の問いに答えよ.

  1. 次の不等式を満たす自然数 x,yx , y の組 (x,y)(x,y) をすべて求めよ。 0<12xy<1y2 0< \left| \dfrac{1}{2} − \dfrac{x}{y} \right| < \dfrac{1}{y^2}

  2. 次の不等式を満たす自然数 x,yx , y の組 (x,y)(x,y) をすべて求めよ.

12x2y2<2y3 \left| \dfrac{1}{2} − \dfrac{x^2}{y^2} \right| < \dfrac{2}{y^3}

ディオファントス近似型の入試問題のコツは 分母を払い,扱いやすい不等式にすること です。

1の解答

与式の両辺を 2y22y^2 倍すると

0<y22xy<2 0 < |y^2 - 2xy| < 2

となる。x,yx,y は自然数であるため y(y2x)y(y-2x) も整数である。

不等式から y(y2x)=1|y(y-2x)| = 1 である。特に yy は正であるため yy2x=1y|y-2x| = 1 である。

yyy2x|y-2x| はどちらも正の整数であるため,y=1y = 1 である。よって 12x=±11-2x= \pm 1x=1x=1 を得る。

こうして (x,y)=(1,1)(x,y) = (1,1) となる。

ちなみに1は「有理数の無理数度が1である」ことを意味している問題です。

2も同様にやってみましょう。

2の解答

与式の両辺を 2y22y^2 倍すると

y32x2y<4 |y^3 - 2x^2y| < 4

となる。x,yx,y は自然数であるため yy22x2=0,1,2,3y |y^2-2x^2| = 0,1,2,3 である。

  1. yy22x2=0y|y^2 - 2x^2| = 0 のとき

yy は自然数であるため y22x2=0y^2 - 2x^2 = 0 である。このとき yx=2\dfrac{y}{x} = \sqrt{2} となるが,2\sqrt{2} の無理数性から不適である。

  1. yy22x2=1y|y^2 - 2x^2| = 1 のとき

yyy22x2|y^2 - 2x^2| は正の整数であるため,y=1y = 1 である。

よって 12x2=1|1-2x^2|=1 である。これは 2x2=0,22x^2 = 0,2 である。xx は自然数であるため x=1x = 1 である。こうして (x,y)=(1,1)(x,y) = (1,1) を得る。

  1. yy22x2=2y|y^2 - 2x^2| = 2 のとき

y=1,2y = 1,2 である。

y=1y=1 のとき 12x2=2|1-2x^2|=2 である。

絶対値を外すと,12x2=±21-2x^2 = \pm 2x2=32,12x^2 = \dfrac{3}{2} , - \dfrac{1}{2} となる。どちらも場合も xx が自然数となることはない。

y=2y=2 のとき 42x2=1|4-2x^2|=1 である。

左辺は 22x22|2-x^2| となりこれは 22 の倍数である。一方右辺は 11 であり,これらは矛盾する。

  1. yy22x2=3y|y^2 - 2x^2| = 3 のとき

y=1,3y = 1,3 である。

y=1y=1 のとき 12x2=3|1-2x^2|=3 である。

絶対値を外すと,12x2=±31-2x^2 = \pm 3x2=2,1x^2 = 2,-1 となる。どちらも場合も xx が自然数となることはない。

y=3y=3 のとき 92x2=1|9-2x^2| = 1 である。

絶対値を外すと,92x2=±19-2x^2 = \pm 1x2=4,5x^2 = 4,-5 となる。x2=4x^2=4 のとき,自然数解 x=2x=2 を得る。こうして (x,y)=(2,3)(x,y) = (2,3) を得る。

  \;

以上より (x,y)=(1,1),(2,3)(x,y) = (1,1),(2,3) が解となる。

大阪大学2017

問題

a,ba, b を自然数とし,不等式 ab7<2b4(A) \left| \dfrac{a}{b} - \sqrt{7} \right| < \dfrac{2}{b^4} \quad (A) を考える。次の問いに答えよ。ただし,2.645<7<2.6462.645 < \sqrt{7} < 2.646 であること,7\sqrt{7} が無理数であることを用いてよい。

  1. 不等式 (A)(A) を満たし,b2b \geqq 2 である自然数 a,ba, b に対して ab+7<6 \left| \dfrac{a}{b} + \sqrt{7} \right| < 6 であることを示せ。

  2. 不等式 (A)(A) を満たす自然数 a,ba, b の組のうち b2b \geqq 2 であるものをすべて求めよ。

7\sqrt{7}x27=0x^2 - 7 =0 の解なので,前述の定理から 無理数度は2 です。

そのため (A)(A) の不等式を満たす解は高々有限個しかないことが分かります。

1の解答

ab+7=ab7+27ab7+27<2b4+27<224+2×2.646=5.312<6\begin{aligned} \left| \dfrac{a}{b} + \sqrt{7} \right| &= \left| \dfrac{a}{b} - \sqrt{7} + 2\sqrt{7} \right|\\ &\leqq \left| \dfrac{a}{b} - \sqrt{7} \right| + 2\sqrt{7}\\ &< \dfrac{2}{b^4} + 2\sqrt{7}\\ &< \dfrac{2}{2^4} + 2 \times 2.646\\ &= 5.312\\ &< 6 \end{aligned}

7\sqrt{7} では整数方程式の形を作ることができません。

どうしようかと思うわけですが,1 で ab+7\left| \dfrac{a}{b} + \sqrt{7} \right| について議論したことを思い出すと, (ab+7)(ab7)=a2b27 \left( \dfrac{a}{b} + \sqrt{7} \right) \left( \dfrac{a}{b} - \sqrt{7} \right) = \dfrac{a^2}{b^2} - 7 により無理数をなくしてしまうことに気付けるかもしれません。

2の解答

(1) より a2b27=ab+7×ab7<12b4 \left| \dfrac{a^2}{b^2} - 7 \right| = \left| \dfrac{a}{b} + \sqrt{7} \right| \times \left| \dfrac{a}{b} - \sqrt{7} \right| < \dfrac{12}{b^4} である。

両辺に b4b^4 を掛けると b2a27b2<12 b^2 |a^2 - 7 b^2| < 12 となる。

32<12<423^2 < 12 < 4^2b>2b > 2 より b=2,3b = 2,3 である。

  • b=2b = 2 のとき

不等式は a228<3 |a^2 - 28| < 3 となる。これを解くと 25<a2<3125 < a^2 < 31 である。これを満たす整数 aa は存在しない。

  • b=3b=3 のとき

不等式は a263<43 |a^2 - 63| < \dfrac{4}{3} となる。a63a^-63 は整数であるため a263=0,1|a^2 - 63| = 0,1 である。

絶対値を外すと a2=62,63,64a^2 = 62,63,64 となる。このうち aa が自然数となるのは a=8a = 8 のときである。

  \;

以上より (a,b)=(8,3)(a,b) = (8,3) を得る。

大阪大学2016挑戦枠

問題

条件式 a1=a2=1a_1 = a_2 = 1an+2=an+1+an (n=1,2,3,)a_{n+2} = a_{n+1} + a_n \ (n = 1,2,3, \cdots) により数列 {an}\{ a_n \} を定め,x=1+52x = \dfrac{1+\sqrt{5}}{2} とする。不等式 xan+1an<1an2(n=1,2,3,) \left| x - \dfrac{a_{n+1}}{a_n} \right| < \dfrac{1}{{a_n}^2} \quad (n = 1,2,3, \cdots) を示せ。

フィボナッチ数列 に関する問題です。

limnan+1an=1+52\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{a_{n+1}}{a_n} = \dfrac{1+\sqrt{5}}{2} という事実があります。今回の問題は an+1an\dfrac{a_{n+1}}{a_n}1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} の良い近似になっていることを証明する問題です。

1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} は2次方程式 x2x1=0x^2 - x - 1= 0 の解なので,前述の定理から良い近似は無限個あることがわかるのですが,本問を証明することでも良い近似が無限個あることがわかります。

解答

an+1xan<1an |a_{n+1} - x a_n| < \dfrac{1}{a_n} を示せばよい。

x2x1=0x^2 - x - 1 = 0 の解は 1±52\dfrac{1\pm \sqrt{5}}{2} である。y=152y = \dfrac{1 - \sqrt{5}}{2} とおく。

このとき漸化式から {an+2xan+1=y(an+1xan)an+2yan+1=x(an+1yan) \begin{cases} a_{n+2} - x a_{n+1} = y (a_{n+1} - x a_n)\\ a_{n+2} - y a_{n+1} = x (a_{n+1} - y a_n) \end{cases} を得る。

これより {an+1xan=ynan+1yan=xn \begin{cases} a_{n+1} - x a_n = y^n\\ a_{n+1} - y a_n = x^n \end{cases}

これを解くことで an=xnyn5a_n = \dfrac{x^n - y^n}{\sqrt{5}} を得る。

また an+1xan=yn |a_{n+1} - xa_n| = |y|^{n} を得る。

yn<1an yn<5xnyn xyny2n<5 1y2n<5\begin{aligned} & |y|^n < \dfrac{1}{a_n}\\ \Longleftrightarrow \ & |y|^n < \dfrac{\sqrt{5}}{x^n - y^n}\\ \Longleftrightarrow \ & |xy|^n - y^{2n} < \sqrt{5}\\ \Longleftrightarrow \ & 1 - y^{2n} < \sqrt{5} \end{aligned} となるが,y=512<1|y| = \dfrac{\sqrt{5}-1}{2} < 1 より最後の不等式は成立し,最初の不等式が従う。

こうして an+1xan<1an |a_{n+1} - xa_n| < \dfrac{1}{a_n} が示された。

最後のフィボナッチ数列の問題を異なる三項間漸化式でやってみるとどうなるでしょう? 是非試してみてください!