第1問
1と2を合わせて n 個並べて,10進数で n 桁の整数を作ることを考える。
例えば n=3 のときは,111・112・121・122・211・212・221・222の8通りが考えられる。
(1) n=4 のとき,何通りの整数がありうるか求めよ。
(2) 偶数は何通りできるか n を用いて表せ。
(3) 3の倍数は何通りできるか n を用いて表せ。
(4) n≧2 のとき,最小の素因数が7以上である整数は何通りできるか n を用いて表せ。
ただし整数 N の素因数とは,N を割り切る素数のことを意味する。
第1問は組み合わせの問題です。
第1問(1)
各桁に1か2がくることを考えると,24=16 通りである。
問題文の n=3 の例を見れば,簡単に予測できますね。次の問題も,n=3 の例を見ると自然に見えてきます。
第1問(2)
偶数であるのは1の位の数が2のときである。そのため,1の位を除く部分 n−1 個は自由に取ることができる。したがって 2n−1 通りである。
ここまでは簡単な計算で求めることができました。次の問題は漸化式を用いることで簡単に処理できます。
第1問(3)
3の倍数の個数を an とおく。
3で割って1余る整数の個数を bn とおく。3で割って2余る整数の個数もまた bn になる。(詳細な証明は後述する。)
1と2を合わせて n+1 個並べたものが3の倍数となるのは,3で割って1余る整数の後ろに2を付けたもの場合と,3で割って2余る整数の後ろに1を付けた場合になる。ゆえに an+1=bn+bn=2bn が従う。
1と2を合わせて n+1 個並べたものが3で割って1余る整数となるのは,3で割って2余る整数の後ろに2を付けたもの場合と,3の倍数の後ろに1を付けた場合になる。ゆえに bn+1=bn+an が従う。
こうして連立漸化式
{an+1=2bnbn+1=an+bn
が得られる。なお,1か2を1つ並べたとき,3の倍数は作られず,3で割って1余る整数は1の1通りであることから a1=0,b1=1 が従っている。
1つ目の式を用いることで2つ目の式は
21an+2=an+21an+1
となる。整理すると
an+2−an+1−2an=0
が得られる。なお,a1=0,a2=2 である。
三項間漸化式を解くと,
an=32n+2⋅(−1)n
が得られる。
途中に「3で割って1余る整数の個数を bn とおく。3で割って2余る整数の個数もまた bn になる。」が出てきました。直観的に明らかということで論証をしなかった人もいるかと思います
。丁寧に確認をしてみましょう。証明をいくつか紹介します。
各位の和を用いる
1が m 個,2が n−m 個並んだ整数 N が3で割って1余る整数のとき,1と2を入れ替えた整数 N′ は3で割って2余る整数となることを示す。これを示すことで3で割って1余る整数と3で割って2余る整数が1対1に対応することが従うため,証明が完了する。
正の整数の各位の和を3で割った余りと,元の整数を3で割った余りは一致する。実際,m 桁の整数 n を n=k=0∑mak10k (ただし各 ak は0以上9以下の整数)と表される場合,
n=k=0∑mak10k=k=0∑mak{(10k−1)+1}=k=0∑mak(10k−1)+k=0∑mak
となる。1項目は3の倍数であるため,n を3で割った余りは2項目,すなわち各位の和を3で割った余りと一致する。
N の各位の和は m+2(n−m)=2n−m である。N′ の各位の和は (n−m)+2m=n+m である。(2n−m)+(n+m)=3n である。
N が3で割って1余るとき,2n−m も3で割って1余る。このとき n+m は3で割って2余整数になる。したがって,N′ は3で割って2余る整数となる。以上より証明された。
3や9で割るときは,各位の和を活用すると良いことがあります。しかしこの方法は思いつきにくいかもしれません。多くの人は漸化式を扱っていたら,次のような証明にたどり着くかと思います。
漸化式を用いる
1と2を n 個並べたときの3で割って2余る整数の個数を cn とおく。
1と2を合わせて n+1 個並べたものが3の倍数となるのは,3で割って1余る整数の後ろに2を付けたもの場合と,3で割って2余る整数の後ろに1を付けた場合になる。ゆえに an+1=bn+cn=bn+cn が従う。
同様に考えることで,次の漸化式が成り立つ。
⎩⎨⎧an+1=bn+cnbn+1=cn+ancn+1=an+bn
なお, a1=0,b1=1,c1=1 である。
数学的帰納法により bn=cn を示す。n=1 のときはすでに計算されている。
n=k での成立を仮定すると,bk=ck となる。漸化式より
bk+1=ck+ak=bk+ak=ck+1 が従う。こうして n=k+1 のときにも成立することが分かり,任意の n で bn=cn となることが示された。
連立漸化式を解く際,三項間漸化式に帰着しましたが,連立漸化式の3通りの解き方にあるように別の方法を用いることもできます。もちろん結果は同じなので,復習のついでに計算練習ということでやってみてもいいですね。
最後の問題は補集合に注視する問題です。
素因数が5であることはないので,素因数が7以上ということは,素因数が2でも3でもないということです。こうするとかなり簡単に見えますね。素因数が2か3である場合を考える上で,素因数が2かつ3であるケースをキチンと計算しておきましょう。
第1問(4)
求めるものを dn とおく。
1の位は1か2であるため,5の倍数が得られることはない。
よって最小の素因数が7以上になるのは,2でも3でも割り切れないときである。したがって 2n から2か3で割り切れる整数の個数を引けばよい。
2で割り切れる整数,すなわち偶数は,(2)より 2n−1 通りある。3で割り切れる整数,すなわち3の倍数の個数は(3)で求めた。これらの和から2でも3でも割り切れる整数,すなわち6の倍数の個数を引けば,2か3で割り切れる整数の個数が得られる。
6で割り切れる整数は,3で割り切れる整数のうち,下1桁が2のときである。下1桁を除いた n−1 桁の整数は3で割って1余る整数となる。したがって,1と2を n 個並べた整数のうち6の倍数の個数は,bn−1=62n+2⋅(−1)n である。
よって
dn=2n−{(2n−1+32n+2⋅(−1)n)−62n+2⋅(−1)n}=2n−1−62n+2⋅(−1)n=32n−(−1)n
である。
配点 25点
(1) [3点]
16
(2) [4点]
2n−1
(3) [8点]
32n+2⋅(−1)n
(4) [10点]
32n+(−1)n−1