分数関数の微分公式(商の微分)とその証明・計算例

この記事では,数3で習う分数関数の微分公式(商の微分公式)について整理しました。2通りの証明方法と例題を解説します。

そもそも分数関数とは?

分数関数とは,以下のような分数で表される関数です。

分数関数の例

y=1xy=\dfrac{1}{x} y=4x2x4+3x2+x−1y=\dfrac{4x^2}{x^4+3x^2+x-1} y=1−sin⁡θcos⁡2θy=\dfrac{1-\sin \theta}{\cos^2 \theta}

分子を表す関数を f(x)f(x),分母を表す関数を g(x)g(x) とおくと,分数関数は f(x)g(x)\dfrac{f(x)}{g(x)} のように表すことができます。

分数関数の微分公式

分数関数 h(x)=f(x)g(x)h(x)=\dfrac{f(x)}{g(x)} の微分を考えてみます。

分数関数の微分公式(商の微分公式)

h(x)=f(x)g(x)h(x)=\dfrac{f(x)}{g(x)} に対して, h′(x)=f′(x)g(x)−f(x)g′(x)g(x)2{h'(x)}=\dfrac{{f'(x)}g(x)-f(x){g'(x)}}{g(x)^2}

これだけでは覚えにくく,分子の符号を間違えたり,前後を逆にしてしまったりするかもしれません。

公式の証明を理解すれば,そのような間違いも減ると思います。というわけで,2通りの証明を解説します。

微分の定義を用いた導出

分数関数の微分を,微分の定義にしたがって計算します。

微分の定義

f′(x)=lim⁡h→0f(x+h)−f(x)h{f'(x)}=\lim_{ h \to 0 } \dfrac{ f(x+h)-f(x) }{ h }

この定義を分数関数にもそのまま当てはめて,以下のように証明できます。

証明

h′(x)=lim⁡h→0h(x+h)−h(x)h=lim⁡h→0f(x+h)g(x+h)−f(x)g(x)h=lim⁡h→0f(x+h)g(x)−f(x)g(x+h)h1g(x)g(x+h) \begin{aligned} h'(x)=& \lim_{h\to 0}\dfrac{h(x+h)-h(x)}{h}\\ =&\lim_{h\to 0}\dfrac{\frac{f(x+h)}{g(x+h)}-\frac{f(x)}{g(x)}}{h}\\ =&\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)g(x)-f(x)g(x+h)}{h}\dfrac{1}{g(x)g(x+h)}\\ \end{aligned}

目標は h′(x)h'(x) を f′(x)f'(x) や g′(x)g'(x) を用いて表すことなので,微分の定義式が出てくるように変形する。すなわち上式は,

lim⁡h→0(f(x+h)g(x)−f(x)g(x))−(f(x)g(x+h)−f(x)g(x))h1g(x)g(x+h)=f′(x)g(x)−f(x)g′(x)g(x)2\begin{aligned} \lim_{h\to 0}&\dfrac{(f(x+h)g(x)-f(x)g(x))-(f(x)g(x+h)-f(x)g(x))}{h}\dfrac{1}{g(x)g(x+h)}\\ &=\dfrac{{f'(x)}g(x)-f(x){g'(x)}}{g(x)^2} \end{aligned}

これで分数関数の微分公式が導出できました。しかし,この方法をテスト中に行うのは大変です。

次に紹介する積の微分を用いる方法を覚えておけば十分です。

積の微分を用いた導出

積の微分公式

f(x)g(x)=f′(x)g(x)+f(x)g′(x) f(x)g(x)=f'(x)g(x)+f(x)g'(x)

積の微分については 積の微分公式とその証明の味わい で詳しく扱っています。

証明

h(x)=f(x)g(x)h(x)=\dfrac{f(x)}{g(x)} を h(x)=f(x)g(x)−1h(x)=f(x)g(x)^{-1} と見て積の微分公式を当てはめると,

h′(x)=f′(x)g(x)−1+f(x)(g(x)−1)′ \begin{aligned} &h'(x)=f'(x)g(x)^{-1}+f(x)(g(x)^{-1})' \end{aligned}

ここで (g(x)−1)′=(−1)g′(x)g(x)−2(g(x)^{-1})'=(-1)g'(x)g(x)^{-2} であるので,代入して

h′(x)=f′(x)g(x)−1+f(x)(−1)g′(x)g(x)−2=(f′(x)g(x)−f(x)g′(x))g(x)−2=f′(x)g(x)−f(x)g′(x)g(x)2 \begin{aligned} h'(x)&=f'(x)g(x)^{-1}+f(x)(-1)g'(x)g(x)^{-2}\\\\ &=(f'(x)g(x)-f(x)g'(x))g(x)^{-2}\\\\ &=\dfrac{{f'(x)}g(x)-f(x){g'(x)}}{g(x)^2} \end{aligned}

この導出を理解していれば,以下の事実を忘れにくくなります。

  • 分子の f(x)g′(x)f(x)g'(x) の符号が負である
  • 分母の g(x)g(x) の次数が 22 である(微分する前の g(x)g(x) の次数が −1-1 であったことに由来している)

さて,公式の証明を理解できたところで分数関数の微分を練習しましょう。

分数関数の微分の練習問題

例題1

y=xx2+1y=\dfrac{x}{x^2+1} を微分せよ。

解答

分数関数の微分公式を利用すると, y′=(x)′(x2+1)−x(x2+1)′(x2+1)2=(x2+1)−2x2(x2+1)2=1−x2(x2+1)2 \begin{aligned} y'&= \dfrac{(x)'(x^2+1)-x(x^2+1)'}{(x^2+1)^2}\\ &=\dfrac{(x^2+1)-2x^2}{(x^2+1)^2}\\ &=\dfrac{1-x^2}{(x^2+1)^2} \end{aligned}

となる。

例題2

y=x1−x2(∣x∣<1)y=\dfrac{x}{\sqrt{1-x^2}}\quad (|x|<1) を微分せよ。

解答

例題1と同様にして, y′=(x)′1−x2−x(1−x2)′(1−x2)2=1−x2−x⋅12⋅−2x1−x21−x2=1−x2+x21−x21−x2=1−x2+x21−x21−x2=1(1−x2)3/2 \begin{aligned} y'&= \dfrac{(x)'\sqrt{1-x^2}-x(\sqrt{1-x^2})'} {(\sqrt{1-x^2})^2}\\ &=\dfrac{\sqrt{1-x^2}-x\cdot \dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{-2x}{\sqrt{1-x^2}}}{1-x^2}\\ &=\dfrac{\sqrt{1-x^2}+\dfrac{x^2}{\sqrt{1-x^2}}}{1-x^2}\\ &=\dfrac{\dfrac{1-x^2+x^2}{\sqrt{1-x^2}}}{1-x^2}\\ &=\dfrac{1}{(1-x^2)^{3/2}} \end{aligned}

綺麗な形になりましたね。この形を覚えておいてください。

例題3

y=tan⁡θ(∣θ∣<π2) y=\tan \theta \quad \left(|\theta|<\dfrac{\pi}{2}\right) を微分せよ。

分数関数の微分公式を利用できる形にしてから公式を適用しましょう。

解答

y′=sin⁡θcos⁡θ=cos⁡θ(cos⁡θ)−sin⁡θ(−sin⁡θ)cos⁡2θ=1cos⁡2θ \begin{aligned} y'&=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}\\ &=\dfrac{\cos \theta (\cos \theta)-\sin \theta(-\sin \theta)}{\cos^{2} \theta}\\ &=\dfrac{1}{\cos^{2} \theta} \end{aligned}

この公式は三角関数の微分の単元で頻出です。

なお,例題2の式で x=sin⁡θx=\sin \theta と置換してみると,例題3の式が得られます。

覚えにくい公式ですが,証明を理解しておくと少しだけ忘れにくくなりますね。