「分数の分数」の形をした繁分数・連分数

分数の分母や分子に分数があるものを繁分数という。

また,以下のような形の数を連分数という。 a0+b1a1+b2a2+b3a3+ a_0 + \dfrac{b_1}{a_1 + \dfrac{b_2}{a_2 + \dfrac{b_3}{a_3 + \cdots}}}

「分数分の分数」という形をした数に関連する話題をいくつか紹介します。

繁分数の例

分数が二重,三重・・・になっていると,どんな数なのか直感的にわかりにくいです。そこで,わかりやすい表記に変形することを考えます。大きく分けて処理の仕方には2種類あります。

  • 分数の意味を考えて処理する方法
  • 分母分子に同じ数をかけて処理する方法

まず,最初の「分数の意味を考えて処理する方法」から考えます。

例として, 316732 \dfrac{\frac{3}{16}}{\frac{7}{32}} という数を考えてみます。そもそも,分数 ba\cfrac{b}{a} というのは,b÷ab \div a を表すものでした。ですから, 316732=316÷732=316×327=67 \dfrac{\frac{3}{16}}{\frac{7}{32}} = \dfrac{3}{16} \div \dfrac{7}{32} = \dfrac{3}{16} \times \dfrac{32}{7} = \dfrac{6}{7} と考えれば良いのです。簡単ですね。ただ,この方法は,繁分数がより複雑になった時に大変になります。次の例をみてみます。 12+34+56+78 \dfrac{1}{2+\dfrac{3}{4+\dfrac{5}{6+\dfrac{7}{8}}}} 分数が何段にも重なっており,割り算で表そうとするととても長い式になってしまうことが予想されます。このようなときに使える処理方法が「分母分子に同じ数をかけて処理する方法」になります。

分数 ba\dfrac{b}{a} に対し,分母と分子両方に 00 以外の同じ数をかけても値は変わりません。つまり, ba=bcac \dfrac{b}{a} = \dfrac{bc}{ac} が成立します。これを使って,分母分子のなかにある分数を一段ずつ消していくイメージです。以下のように変形します。 12+34+56+78=12+34+5×86×8+78×8=12+34+4048+7=12+34+811=12+3×114×11+811×11=12+3344+8=12+3352=1×522×52+3352×52=52104+33=52137 \begin{aligned} \dfrac{1}{2+\dfrac{3}{4+\dfrac{5}{6+\dfrac{7}{8}}}} &= \dfrac{1}{2+\dfrac{3}{4+\dfrac{5\times 8}{6\times 8+\dfrac{7}{8}\times 8}}}\\ &= \dfrac{1}{2+\dfrac{3}{4+\dfrac{40}{48+7}}}\\ &= \dfrac{1}{2+\dfrac{3}{4+\dfrac{8}{11}}}\\ &= \dfrac{1}{2+\dfrac{3\times 11}{4\times 11+\dfrac{8}{11}\times 11}}\\ &= \dfrac{1}{2+\dfrac{33}{44+8}}\\ &= \dfrac{1}{2+\dfrac{33}{52}}\\ &= \dfrac{1\times 52}{2\times 52+\dfrac{33}{52}\times 52}\\ &= \dfrac{52}{104+33}\\ &= \dfrac{52}{137} \end{aligned}

どんな繁分数にも対応できるので,基本的に2番目の処理方法を使うのが良いと思います。

連分数の例

繁分数に関連して,連分数についても紹介します。連分数については以下の記事でも取り上げています。→連分数展開とその計算方法

連分数に関わる面白い話題を紹介します。

黄金比 1+52 \dfrac{1 + \sqrt{5}}{2} は,以下のような連分数で表すことができます。 1+11+11+11+1 1 + \dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{1+\dfrac{1}{\cdots}}}} 証明は→黄金比が現れるいろいろな例(方程式・図形・数列)と現れる理由の記事で紹介しています。

また,数学をやっている人には馴染み深い「ルート」についても,連分数で表すことができます。

2\sqrt{2} については比較的簡単です。 2=1+12+12+12+1 \sqrt{2} = 1 + \dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{2+\dfrac{1}{\cdots}}}} と表すことができます。証明は→ルート2が無理数であることの4通りの証明の記事の最後の節で紹介しています。

この記事では,2\sqrt{2} 以外の「ルート」について連分数でどのように表すか考えてみます。面倒くさがらずに,紙に描きながら数式を追ってみてください。ふたつくらい例を見れば,どんな「ルート」に対しても連分数表示できるようになると思います。

ではまずは 3\sqrt{3} について考えてみましょう。α=3\alpha = \sqrt{3} とおきます。 α2=3α21=2(α+1)(α1)=2α=1+2α+1 \begin{aligned} \alpha^2 &= 3\\ \alpha^2 - 1 &= 2\\ (\alpha + 1)(\alpha - 1)&=2\\ \therefore \alpha &= 1 + \dfrac{2}{\alpha + 1} \end{aligned} ここで,2α+1\dfrac{2}{\alpha + 1} の逆数 α+12\dfrac{\alpha + 1}{2} を考えます。 α+12=1+2α+1+12=1+1α+1 \begin{aligned} \dfrac{\alpha + 1}{2} &= \dfrac{1 + \dfrac{2}{\alpha + 1} + 1}{2}\\ &= 1 + \dfrac{1}{\alpha + 1} \end{aligned} さらに,1α+1\dfrac{1}{\alpha + 1} の逆数 α+11\dfrac{\alpha + 1}{1} を考えます。 α+1=2+2α+1 \begin{aligned} \alpha + 1 = 2 + \dfrac{2}{\alpha + 1} \end{aligned} 2α+1\dfrac{2}{\alpha + 1} が再び出てきたので,連分数の中にループを発見できたことになります。つまり,以下のように 3\sqrt{3} を表せます。 α=1+2α+1=1+11+1α+1=1+11+12+2α+1=1+11+12+11+1α+1= \begin{aligned} \alpha &= 1 + \dfrac{2}{\alpha + 1}\\ &= 1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{\alpha + 1}}\\ &= 1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{2 + \dfrac{2}{\alpha + 1}}}\\ &= 1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{2 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{\alpha + 1}}}}\\ &= \cdots \end{aligned} 以下この操作は無限に続いていきます。

次は 7\sqrt{7} について考えてみましょう。これは少し大変です。β=7\beta = \sqrt{7} とおきます。 β2=7β21=6(β+1)(β1)=6β=1+6β+1 \begin{aligned} \beta^2 &= 7\\ \beta^2 -1 &= 6\\ (\beta + 1)(\beta - 1) &= 6\\ \therefore \beta &= 1 + \dfrac{6}{\beta + 1} \end{aligned} また,同様にすれば, β=2+3β+2 \beta = 2 + \dfrac{3}{\beta + 2} ここで,3β+2\dfrac{3}{\beta + 2} の逆数 β+23\dfrac{\beta + 2}{3} を考えます。 β+23=1+6β+1+23=1+2β+1 \begin{aligned} \dfrac{\beta + 2}{3} &= \dfrac{1 + \dfrac{6}{\beta + 1} + 2}{3}\\ &= 1 + \dfrac{2}{\beta + 1} \end{aligned} β\beta に代入する際には,約分ができるようにすることを意識しましょう。今回は,最初から分子に 22 があったので,33 で約分できるように 1+6β+11 + \dfrac{6}{\beta + 1} を代入しました。さらに,2β+1\dfrac{2}{\beta + 1} の逆数 β+12\dfrac{\beta + 1}{2} を考えます。 β+12=1+6β+1+12=1+3β+1 \begin{aligned} \dfrac{\beta + 1}{2} &= \dfrac{1 + \dfrac{6}{\beta + 1} + 1}{2}\\ &= 1 + \dfrac{3}{\beta + 1} \end{aligned} さらに,3β+1\dfrac{3}{\beta + 1} の逆数 β+13\dfrac{\beta + 1}{3} を考えます。 β+13=2+3β+2+13=1+1β+2 \begin{aligned} \dfrac{\beta + 1}{3} &= \dfrac{2 + \dfrac{3}{\beta + 2} + 1}{3}\\ &= 1 + \dfrac{1}{\beta + 2} \end{aligned} さらに,1β+2\dfrac{1}{\beta + 2} の逆数 β+21\dfrac{\beta + 2}{1} を考えます。 β+21=2+3β+2+2=4+3β+2 \begin{aligned} \dfrac{\beta + 2}{1} &= 2 + \dfrac{3}{\beta + 2} + 2\\ &= 4 + \dfrac{3}{\beta + 2} \end{aligned} 3β+2\dfrac{3}{\beta + 2} が再び出てきたので,連分数の中にループを発見できました。7\sqrt{7} は以下のように表せます。 7=2+3β+2=2+11+2β+1=2+11+11+3β+1=2+11+11+11+1β+2=2+11+11+11+14+3β+2= \begin{aligned} \sqrt{7} &= 2 + \dfrac{3}{\beta + 2}\\ &= 2 + \dfrac{1}{ 1 + \dfrac{2}{\beta + 1}}\\ &= 2 + \dfrac{1}{ 1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{3}{\beta + 1}}}\\ &= 2 + \dfrac{1}{ 1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{\beta + 2}}}}\\ &= 2 + \dfrac{1}{ 1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{1 + \dfrac{1}{4 + \dfrac{3}{\beta + 2}}}}}\\ &= \cdots \end{aligned} 以下この操作は無限に続いていきます。

他の平方根についても同様に考えることができます。ぜひ練習として取り組んでみてください。

無理数の連分数表示はとても奥が深いです。