場合分けの意義と方法|絶対値・二次関数・数列
場合分けとは,一気にまとめて扱うのが難しい問題を(変数の値などに応じて)いくつかの場合に分割して考えることをいう。
この記事では,「場合分け」とは何なのか,どうして必要なのかを絶対値・関数・方程式・数列など複数の例題を使って解説します。また,場合分けのコツも解説します。
場合分けとは
場合分けとは
場合分けとは,一気にまとめて扱うのが難しい問題をいくつかの場合に分割して考えることです。
一気に解くのが難しい問題でも「変数の値が特定の範囲なら解ける」ことがあり,そのような状況を利用します。
例えば,以下のように,変数の値に応じて複数の場合(パターン)にわけて考えます:
- の場合と の場合 → 後述の例1
- 絶対値の中身が0以上の場合と0未満の場合 → 後述の問題1
- の場合と の場合 → 後述の問題3
これだけではピンとこないと思います。「場合分け」を理解するために,いろいろな例を見てみましょう。
場合分けの意義・必要性
場合分けの意義・必要性
基本的な方程式の問題を使って場合分けについて考えていきます。
を実数とする。 についての方程式 を解け。
両辺を で割って,答えは としたくなります。
しかし, の場合は方程式の両辺を で割るということができません。つまり, の場合と の場合で状況が異なります。
一方, という状況に限定すれば,解は と表すことができますし, という状況に限定すれば,解は「無し」となります。
このように「状況を限定すれば解ける」というときに,場合分けは活躍します。
場合分けの方法
場合分けの方法
場合分けをする際は,問題をしっかり把握してどこで場合分けすれば良いのか自分で決める必要があります。
では,場合分けをする際に,どのように状況を分割すればよいでしょうか?
まず, 場合分けをするときに必ず満たさなければならないことが2つあります。
- 全てを網羅していること
- それぞれの場合についてまとめて扱えること
場合分けでは「全てを網羅していること」が必要です。例えば,さきほどの例1では の場合と の場合で「全てを網羅」できています。
また,「それぞれの場合についてまとめて扱うことができる」ことも必要です。まとめて扱うことができなければ,さらに場合分けをすることになります。
また,場合分けにおいては以下の観点も重要です。
- 重複がないこと
例えば,絶対値 を外すときに, と場合分けすると において重複しています。
場合分けにおいて,重複があってもよい場合と重複があってはならない場合があります。
例えば,方程式の解を列挙したいときは,同じ部分を2度考慮してしまっても全部解が出てくるので問題ないです。また,証明問題などで全ての場合で命題が正しいことを証明したいときは,重複があっても数学的な間違いはありません。
一方,数え上げや確率の問題においては,場合分けに重複があると致命傷です。 同じ事象として1度だけカウントしなければならないものを,重複してカウントしてしまうことになるためです。また,重複があってもよい場合でも,重複がない方が美しい状況が多いです。
場合分けをする際は重複をしても良いのかどうか,判断する癖をつけましょう。
さらに,場合分けにおいて望ましいことが1つあります。
- パターンの数が多くなりすぎないこと(最も効率よく場合分けできているか?)
例えば,さきほどの例1では の場合と の2つに分割して考えましたが, という3つに場合分けして考えても解くことができます。数学的には問題ありません。
ですが,このような冗長な場合分けは効率的でないです。問題を解くのにかかる時間が長くなってしまいますし,ミスもしやすくなります。特に受験生の方は制限時間内に早く正確に解くことが求められるので,効率的な場合分け(無駄にパターン数を増やさない)をすることが望ましいです。
ここまでのことをまとめます。
- 必須:全てを網羅していること
- 必須:それぞれの場合についてまとめて扱えること
- (状況に応じて)必須:重複がないこと
- 望ましい:パターンの数が多くなりすぎないこと(最も効率よく場合分けできているか?)
場合分けをする際は,これらを意識してみてください。
場合分けを使う絶対値の問題
場合分けを使う絶対値の問題
を解け。
絶対値の問題は,場合分けの典型問題の一つです。絶対値記号がついたまま計算するのは難しいので,場合分けをして絶対値記号を外します。
絶対値は中身の数字が正か負かによって状況が変わるので,そこで場合分けをします。
(i) のとき,つまり のとき
問題の不等式は (i)で考えているのは の場合だから, を満たす の中で を満たすのは
(ii) のとき,つまり のとき
問題の不等式は (ii)で考えているのは の場合だから, を満たす の中で を満たすのは
全ての実数 の中で不等式を満たすものの範囲を求めたいので,(i),(ii)の結果を統合して
場合分けをした後,最終的には不等式を満たす全ての を求めなければなりませんから,答えの範囲をつなげる必要があります。
それに対し,先ほどの例1の問題では, の値によって「答えが変わる」問題ですので,統合ではなく並列して並べる必要がありました。
場合分けをした後の処理についても,問題の性質をよくみて考える必要があります。最後まで気を抜かないようにしましょう。
場合分けを使う二次関数の問題
場合分けを使う二次関数の問題
における,関数 の最大値,最小値を求めよ。
関数の問題でも,場合分けが必要な問題がしばしば登場します。 の値によって最大値,最小値をとる の値が変わってしまうので,まとめて扱うことができません。場合分けが必要ですね。
とおく。
(i) のとき
で最小値, で最大値をとる。
(ii) のとき
で最小値, で最大値をとる。
(iii) のとき
で最小値, で最大値をとる。
(iv) のとき
で最小値, で最大値をとる。
により,最大値は 最小値は
場合分けを使う数列の問題
場合分けを使う数列の問題
を求めよ。
安易に「等比数列の和の公式利用だ!」と飛びつかないようにしましょう。そもそも等比数列の公式は公比 に対し, の制限があります。(→等比数列の和の公式(例題・証明・応用))つまり,公比が か否かによって状況が異なるので,場合分けが必要です。
(i) のとき (i) のとき
等比数列の和の公式より
漏れが無く重複が無いことをMECE(ミーシー)と言う人もいます。