ガウス整数とその応用
整数 を用いて と表される複素数をガウス整数(複素整数)と呼ぶ。
関連する用語
素因数分解(既約元分解)
応用
関連する用語
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ガウス整数全体の集合を ガウス整数環と言います。
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「ふつうの」整数を 有理整数と言うこともあります。また,有理整数全体の集合を 有理整数環と言います。
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ガウス整数における 倍数,約数の定義は有理整数の場合と同様です。つまり,ガウス整数 に対して となるガウス整数 が存在するとき, は の倍数, は の約数,と言います。
素因数分解(既約元分解)
ガウス整数環における「素数」をガウス素数と言います。つまり,( と異なる)2つのガウス整数の積で表せないものです。ただし, を素数から除くのと同様に, はガウス素数から除きます。
例えば は有理整数の範囲ではこれ以上分解できませんが,ガウス整数では と分解できるのでガウス素数ではありません。
ガウス整数環においても「ふつうの」整数の場合と同様に素因数分解の一意性が成立します。難しい言葉を使うと「ガウス整数環は一意分解整域」です。
ただし, または 倍で移れるガウス素数は同じものとみなします。例えば は同じ分解とみなします。
応用
ガウス整数の応用として,ピタゴラス数についての以下の定理を証明してみます(→ピタゴラス数の求め方とその証明)。
を満たす正の整数の組の中で
の最大公約数が1のものは,正の整数
を用いて
(または
)
という形で表せる。
は
と変形できる。 と は互いに素(→補足1)であり,それらの積が平方数なので,両方とも平方数(に のいずれかをかけたもの)である(→補足2)。
が平方数である場合を考える。このとき,整数 を用いて,
とおける。つまり,
となる。さらに, となる。
( より は同符号。さらに より) は正の整数に取れる。
なお, が平方数 のときは と の役割が入れ替わるだけで同じ形の式が得られる。
が平方数 のときは と の役割が入れ替わる。
背理法で証明する。 と がともに の倍数とすると,和と差を取ることにより, と も の倍数であることが分かる。
と は互いに素なものを考えているので, (または )
このとき, が の倍数,つまり が偶数となる。これは矛盾( で割った余りを考えることにより は奇数であることが必要→平方剰余)。
ここでガウス整数における「素因数分解の一意性」を使っています。
「せいいき」で変換しても「整域」は出てきませんね。