ルジャンドル記号とオイラーの規準
となる整数 が存在するとき, を の平方剰余と言います。平方剰余の基礎は平方剰余と基本的な問題を参照して下さい。このページでは,平方剰余に関する発展的な話題を扱います。
ルジャンドル記号と具体例
ルジャンドル記号と具体例
が の平方剰余か否かを簡潔に表すためにルジャンドル記号 というものが用いられます。
が の平方剰余であるとき,
と定義します。
また, が の平方剰余でないとき,
と定義します。
より
で割って 余る平方数は存在しないので
数学的に新しいことは何もありませんが,ルジャンドル記号を導入することで様々な議論・定理を簡潔に表現できます。
オイラーの規準と具体例
オイラーの規準と具体例
平方剰余かどうかを判定するための定理の1つに,オイラーの規準と呼ばれるものがあります。
を奇素数, を と互いに素な でない整数とするとき
より が の平方剰余であることが分かる。
より は の平方非剰余であることが分かる。
「 が奇素数, と が互いに素」という制約はありますが,オイラーの規準を用いれば平方剰余かどうかを簡単な計算で判定できます。
数学オリンピックなどの整数問題では,整数に具体的な値を代入して実験するのが大事であり,その際にそれなりに大きい に対して平方剰余か素早く判定できると便利な場合があります。
オイラーの規準の証明
オイラーの規準の証明
必要となる知識はフェルマーの小定理と原始根の存在定理です。
以下 の表記を省略します。
・ のとき
ルジャンドル記号の定義より, となる自然数 が存在する。
このとき, と は互いに素なので と も互いに素である。
よってフェルマーの小定理より
・逆に のとき
に対する原始根を とおくと, となる自然数 が存在する。このとき
は の倍数なので(→注) は偶数であり,
となり が の平方剰余であることが分かる。
注: の位数が であることが分かります,きちんと証明すると以下の通り:
を で割った商を 余りを とおくと,
より なら である。ここで だと原始根の定義に矛盾するので となり は の倍数。
平方剰余の第一補充法則
平方剰余の第一補充法則
特によく使うのがオイラーの規準で とした場合です:
これを平方剰余の第一補充法則と言います。
これより,奇素数 に対して,
が で割って 余る素数 ⇔ が の平方剰余
ということが分かります。
この定理のおもしろい応用例としてフェルマーの二平方和定理があります。
原始根はいろいろな定理の証明に使えるので,もっと有名になると嬉しいです。