モーザー数列

円周上に nn 個の頂点を打ち,その全ての2頂点間を線分で結ぶ。このとき,円は MM 個の領域に分割されるとする。

MM の最大値は an=124(n46n3+23n218n+24)a_n=\dfrac{1}{24}(n^4-6n^3+23n^2-18n+24)

Moser’s circle problem という問題です。数列 {an}\{a_n\} をモーザー数列と言います。

nn が小さい場合

円の分割問題

a1=1a_1=1a2=2a_2=2

a3=4a_3=4 (円に内接する三角形は領域を4つに分割する),

a4=8a_4=8 (円に内接する四角形は領域を8つに分割する),

a5=16a_5=16

となります。 an=2n1a_n=2^{n-1} と予想したくなりますが,実は違うというのが面白いです(a6=31a_6=31)。最初の数項だけでは数列は1つに決まりません!

一般の位置

3つの線分が一点で交わる場合には,1つの頂点をほんの少しだけズラすことでそのような点を解消し,領域を1つ増やすことができます。

1つの頂点をズラすと別の点で「3つの線分が一点で交わる」という現象が起こる可能性もありますが,ズラす度合いを調節する(調節の仕方は無数にある)ことで,このような場合は排除できます。

よって,以下では3つの線分が一点で交わらない状況を考えます。このような場合を「nn 個の頂点が一般の位置にある場合」と呼ぶことにします。

冒頭の定理の証明

主張:nn 個の頂点が一般の位置にある場合,MMan=124(n46n3+23n218n+24)a_n=\dfrac{1}{24}(n^4-6n^3+23n^2-18n+24) で一定

を帰納法で証明します。後半は単純な数列の計算です。→べき乗の和の公式

証明

n=1n=1 のときは明らか。

n=kn=k のとき主張が正しいと仮定する。k+1k+1 個の頂点が一般の位置にある場合について考える。頂点を(時計回りの順番で)P0,P1,,PkP_0,P_1,\cdots,P_k とする。

P1,,PkP_1,\cdots,P_k たちを結ぶ線分によって領域は aka_k 個に分割される(帰納法の仮定)。そこに線分 P0Pi(i=1,,k)P_0P_i\:(i=1,\cdots,k) を追加することで領域がいくつ増えるかを考える。

モーザー数列の導出

線分 P0PiP_0P_i(i1)(ki)(i-1)(k-i) 本の線分とぶつかるので,領域を (i1)(ki)+1(i-1)(k-i)+1 個増やす。

よって,P0P_0 を追加することで,領域は

i=1k{(i1)(ki)+1}=k(k+1)(2k+1)6+(k+1)k(k+1)2+(1k)k=16k312k2+43k\displaystyle\sum_{i=1}^k\{(i-1)(k-i)+1\}\\ =-\dfrac{k(k+1)(2k+1)}{6}+(k+1)\dfrac{k(k+1)}{2}+(1-k)k\\ =\dfrac{1}{6}k^3-\dfrac{1}{2}k^2+\dfrac{4}{3}k

個増える。

よって,k+1k+1 個の頂点が一般の位置にある場合の領域の個数は

ak+16k312k2+43ka_k+\dfrac{1}{6}k^3-\dfrac{1}{2}k^2+\dfrac{4}{3}k

これが ak+1a_{k+1} と等しいことは簡単な計算で確認できる。

私は「数列の最初の数項から次の項を求めよ」というクイズがあまり好きではないです。