二直線のなす角を求める2通りの方法と比較

二直線のなす角の求め方は「tanによる方法」「cosによる方法」の2通りある。

なす角

二直線なす角の求め方を2通り解説します。2つの方法の間の美しい関係も紹介します。

なす角を求める例題

まずは例題です。

例題1

二直線 3xy=0\sqrt{3}x-y=0(23)xy=0(2-\sqrt{3})x-y=0 のなす角 θ\theta を求めよ。

タンジェントの加法定理と,直線の傾き=tan=\tan であることを使って解きます。

解答

二直線の式は,y=3xy=\sqrt{3}xy=(23)xy=(2-\sqrt{3})x である。

よって,傾きは,m1=3m_1=\sqrt{3}m2=23m_2=2-\sqrt{3} である。

なす角と加法定理

よって,タンジェントの加法定理より,

tanθ=m1m21+m1m2=2321+3(23)=1\begin{aligned} \tan\theta &= \dfrac{m_1-m_2}{1+m_1m_2}\\ &=\dfrac{2\sqrt{3}-2}{1+\sqrt{3} (2-\sqrt{3})}\\ &=1 \end{aligned}

となり θ=45\theta=45^{\circ}

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT149では,有名な応用問題と3通りの解法を紹介しています。

二直線のなす角を求める方法1(tan)

さきほどの例題を一般化すると,以下の公式を導出できます。

公式1

二直線,a1x+a2y=0a_1x+a_2y=0b1x+b2y=0b_1x+b_2y=0 のなす角 θ\theta

tanθ=a1b2a2b1a1b1+a2b2\tan\theta=\dfrac{|a_1b_2-a_2b_1|}{|a_1b_1+a_2b_2|} を満たす。

  • この公式を覚える必要はありません。「タンジェントの加法定理」と「傾き=tan」という考え方が重要です。

  • 直線を平行移動してもなす角は変わらないので,原点を通る二直線のみ考えれば十分です。

  • なお,二直線のなす角が直角の場合,a1b1+a2b2=0a_1b_1+a_2b_2=0 になり,この公式は使えません。

  • a2=0a_2=0 または b2=0b_2=0 のときは傾きが存在しないので,例題1の解答の方法では証明できませんが,上記の公式が成立することが簡単に確認できます。公式1が使えないのは a1b1+a2b2=0a_1b_1+a_2b_2=0 のときのみです。

二直線のなす角・ベクトルのなす角

なす角を計算する2つめの方法を説明する前に,「直線のなす角」と「ベクトルのなす角」の違いを意識しておきましょう。

なす角

  • 直線のなす角について,直線には向きがないので,なす角 θ\theta00^{\circ} 以上 9090^{\circ} 以下です。

  • ベクトルのなす角について,ベクトルには向きがあるので,なす角 θ\theta'00^{\circ} 以上 180180^{\circ} 以下です。

ベクトルのなす角の求め方

次は,ベクトルのなす角について考えます(あとで紹介する「直線のなす角を求める方法2」の準備にもなっています)。

ベクトルのなす角の公式

2つのベクトル,aundefined=(a1,a2)\overrightarrow{a}=(a_1,a_2)bundefined=(b1,b2)\overrightarrow{b}=(b_1,b_2) のなす角 θ\theta' は, cosθ=a1b1+a2b2a12+a22b12+b22 \cos\theta=\dfrac{a_1b_1+a_2b_2}{\sqrt{a_1^2+a_2^2}{\sqrt{b_1^2+b_2^2}}} を満たす。

aundefined=(2,1)\overrightarrow{a}=(2,1)bundefined=(1,3)\overrightarrow{b}=(1,3) のなす角 θ\theta' を計算せよ。

公式より,cosθ=21+1322+1212+32=12\cos\theta'=\dfrac{2\cdot 1+1\cdot 3}{\sqrt{2^2+1^2}\sqrt{1^2+3^2}}=\dfrac{1}{\sqrt{2}}

つまり,θ=45\theta'=45^{\circ} になります。

ベクトルのなす角の公式の証明

ベクトルの内積を2通りで表す。

  • 成分表示すると a1b1+a2b2a_1b_1+a_2b_2
  • 長さを使うと,aundefinedbundefinedcosθ|\overrightarrow{a}||\overrightarrow{b}|\cos\theta'

よって,

(a1b1+a2b2)=a12+a22b12+b22cosθ\begin{aligned} &(a_1b_1+a_2b_2)\\ &=\sqrt{a_1^2+a_2^2}\sqrt{b_1^2+b_2^2}\cos\theta' \end{aligned}

これを cosθ\cos\theta' について解くと公式を得る。

ちなみに,空間ベクトルのなす角も同様です。つまり,aundefined=(a1,a2,a3),bundefined=(b1,b2,b3)\overrightarrow{a}=(a_1,a_2,a_3),\overrightarrow{b}=(b_1,b_2,b_3) のなす角 θ\theta' cosθ=a1b1+a2b2+a3b3a12+a22+a32b12+b22+b32 \cos\theta'=\dfrac{a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3}{\sqrt{a_1^2+a_2^2+a_3^2}\sqrt{b_1^2+b_2^2+b_3^2}} を満たします。

二直線のなす角を求める方法2(cos)

ベクトルのなす角をふまえて,二直線のなす角を求める方法の2つめを解説します。使う道具は,以下の2つです。

  • 二直線のなす角 θ\theta が,それぞれの法線方向のなす角 θ\theta' と等しいこと なす角と法線ベクトル
  • a1x+a2y=0a_1x+a_2y=0 の法線ベクトルが (a1,a2)(a_1,a_2) であること(詳細は→直線の方程式の一般形が嬉しい3つの理由
例題1(再掲)

二直線 3xy=0\sqrt{3}x-y=0(23)xy=0(2-\sqrt{3})x-y=0 のなす角 θ\theta を求めよ。

解答

二直線の法線ベクトルはそれぞれ (3,1),(23,1)(\sqrt{3},-1),\:(2-\sqrt{3},-1) であるので,これらのなす角 θ\theta' を求めればよい(θ90\theta'\leq 90^{\circ} なら θ=θ\theta=\theta'θ>90\theta' > 90^{\circ} なら θ=180θ\theta=180^{\circ}-\theta' であることに注意)。

ここで,ベクトルの内積を二通りで表すと,

3(23)+(1)(1)=(3+1(23)2+1)cosθ\begin{aligned} &\sqrt{3}\cdot (2-\sqrt{3})+(-1)(-1)\\ &=\left(\sqrt{3+1}\sqrt{(2-\sqrt{3})^2+1}\right)\cos\theta' \end{aligned}

となるので,

cosθ=233+13+11+(23)2=23222423\begin{aligned} \cos\theta'&=\dfrac{2\sqrt{3}-3+1}{\sqrt{3+1}\sqrt{1+(2-\sqrt{3})^2}}\\ &=\dfrac{2\sqrt{3}-2}{2\sqrt{2}\sqrt{4-2\sqrt{3}}} \end{aligned}

ここで,分母の二重根号は外せる(注)(423=31\sqrt{4-2\sqrt{3}}=\sqrt{3}-1)ので,

cosθ=12 \cos\theta'=\dfrac{1}{\sqrt{2}}

となる。よって法線ベクトルのなす角が 4545^{\circ} であるので,二直線のなす角も 4545^{\circ}

注:→二重根号の外し方・外せないものの判定

上記の解答を一般化すると,以下の公式を導出できます。

公式2

二直線,a1x+a2y=0a_1x+a_2y=0b1x+b2y=0b_1x+b_2y=0 のなす角 θ\theta

cosθ=a1b1+a2b2a12+a22b12+b22\cos\theta=\dfrac{|a_1b_1+a_2b_2|}{\sqrt{a_1^2+a_2^2}{\sqrt{b_1^2+b_2^2}}} を満たす。

二つの方法の比較

  • 方法1(tanの加法定理)
    メリット:計算が楽!
    デメリット:直線の傾きが存在しない場合は別に考える必要がある

  • 方法2(内積,cos)
    メリット:場合分け不要
    デメリット:計算がしんどくなることが多い(さきほどの例題でも二重根号が登場)

計算量の恩恵が大きいので基本的に方法1がオススメです。 傾きが明らかに存在する&二直線が明らかに直交しない状況では場合分けはそもそも不要ですし,場合分けが必要な場合も簡単に処理できます。一方,やや複雑な問題では cos\cos の方は計算がヤバいことになります。

美しい関係

最後に二つの公式の間に,1+tan2θ=1cos2θ1+\tan^2\theta=\dfrac{1}{\cos^2\theta} という基本的な関係式が成立していることを確認しておきます。

確認

公式1によると,

1+tan2θ=1+(a1b2a2b1)2(a1b1+a2b2)2=(a1b1+a2b2)2+(a1b2a2b1)2(a1b1+a2b2)2\begin{aligned} 1+\tan^2\theta &= 1+\dfrac{(a_1b_2-a_2b_1)^2}{(a_1b_1+a_2b_2)^2}\\ &=\dfrac{(a_1b_1+a_2b_2)^2+(a_1b_2-a_2b_1)^2}{(a_1b_1+a_2b_2)^2} \end{aligned}

ここでブラーマグプタ・フィボナッチ恒等式を発動(知らなくてもただ計算すればよいだけ)すると,

上式は (a12+a22)(b12+b22)(a1b1+a2b2)2\dfrac{(a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2)}{(a_1b_1+a_2b_2)^2} と計算できる。

これは公式2による cosθ\cos\theta の逆数の二乗に等しい!

tanの方が計算が楽になることを実感していただけたかと思います。

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