束の考え方と例題(直線,円,一般論)
と は実数で少なくとも一つは でないとする。
が表す図形は,
が表す図形と が表す図形の交点(が存在すれば)を全て通る。
高校数学で頻出の束の考え方について解説します。例として直線束・円束を扱います。「そく」と読みます。
注:大学数学で登場する「束(そく)」という代数的構造とは別物です。
直線束の例題
円束の例題
一般論
束の考え方について
直線束の例題
冒頭の主張の証明は後回しにして,まずは例題を2問解説します。
まずは も も直線を表す場合です。一番見かけるパターンです。
2つの直線 , の交点 と を通る直線の方程式を求めよ。
という図形は,
- 束の考え方より交点 を通る
- と の一次式なので直線を表す
よって,あとは をうまく定めて を通るようにしてやればOK。そこで上式に を代入すると
この 以外の解を持ってくればOKなので,例えば とすれば,
つまり
を得る。
注:この問題は直接交点の座標を求める方法でも,ほぼ同じくらいの手間でできます。
円束の例題
次は も も円を表す場合です。
2つの円 , の2つの交点 と を通る直線の方程式を求めよ。
という図形は,束の考え方より交点 を通る。
よって,あとは をうまく定めて直線の方程式にしてやればOK。そこで の係数が になるように,例えば とする:
つまり
を得る。
注1.結果的には「二つの円の方程式を引き算したもの」に過ぎませんが,この結果だけではなく束の考え方をしっかり理解しておくべきです。
注2.二円の二交点を通る直線は根軸と呼ばれます。→根軸の性質と根心の存在定理
注3.二円が交わらないときは,冒頭の主張は何の結果ももたらしてくれません。 二つの図形が交点を持つときに威力を発揮する考え方だと認識しておきましょう。
注4.三次元の場合も似たような性質が成り立ちます。つまり「二つの球面が交わってできる円を含む平面の方程式」は「二つの球面の方程式を引き算したもの」になります。
一般論
冒頭の主張について,ほぼ当たり前ですが証明しておきます。
と の交点 の座標を とおくと,当然ながら を満たす。
よって,それらの重み付き和(線形結合という)も である:
よって, は が表す図形に含まれる。
交点が複数ある場合,全ての交点について上記の議論が成立する。
束の考え方について
- 冒頭の主張において, や が直線や円の場合が頻出ですが,それ以外の図形の場合にも成立する考え方です。
- と書かずに で説明する参考書も多いです。どちらもほとんど同じことですが,前者では とすることで という図形を表現できますが後者ではできません。 実際,ほとんどの場合は後者で事足りますが,一般論を展開する上では前者の方が綺麗です。直線の一般形における と の違いみたいなものです。→直線の方程式の一般形が嬉しい3つの理由
代数構造の「束」と紛らわしいのでどっちか改名して欲しいですね!