大学数学への展望

大学ではどのような数学を学ぶのか,高校数学と関連させつつ整理しました。より抽象的で美しい世界が待っています。

大学で学ぶ数学(初級)

大学で数学を学ぶ人は,必ず最初に線形代数と微分積分学の2分野を習います。高校数学の微分積分,行列の発展版です。これ以降ほとんど全ての分野に顔を出す2本柱です。

関連する高校数学の分野→大学数学の分野

という形で書いています。

・ベクトル,行列→線形代数学

行列の発展版。一般の nn 次元空間が登場します。「有限」かつ「線形」という非常に扱いやすいものを対象にしているので理論がとても美しいです。

・微分積分→微分積分学(解析学)

多変数関数の微分(偏微分・全微分)や積分(重積分)へ。高校数学ではごまかしていた極限計算もイプシロンデルタ論法を用いてきちんと議論します。

大学で学ぶ数学(中級 その1)

数学を専門にするかどうかを問わず,多くの理学系,工学系で学ぶ数学を紹介します。

・微分積分→微分方程式論

微分係数を用いた関数を解に持つ方程式が微分方程式です。微分方程式の形によって様々な計算方法があります。

・図形と方程式,微分→ベクトル解析

微分を駆使して曲線の長さや曲面の面積を求めます。さらに曲がり方を数学的に議論することもあります。

・微分積分,複素数→複素関数論

複素数を用いることで実数の世界だけではできなかったようなこともできます。(例:ある種の実数関数の積分計算)複素数のありがたみを実感できます。

・確率,場合の数,統計→確率論・統計

高校まででは「離散的」な確率を計算していましたが,大学では積分を用いることにより連続的な事象の確率を計算できます。マルコフ連鎖や確率過程など応用上重要な内容もあります。

・三角関数,微分積分→フーリエ解析

全ての関数は三角関数の和によって表すことができます。このアイデアによって微分方程式が解けるようになります。

大学で学ぶ数学(中級 その2)

ここからの数学は,数学科の人以外は勉強しない場合があります。

数学科では2・3年生が勉強します。

・文字式→群論(代数学)

++×\times といった「演算」に着目し,群という抽象的な構造を考えます。RSA暗号といった暗号理論にも応用があります。

・集合→集合と位相

「無限」をより厳密に考えます。開集合と閉集合を一般化し,もっと様々な数学に適用できるようにします。

・図形→多様体論

高校数学までの図形の世界は xyxy 平面や xyzxyz 空間が舞台でした。より広く幾何学をするために,部分的に xyxy 平面や xyzxyz 空間となる図形を多様体と名付け,調べていきます。

・積分→ルベーグ積分

「積分」の定義を一般化することで今まで積分できなかったような奇抜な関数を積分できるようにします。積分とは面積を計算することなので,長さの測り方を一般化したアイデア「測度」を導入します。

大学で学ぶ数学(上級1)

主に数学科の3・4年生が勉強する数学を紹介します。

・文字式,方程式→環論,体論,ガロア理論(代数学)

群のその先として環や体という概念があります。環論は整数の集合の一般化といえて,現代数学でも重要な概念です。ガロア理論は方程式の解についての理論です。理解すれば5次方程式に解の公式がないことの証明ができます。

・三角関数,微分積分→フーリエ解析

フーリエ展開・フーリエ変換が単に計算上重要なだけではなく,関数を関数に送る便利な写像になっていることを勉強します。

・確率,場合の数→確率論

確率論も厳密にやろうとするとボレル集合や測度という抽象的な概念が必要になります。

・図形→トポロジー

図形をやわらかく考察します。これまでは合同や相似といった性質で図形を分類してきましたが,トポロジーの世界では穴の数など,ある程度変形に耐える方法で分類を行います。ホモロジー・コホモロジーという概念が登場します。

・微分,積分,図形→微分幾何

微分形式という道具を用いて図形を調べます。一般的な図形(多様体)上での積分を考えます。この積分によりドラームコホモロジーという重要な量が定義されます。

大学で学ぶ数学(上級2)

数学科の4年生~大学院生が勉強する数学を紹介します。

・整数論

数学の花形,整数論です。整数のフレームワークを飛び出して,広い世界で議論をすることにより,様々な整数方程式を解きます。代数・幾何・解析の知識が幅広く横断することになります。

・代数幾何学

多項式関数のグラフを考察する分野です。スキームという強力な道具を用いることで,実数・複素数以外の集合上でも幾何学を展開することができます。

・表現論

群などの代数集合を線型代数の言葉によって解釈する分野です。素粒子論といった物理学への応用もあります。また代数・幾何・解析と3方向からのアプローチがあります。

・関数解析

線形代数と微分積分学の融合で,無限次元の線形代数ともいわれます。ある種の関数の集合は線型空間を成します。関数・線形空間2方向から考察を行います。

・リーマン幾何学

リーマン計量という「内積」を用いた(微分)幾何学です。ベクトル解析がさらに一般化されます。物理における相対性理論はリーマン幾何の良い具体例とも言えます。

・低次元トポロジー

3,4次元の図形の分類は非常に難解なものになります。ポアンカレ予想に代表される難問が眠ります。結び目の理論というものもあります。

・力学系

漸化式を通した数列の考察のように,同じ操作を繰り返すとどのような現象が起きるのか調べる分野です。

・基礎論

公理系の考察・証明論など,数学のロジックの部分を調べる分野です。

・圏論

集合論をより一般化したものが圏論です。代数学のほとんどは圏論の言葉によって記述することができます。

大学で学ぶ数学(その他)

・場合の数→離散数学,グラフ理論

ここでのグラフとは,高校数学で登場したグラフとはまた別ものです。点と頂点のあつまりをグラフと呼び,これに対して数え上げの問題などを解きます。

・応用数学

最適化理論,アルゴリズム,計算量理論など,直接応用に結びつく分野もあります。

数学はレベルが上がるにつれてどんどん抽象化,一般化されていきます。