ユークリッドの互除法と約数の考察~京大理系後期1989

問題(京都大学理系後期 1989)

2つの奇数 a,ba,b に対して,m=11a+bm = 11a+bn=3a+bn = 3a +b とおく。次の1,2を証明せよ。

  1. mmnn の最大公約数は,aabb の最大公約数を dd として,2d2d4d4d8d8d のいずれかである。
  2. mmnn がともに平方数であることはない。

この記事ではユークリッドの互除法を用いた入試問題を解説します。

解答

1番

証明

a=Ada = Adb=Bdb = Bd とおく。(A,BA,B は互いに素な奇数の整数)

m=(11A+B)dn=(3A+B)d\begin{aligned} m &= (11A+B)d\\ n &= (3A+B)d \end{aligned} より m,nm,ndd を公約数に持つ。

11A+B11A+B3A+B3A+B の最大公約数を求める。 11A+B(3A+B)=8A 11A+B - (3A+B) = 8A

より gcd (11A+B,3A+B)=gcd (3A+B,8A) \mathrm{gcd} \ (11A+B,3A+B) = \mathrm{gcd} \ (3A+B,8A) である。よって 11A+B11A+B3A+B3A+B の最大公約数は 8A8A の約数である。特に A,BA,B は互いに素であるため,88 の約数である。

よって,m,nm,n の最大公約数は 8d8d の約数である。

さて,a,ba,b は奇数であるため m,nm,n は偶数である。よって m,nm,n の最大公約数は偶数である。ここで dd は奇数であるため,m,nm,n の最大公約数として dd は不適である。。

以上より,最大公約数の候補は 2d,4d,8d2d,4d,8d である。

ユークリッドの互除法の類型 gcd (a,b)=gcd (a,ab) \mathrm{gcd} \ (a,b) = \mathrm{gcd} \ (a,a-b) を用いています。

偶奇に注目して dd を除外することもポイントです。

2番

証明

m,nm,n がどちらも平方数であると仮定する。

このとき m,nm,n の最大公約数もまた平方数となる。

1番より最大公約数は 2d,4d,8d2d,4d,8ddd は奇数)のいずれかであった。このうち 2d,8d2d,8d22 で奇数回しか割ることができないため,平方数にならない。よって m,nm,n の最大公約数は 4d4d である。

こうして m,nm,n44 で割り切れる平方数となるため,m=4M2m = 4M^2n=4N2n=4N^2M,NM,N は整数)とおくことができる。

mn=8am-n = 8a に代入すると 4M24N2=8a 4M^2-4N^2 = 8a 辺々を 44 で割ることで M2N2=2a M^2-N^2 = 2a を得る。

今,M,NM,N の偶奇が異なるとすると M2N2M^2-N^2 は奇数である。一方右辺の 2a2a は偶数であるため矛盾する。ゆえに M,NM,N の偶奇は一致するとしてよい。

  • M,NM,N がどちらも偶数の場合
    このとき,m,nm,n の最大公約数は 1616 で割り切れることになる。これは1の結果と矛盾する。

  • M,NM,N がどちらも奇数の場合
    M2,N2M^2, N^244 で割った余りはどちらも 11 になる。ゆえに左辺の M2N2M^2-N^244 の倍数である。
    一方,aa は奇数であることから,右辺の 2a2a44 で割り切ることができず矛盾する。

こうして M,NM,N の偶奇がどちらの場合も矛盾が生じるため,最初の過程は誤りである。

こうして M,NM,N が両方平方数になることはない。

2つの平方数の最大公約数が平方数になることに気付けると良いですね。これは素因数の指数を調べることで証明できます。

また mod 4\mathrm{mod} \ 4 での議論によって矛盾を導くテクニックにも注目です。

整数問題で登場するテクニックがたくさん出てくるおもしろい問題でした。