直積(2つの集合の直積から無限個の場合まで)
2つの集合 , に対して「 と から1つずつとってきたペアをすべて集めた集合」のことを と の直積集合といい, と表す。つまり,
直積(direct product,Cartesian product) についてわかりやすく説明します。
直積の意味と簡単な例
直積の意味と簡単な例
と の直積集合とは「 と から1つずつとってきたペアをすべて集めた集合」です。
のとき,
ここでいう「ペア」は順番を考慮します。つまり, の各要素 は順序対です。例えば, です。よって,一般に です。
直積集合の要素数
は有限集合とします。直積集合の要素数は,要素数の積と等しいです: なぜなら, の要素数について「 の要素の選び方が 通り」でその各々に対して「 の要素の選び方が 通り」であるためです。例えば,さきほどの例では になっています。
直積集合のさらなる例
直積集合のさらなる例
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3つ以上の集合の直積も同様に定義されます。例えば, のとき, は や など合計 個の要素からなる集合です。
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同じ集合の直積を考えることもあります。 と の直積を と書くことがあります。例えば, のとき です。
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無限集合の直積を考えることもあります。例えば実数全体の集合 に対して,直積 を考えることは多いです(高校数学で習う座標平面を と表すことがあります)。
無限個の直積
無限個の直積
有限個の集合の直積 はわかりやすいですが,無限個になると少し難しくなります。
有限集合とは限らない集合 で添字づけられた集合族 の直積集合を考えてみましょう。
集合族 に対して,それらすべての直積集合 は以下で定義される:
いきなり「 から への写像 」が出てきてわかりにくいです。例を見ながら理解しましょう。
可算無限の例
可算無限個の直積は「数列」っぽいです。
添字集合が (正の整数全体の集合)で, の場合を考えます。無限個の集合の直積 を考えましょう。
これは,各項が または である数列全体の集合です。
直積の定義をもとに正確に表すと,以下のようになります:
つまり「正の整数全体から への写像全体」です。
(正の整数全体の集合), に対して,無限個の集合の直積 を考えましょう。
これは,大雑把にいうと 番目の項が または である数列全体の集合です。
正確には,以下で定義されます:
つまり「正の整数全体から 以上の整数全体への写像の中で,各 に対して を満たすもの全体」です。
非可算無限の例
非加算無限の直積は「関数」っぽいです。
(実数全体の集合), に対して,集合の直積 を考えましょう。
これは,値が または である実数上の関数全体の集合です:
例1や例3のように, が に依存しないとき,つまり同じ集合たちの直積集合を などと書くことがあります。
群の直積
群の直積
ここまでは集合の直積を考えました。これをもとに「群の直積」「環の直積」「位相空間の直積」などいろいろな対象の直積を考えることができます。
ここでは,例として群の直積を紹介します。
群とは,群の公理と呼ばれる条件を満たす集合(と演算のペア)のことです。→群の定義といろいろな具体例
2つの群 に対して,集合の直積 に属する元 に対する演算 を で定めると, は群となる。これを と の群の直積という。
52枚のトランプは,4種の絵柄の集合と13種の数の集合の直積集合です。