表現行列の観点から見た対角化

対角化(ジョルダン標準形)は表現行列により説明ができる。

この記事では対角化・ジョルダン標準形の意味を表現行列の観点から解説します。

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対角化

線型写像 ff を考えます。この ff の固有ベクトルを v1,v2,,vnv_1 , v_2, \dots , v_n と取ります。

ff の表現行列は,v1,v2,,vnv_1, v_2, \dots , v_n を並べた行列 PP を挟むことで対角化できるのでした。

対角化とは,変換行列が対角行列になるような基底への変換である。

対角化のステップ

  • 固有ベクトルを基底とすると,線型写像 ff の表現行列は対角行列になる。

A=(1432)A=\begin{pmatrix} 1&4\\3&2 \end{pmatrix} とおく。

線型写像 f:R2R2f : \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^2f(x)=Axf(x) = Ax と定める。

表現行列 AA をを対角化する。

固有方程式は det(1t432t)=t23t10\det \begin{pmatrix} 1-t&4\\3&2-t \end{pmatrix} = t^2 - 3t -10 より固有値は 5,25,-2 である。

それぞれの固有ベクトルは v1=(11)v2=(43) v_1 = \begin{pmatrix} 1\\1 \end{pmatrix}\\ v_2 = \begin{pmatrix} 4\\-3 \end{pmatrix} となる。

v1,v2v_1, v_2R2\mathbb{R}^2 の基底である。

f(v1)=5v1f(v2)=2v2\begin{aligned} f(v_1) &= 5 v_1\\ f(v_2) &= -2 v_2 \end{aligned} より,基底 {v1,v2}\{ v_1,v_2 \} から基底 {v1,v2}\{ v_1, v_2 \} への ff の表現行列は (5002)\begin{pmatrix} 5&0\\ 0&-2 \end{pmatrix} である。

これを行列の形で表すと (v1v2)(5002)=A(v1v2) \begin{pmatrix} v_1 & v_2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 5&0\\ 0&-2 \end{pmatrix} = A \begin{pmatrix} v_1 & v_2 \end{pmatrix} となる。

ここで P=(v1v2)P = \begin{pmatrix} v_1 & v_2 \end{pmatrix} とすると,対角化の式 P1AP=(5002) P^{-1} A P = \begin{pmatrix} 5&0\\ 0&-2 \end{pmatrix} が得られる。

ジョルダン標準形

対角化できない行列はジョルダン標準形に変換できるのでした。ジョルダン標準形を表現行列の視点から観察してみます。

B=(212111212)B= \begin{pmatrix} 2&-1&2\\ -1&1&-1\\ -2&1&-2 \end{pmatrix} とおく。

線型写像 g:R3R3g: \mathbb{R}^3 \to \mathbb{R}^3g(x)=Bxg(x) = Bx と定める。

固有方程式は BtI=2t1211t1212t=(2t)(1t)(2t)22+4(1t)(2t)+(2t)=t2t3\begin{aligned} &|B-tI|\\ &= \begin{vmatrix} 2-t&-1&2\\ -1&1-t&-1\\ -2&1&-2-t \end{vmatrix}\\ &= (2-t)(1-t)(-2-t) -2-2\\ &\qquad + 4(1-t) -(-2-t) + (2-t)\\ &= t^2-t^3 \end{aligned} である。よって固有値は 0,10,1 である。

固有値 11 の固有ベクトルは v1=(111)v_1 = \begin{pmatrix} -1\\1\\1 \end{pmatrix},固有値 00 の固有ベクトルは v2=(101)v_2 = \begin{pmatrix} 1\\0\\-1 \end{pmatrix} である。

ここで標準基底から固有ベクトルへ基底を取り換えたいが,2つしかないため固有ベクトルだけでは R3\mathbb{R}^3 を張ることができない。固有値 00 の重複度が 22 であるため,ここの広義固有空間を考える。

すなわち (A0I)x=v2(A-0 \cdot I) x = v_2 を満たす元を求める。この解として v3=(110)v_3 = \begin{pmatrix} 1\\1\\0 \end{pmatrix} を取る。

これらの元について Bv1=1v1Bv2=0v2Bv3=1v2+0v3\begin{aligned} Bv_1 &= 1 \cdot v_1\\ Bv_2 &= 0 \cdot v_2\\ Bv_3 &= 1 \cdot v_2 + 0 \cdot v_3 \end{aligned} となり,v1,v2,v3v_1,v_2,v_3R3\mathbb{R}^3 の基底となる。

以上より基底 {v1,v2,v3}\{ v_1,v_2,v_3 \} から基底 {v1,v2,v3}\{ v_1,v_2,v_3 \} への gg の表現行列は (100001000) \begin{pmatrix} 1 &0&0\\ 0&0&1\\ 0&0&0 \end{pmatrix} である。

行列の形で表すと (v1v2v3)(100001000)=B(v1v2v3) \begin{pmatrix} v_1 & v_2 & v_3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 &0&0\\ 0&0&1\\ 0&0&0 \end{pmatrix} = B \begin{pmatrix} v_1 & v_2 & v_3 \end{pmatrix} となる。

Q=(v1v2v3)Q = \begin{pmatrix} v_1 & v_2 & v_3 \end{pmatrix} とすると,ジョルダン標準型への変換 Q1BQ=(100001000) Q^{-1} B Q = \begin{pmatrix} 1 &0&0\\ 0&0&1\\ 0&0&0 \end{pmatrix} が得られる。

意味を覚えておけば苦労せずにジョルダン標準形が計算できます。