正七角形の対角線の性質

定理

正七角形の対角線の長さを短い順に a,b,ca,b,c とすると, 1a=1b+1c \dfrac{1}{a} = \dfrac{1}{b} + \dfrac{1}{c} が成立する。

pic

この記事では正七角形について,シンプルで美しい等式とその証明を紹介します。

証明1:トレミーの定理を用いる方法

まずはトレミーの定理を用いる方法を紹介します。

下図のように対角線を引きます。

pic_t

トレミーの定理より AB×CE+BC×AE=AC×BE \mathrm{AB} \times \mathrm{CE} + \mathrm{BC} \times \mathrm{AE} = \mathrm{AC} \times \mathrm{BE} が成立します。

a=AB=BCa = \mathrm{AB} = \mathrm{BC}b=AC=CEb = \mathrm{AC} = \mathrm{CE}c=AE=BEc = \mathrm{AE} = \mathrm{BE} を代入すると ab+ac=bc ab+ac = bc となります。両辺を abcabc で割ると 1a=1b+1c \dfrac{1}{a} = \dfrac{1}{b} + \dfrac{1}{c} が得られます。

証明2:図形の相似を用いる方法

下図の正七角形 ABCDEFG\mathrm{ABCDEFG} を考えましょう。

pic01

2つのステップに分けて計算をしていきます。

相似な二等辺三角形を作る

直線 BC\mathrm{BC} と直線 DE\mathrm{DE} の交点を H\mathrm{H} とおきます。

下図の青い三角形と赤い三角形は相似になります。

pic02

証明
  1. 青い三角形が二等辺三角形であること
    AD\mathrm{AD}AE\mathrm{AE} はどちらも長い方の対角線であるため,AED\triangle \mathrm{AED} は二等辺三角形である。

  2. 赤い三角形が二等辺三角形であること
    正多角形の外角は等しいため HCD=HDC=3607 \angle \mathrm{HCD} = \angle \mathrm{HDC} = \dfrac{360^{\circ}}{7} となる。
    よって BHD=1802×3607=5407\begin{aligned} &\angle \mathrm{BHD} \\ &= 180^{\circ} - 2\times \dfrac{360^{\circ}}{7}\\ &= \dfrac{540^{\circ}}{7} \end{aligned} となる。
    ここで BCD\triangle \mathrm{BCD} が二等辺三角形であることに注意すると,2BDC=HCD2\angle \mathrm{BDC} = \angle \mathrm{HCD} である。
    ゆえに BDH=1807+3607=5407=BHD\begin{aligned} &\angle \mathrm{BDH} \\ &= \dfrac{180^{\circ}}{7} + \dfrac{360^{\circ}}{7}\\ &= \dfrac{540^{\circ}}{7}\\ &= \angle \mathrm{BHD} \end{aligned} となる。つまり BDH\triangle \mathrm{BDH} は二等辺三角形である。

  3. 2つの三角形が相似であること
    円周角の定理を用いると EAD=DBH\angle \mathrm{EAD} = \angle \mathrm{DBH} である。
    それぞれ二等辺三角形であるため EADA=DBHB(=1) \dfrac{\mathrm{EA}}{\mathrm{DA}} = \dfrac{\mathrm{DB}}{\mathrm{HB}} (=1) である。
    二辺比挟角相当より AED\triangle \mathrm{AED}BDH\triangle \mathrm{BDH} は相似になる。

相似比から計算する

相似比を見ると DEAE=HDBD() \dfrac{\mathrm{DE}}{\mathrm{AE}} = \dfrac{\mathrm{HD}}{\mathrm{BD}} \quad \cdots (\ast) となります。

それぞれの辺の長さは,DE=a\mathrm{DE} = aAE=c\mathrm{AE} = cBD=b\mathrm{BD} = b となります。

また, DH=CH(HCD は二等辺三角形)=BHBC=BDBC  (BDH は二等辺三角形)=ba\begin{aligned} &\mathrm{DH}\\ &= \mathrm{CH} &(\triangle \mathrm{HCD} \ \text{は二等辺三角形})\\ &= \mathrm{BH} - \mathrm{BC}\\ &= \mathrm{BD} - \mathrm{BC} \ \ &(\triangle \mathrm{BDH} \ \text{は二等辺三角形})\\ &= b-a \end{aligned} と計算されます。

()(\ast) に代入して ac=bab\dfrac{a}{c} = \dfrac{b-a}{b},つまり ac=1ab\dfrac{a}{c} = 1 - \dfrac{a}{b} を得ます。

両辺を aa で割って 1a=1b+1c \dfrac{1}{a} = \dfrac{1}{b} + \dfrac{1}{c} が得られました。

今回紹介した等式の証明が灘高校や開成高校の入試問題として登場したこともあります。