半正多面体と準正多面体

  • 半正多面体準正多面体の意味を説明します。
  • 半正多面体全13種類を紹介します。
  • 13種類しかないことを証明します。

半正多面体とは

対称性の高い多面体を考えます。

  1. 正多面体(regular polyhedron)とは,「1種類の正多角形のみからなる」「すべての頂点まわりが合同な」「凸な」多面体です。
    正4面体,正6面体,正8面体,正12面体,正20面体の5つのみです。 →正多面体が5種類しかないことの2通りの証明 pic01

次に,使う正多角形の種類を2種類以上でもOKとしてみましょう。

  1. 準正多面体(quasi-regular polyhedron)とは,「正多角形のみからなる」「すべての頂点まわりが合同な」「すべての辺まわりが合同な」「凸な」多面体です。ただし,正多面体は除きます。準正多面体は,後述の立方八面体と二十・十二面体の2種類のみです。

さらに,「辺まわりが合同」を諦めましょう。

  1. 半正多面体(semi-regular polyhedron, アルキメデスの立体)とは,「正多角形のみからなる」「すべての頂点まわりが合同な」「凸な」多面体です。ただし,正多面体と対称性が低い特殊な立体(角柱・反角柱・ミラーの立体)は除きます。半正多面体は13種類あります。

さらに,「凸」も諦めましょう。

  1. 一様多面体とは,「正多角形のみからなる」「すべての頂点まわりが合同な」多面体です。ただし,角柱・反角柱・ミラーの立体は除きます。一様多面体は75種類あります。

なお,この記事における,2~4の定義および図は Wikipedia のものを引用・加工しています。

半正多面体一覧

正多面体の頂点を「少し」切り落とした5種

正多面体の角をちょっと切り落とすと,半正多面体になります。

例えば,正4面体の角4つを切り落とすと切頂4面体という立体になります。 切頂4面体の図 ただし,切り落としてできる辺と,「もとの正多面体の辺で残る部分」の長さが同じになるように切り落とします。 切頂4面体は「4面体を切り落とした多面体」です。面の数は4つではなく8つです。

正多面体は5つあるので,このようにして半正多面体が5つ得られます。 切頂多面体 切頂20面体はサッカーボールです!

正多面体の頂点を「辺の中央まで」切り落とした2種

正6面体(立方体)の8つの角を辺の中央まで切り落とすと半正多面体が得られます。 立方8面体 これを立方8面体と言います。実は,正8面体の角を中央まで切り落としたものも同じ立方8面体になります。「立方体」と「正8面体」のハーフということで「立方8面体」です。

同様に,「正12面体の角を辺の中央まで切り落とす」あるいは「正20面体の角を辺の中央まで切り落とす」と二十・十二面体という半正多面体が得られます。 二十・十二面体

この2種はどの辺まわりも合同なので,準正多面体です。

ちなみに,正4面体の各角を辺の中央まで切り落とすと正8面体になります。

正多面体2種類と「斜めの正方形」でできる2種

斜方立方8面体という半正多面体があります。これは,

  • 斜方(斜めの正方形12枚)
  • 立方体(の正方形6枚をひきはがしたもの)
  • 正8面体(の正三角形8枚をひきはがしたもの)

からなります。 斜方立方8面体

同様に,斜方二十・十二面体という半正多面体もあり,これは

  • 斜方(斜めの正方形30枚)
  • 正20面体(の正三角形20枚をひきはがしたもの)
  • 正12面体(の正五角形12枚をひきはがしたもの)

からなります。 斜方二十・十二面体

その他4種

残りの4つは図を見てください。

半正多面体残り4つ

  • 斜方切頂立方8面体は,立方8面体の各頂点を切った形に似ています。
  • 斜方切頂二十・十二面体は,二十・十二面体の各頂点を切った形に似ています。
  • 変形立方体は,立方体の正方形6枚をひきはがして間に三角形を入れたらできます。
  • 変形12面体は,正12面体の正5角形12枚をひきはがして間に三角形を入れたらできます。

13種類しかないことの証明

定理

半正多面体は上記の13通りのみ。

証明

半正多面体では頂点まわりが合同なので,1つの頂点のまわりにある正 qiq_i 角形たちの並び (q1,q2,...,qn)(q_1,q_2,...,q_n) で表せる。

例えば,立方8面体は (3,4,3,4)(3,4,3,4) と表せる。 立方8面体の表示

  • qq 角形の1つの内角は 180×q2q180\times\dfrac{q-2}{q} 度であり,1つの頂点に集まる角度の和は 360360^{\circ} 未満なので, i=1n180×qi2qi<360\sum_{i=1}^n 180\times\dfrac{q_i-2}{q_i}<360 となる。これを整理すると, n21<1q1++1qn\dfrac{n}{2}-1<\dfrac{1}{q_1}+\cdots+\dfrac{1}{q_n} となる。

  • 1種類だと正多面体になるので,(q1,...,qn)(q_1,...,q_n) は2種類以上から構成される。

  • n6n\geqq 6 だと,1つの頂点に集まる角度が 360360^{\circ} 以上になるので凸多面体にならない。n2n\leqq 2 でも多面体にならない。

以上の条件を満たす (q1,...,qn)(q_1,...,q_n) をすべて列挙する。

  • n=5n=5 のとき
    四角形以上を2つ以上使うと集まる角度が 360360^{\circ} 以上になる。よって,4つは三角形であり,(3,3,3,3,4),(3,3,3,3,5)(3,3,3,3,4),(3,3,3,3,5) の2種類。作ってみると,変形立方体変形12面体になる。

  • n=4n=4 のとき
    全部四角形以上だと,集まる角度が 360360^{\circ} 以上になるので,三角形が1つはある。また,1つの三角形の3頂点まわりを全部合同にするには同じ正多角形を 22 つ以上使う必要がある(図で q2,q3,q4q_2,q_3,q_4 が相異なるとき,q43q_4\neq 3 と仮定できて,3頂点まわりを全部合同にするには x=q4,y=q3x=q_4,y=q_3 が必要だが zz をどのように決めても3頂点まわりを全部合同にはできない)。 半正多面体の条件1 つまり,q1=3,q2=q4q_1=3,q_2=q_4 とおける。紫文字の制約は, 1<13+2q2+1q31<\dfrac{1}{3}+\dfrac{2}{q_2}+\dfrac{1}{q_3} となる。この式は,

    • q24q_2\geqq 4 なら簡単に全列挙できる。具体的には,(3,4,3,4)(3,4,3,4)(3,5,3,5)(3,5,3,5)(3,4,4,4)(3,4,4,4)(3,4,5,4)(3,4,5,4) の4種類で,それぞれ立方8面体,二十・十二面体,斜方立方8面体(※),斜方二十・十二面体ができる。
    • q2=3q_2=3 とすれば q3q_3 は何でもOK。(3,3,3,n)(3,3,3,n) という無数の解ができるが,これは反角柱なので例外(半正多面体ではない)。 反角柱の例
  • n=3n=3 で奇数角形を使う場合
    q1q_1 を奇数とする。1つの q1q_1 角形の頂点まわりを全部合同にするには q2=q3q_2=q_3 が必要。 半正多面体の条件2

    • q1=5q_1=5 の場合,q2=q3=4q_2=q_3=4 だと正5角柱で例外。q2=q3=6q_2=q_3=6 だと切頂20面体
    • q1=3q_1=3 の場合,q2=q3=4q_2=q_3=4 だと正3角柱で例外。q2=q3=6q_2=q_3=6 だと切頂4面体q2=q3=8q_2=q_3=8 だと切頂6面体q2=q3=10q_2=q_3=10 だと切頂12面体
  • n=3n=3 で奇数角形を使わない場合
    全部6角形以上だと,集まる角度が 360360^{\circ} 以上になるので,四角形を1つは使う必要がある。 q1=4q_1=4 とする。

    • q2=4q_2=4 のとき,q3q_3 は何でもOK。無限個解ができるが,これは角柱なので例外。
    • q2=6q_2=6 のとき,q3=6q_3=6 だと切頂8面体q3=8q_3=8 だと斜方切頂立方8面体q3=10q_3=10 だと斜方切頂二十・十二面体
    • q2q_2q3q_388 以上だと集まる角度が 360360^{\circ} 以上になる。

(3,4,4,4)(3,4,4,4) からは斜方立方8面体だけでなく,上側と下側がずれている「ミラーの立体」というものもできます。これは例外扱いで,半正多面体とは考えません。 ミラーの立体

1000記事目なので気合入れて書きました。これからもよろしくお願いします!