攻略! ε-N/ε-δ 論法~その3~

イプシロン-エヌ論法

任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して,ある NN が存在して,n>Nn > N なら anα<ε|a_n-\alpha| <\varepsilon を満たすとき,数列 {an}\{ a_n \}α\alpha に収束するといい,limnan=α\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_n = \alpha と書く.

イプシロン-デルタ論法

任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して,ある δ\delta が存在して,xx0>δ|x - x_0| > \delta なら f(x)α<ε|f(x)-\alpha| <\varepsilon を満たすとき,関数 f(x)f(x)=x0ⅹ=x_0α\alpha に収束するといい,limxx0f(x)=α\displaystyle \lim_{x \to x_0} f(x) = \alpha と書く.

この記事ではイプシロンエヌ論法とイプシロンデルタ論法の練習問題とその解法を紹介します.

問題

例題1

f(x)=x2f(x) =x^2 の連続性をイプシロンデルタ論法に則って証明せよ。

例題2

OOR\mathbb{R} の部分集合とする。CC を正の定数とする。

ffOO 上定義された実関数とする。

任意の x,yOx , y \in O に対して f(x)f(y)Cxy | f(x) - f(y) | \leqq C |x-y| となるならば,ff は連続であることを示せ。

例題3

x=(x1,x2)R2x = (x_1 , x_2) \in \mathbb{R}^2 に対して x\| x \|x=x12+x22\| x \| = \sqrt{{x_1}^2 + {x_2}^2} と定める。また,Δ={xR2x1}\Delta = \{ x \in \mathbb{R}^2 \mid \| x \| \leq 1 \} と定める。

d(x)Rd(x) \in \mathbb{R}d(x)=infyΔ{xy} d(x) = \inf_{y \in \Delta} \{ \| x-y \| \} と定める。

d(x)d(y)xy | d(x)-d(y) | \leqq \| x-y \| を示すことで,この関数が連続であることを示せ。

例題1の解答

解答

aa を任意の実数とする。aa での連続性を証明する。

ε>0\varepsilon > 0 を任意に取る。xa<δ|x-a| < \delta であれば x2a2<ε|x^2-a^2| < \varepsilon となる δ>0\delta > 0 を求める。

xa<δ|x-a| < \delta であれば aδ<x<a+δa-\delta < x < a+\delta であるため,2aδ<x+a<2a+δ2a - \delta < x+a < 2a + \delta となる。

よって x+a<2a+δ|x+a| < 2|a| + \delta である。

x2a2=x+axa<(2a+δ)δ\begin{aligned} | x^2 - a^2 | &= |x+a| \cdot |x-a|\\ &< (2|a|+\delta) \delta \end{aligned}

ここで t2+2atε0 t^2 + 2|a| t - \varepsilon \leqq 0 を解くと aa2+εta+a2+ε-|a|-\sqrt{a^2+\varepsilon} \leqq t \leqq -|a|+\sqrt{a^2+\varepsilon} となるため,δ=a+a2+ε\delta = -|a| + \sqrt{a^2 + \varepsilon} と取ると x2a2<2(a+δ)δε |x^2-a^2| < 2(|a|+\delta) \delta \leqq \varepsilon を得る。

例題2の解答

この例題の条件をリプシッツ条件といいます。微分方程式の解の一意性に関係してきます。

→ リプシッツ条件と微分方程式の解の一意性

解答

ε\varepsilon を任意の正の実数とする。

x0Ox_0 \in O を任意に取る。δ=εC\delta = \dfrac{\varepsilon}{C} とする。

xxxx0<δ|x - x_0 | < \delta を満たすとき, f(x)f(x0)Cxx0(条件)<CεC(仮定)=ε\begin{aligned} | f(x) - f(x_0) | &\leqq C |x-x_0| &(\text{条件})\\ &< C \dfrac{\varepsilon}{C} &(\text{仮定})\\ &= \varepsilon \end{aligned} である。

よって ff は連続である。

例題3の解答

この dd もリプシッツ連続となっていますね。実は東大の院試の過去問の一部となっています。

解答

x0R2x_0 \in \mathbb{R}^2 を任意に取る。x0x_0 で連続であることを示せばよい。

ε>0\varepsilon > 0 を任意に取る。

zΔz \in \Delta を任意に取る。

三角不等式より xzxy+yz \| x-z \| \leqq \| x-y \| + \| y-z \| となるため, d(x)=infzΔ{xz}infzΔ{xy+yz}=xy+infzΔ{yz}=xy+d(y)\begin{aligned} &d(x)\\ &= \inf_{z \in \Delta} \{ \| x-z \| \}\\ &\leqq \inf_{z \in \Delta} \{ \| x-y \| + \| y-z \| \}\\ &= \| x-y \| + \inf_{z \in \Delta} \{ \| y-z \| \}\\ &= \| x-y \| + d(y) \end{aligned} となる。よって d(x)d(y)xyd(x) - d(y) \leqq \| x-y \| である。

xxyy を入れ替えて d(y)d(x)xyd(y) - d(x) \leqq \| x-y \| ともなるため, d(x)d(y)xy | d(x) - d(y) | \leqq \| x-y \| を得る。

δ=ε\delta = \varepsilon と取ると,xy<δ\| x-y \| < \delta であれば d(x)d(y)<ε| d(x) - d(y) | < \varepsilon となる。

よって連続であることが示された。

最後の問題は骨太でした。