第4問
O を原点とする xy 平面を考える。直線 x=1 上に点 A を取る。直線 OA の x≦0 の部分に AB=2 を満たす点 B が存在するとき, 以下の問いに答えよ。
(1) 直線 OA と x 軸がなす角を, x 軸の正方向から反時計回りを正として測って t(−2π≦t≦2π) とする。OB=r(r≧0) とするとき, r を t を用いて表せ。
(2) 点 A が直線 x=1 上をくまなく動くとき, 点 B の軌跡を C とする。曲線 C の y 座標の最大値を求めよ。
(3) 曲線 C によって囲まれる領域の面積を求めよ。
第4問は極座標表示で表される点の軌跡と, その面積を求める積分の問題です。積分計算では数学3の分野の知識が求められます。
第2回大会の6問セットのうち最も計算が重い大問です。
まずは(1)を解きながら, 問題の状況を掴み, ミスなく根気よく計算していきましょう。
第4問(1)
OA=AB−OB=2−r
である。
点 A は x=1 上の点であるから
(2−r)cost=1
したがって
r=2−cost1
まずは図を書きながら, 点 A, B の位置関係を把握しましょう。
次に(2)です。まず頭の中で点 A が直線 x=1 上をくまなく動く様子を想像してみましょう。単純な動きなのでそれほど難しくはないはずです。
また, 点 A の y 座標が大きすぎたり小さすぎたりすると点 B が存在しないことにも気がつきます。
問題文中で t の範囲は −2π≦t≦2π とされていますが, 必ずしもこの範囲に含まれる任意の t で題意の状況が満たされる訳ではありません。
第4問(2)
−2π≦t≦2π のもとで, r≧0 より
r=2−cost1≧0⟺cost≧21⟺−3π≦t≦3π⋯⋯(1)
点 B の座標を (x,y) と置くと
{x=−rcost=1−2costy=−rsint=tant−2sint
t が 範囲(1)を動くとき, y=tant−2sint の軌跡は x 軸に関して対称である。
y の最大値を考えたいので, y が y≧0 の領域を動くような t の範囲
−3π≦t≦0⋯⋯(2)
について考えれば十分である。
dtdy=cos2t1−2cost=0⟺cost=(21)31⋯⋯(3)
である。
21<(21)31<1 に注意すると, 範囲(2)には式(3)を満たす実数 t がただ一つ存在する。この t を t0 とする。
これらに注意すると y の増減表は以下のようになる。
tdtdyy−3π0⋯+↗t00ymax⋯−↘00
y 座標は t=t0 で最大値 ymax をとる。
式(3)より
sint0=−1−(21)32tant0=−232−1
である。
232−1 =X と置くと,
sint0=−X+1Xtant0=−X
であり,
ymax=tant0−2sint0=−X+2X+1X=X(−1+X+14)=X(−1+232)=232−1(231+1)(231−1)=(232−1)(231+1)2(231−1)
となる。平方根の内部を整理すると
(232−1)(231+1)2=(232−1)(232+234+1)=234+236+232−232−234−1=3
であるから,
ymax=3(32−1)
解答の手順は単純です。
- 図形的に y=−rsint であること
- (1)の結果を利用して r を消去すること
によって, y を t の1変数関数に変換します。
こうすることで一気に解答の見通しが立ち, 「t で微分して最大値を求めれば良い」とわかるでしょう。
問題は ymax の整理です。
解答フォームをみると 32−お の形が見えますので, この形をくくり出せるように計算を進めていきましょう。
解答フォーム
2え(32−お)
指数法則による計算は難なくできるでしょうか?
指数の計算は和と積を取り違えるミスなどが発生しやすいです。実際、指数が計算に入ってくるだけでストレスフルな計算になることが多いです。
入試本番の緊張感の中でもスラスラと計算できるように指数法則を再度確認しておきましょう。
→指数法則の直感的な意味と利用例
第4問(3)
曲線 C を図示すると下図のようになる。
曲線 C の x 軸に関する対称性から, 範囲(2)のもとで考える。
範囲(2)において x の増減表は以下の通りになる。
x=1−2cost
dtdx=2sint
tdtdxx−3π−0⋯−←00−1
したがって, 求める面積を S とするとき
2S=∫−10ydx=∫0−3πydtdxdt=∫0−3π(tant−2sint)⋅2sintdt=2∫0−3π(costsin2t−2sin2t)dt=2∫0−3π(cost1−cos2t−1+cos2t)dt=2∫0−3π(cost1−cost−1+cos2t)dt=2∫03π(−cost1+cost+1−cos2t)dt
である。
第一項について
I1=∫03πcost1dt=∫03π(1+sint)(1−sint)costdt=21∫03π(1+sintcost+1−sintcost)dt=21[log∣∣1−sint1+sint∣∣]03π=21log2−32+3=log(2+3)
である。
第二項以降について
I2=∫03π(cost+1−cos2t)dt=[sint+t−21sin2t]03π=23+3π−43=43+3π
である。以上から
2S⟺S=2(−I1+I2)=4(−I1+I2)=−4log(2+3)+3+34π
ミスなく計算できたでしょうか。
(3)で最も理解しておくべき変形は, 積分計算の先頭で
∫−10ydx=∫0−3πydtdxdt
としている部分です。
積分区間を x:−1→0 から t:0→3π に移し, さらにy(t), x(t) を用いることでt の積分計算に帰着しています。
極座標表示された軌跡の積分計算では頻出の手法なのでよく理解しておきましょう。
また, 不定積分
∫cost1dt
はすぐに計算できましたか?
このような不定積分の計算はあくまで「基礎訓練」の域を出ませんが, こうした基礎訓練がどれほど定着しているかで完答できるか否かが左右されることもあるのです。
高校数学の範囲の不定積分はいくら難しいとはいえ, 形はある程度限られるものです。訓練を積みましょう。
訓練を積めば, 不定積分の式を見た瞬間に
cost1=21(1+sintcost+1−sintcost)
と頭の中で変形できるようになり, log の出番だとわかるようになります。
背景テーマ1:極方程式の面積公式
面積を求める積分計算ですが, 極方程式から面積を求める以下の公式を用いて計算することもできます。
極方程式の面積公式
r(θ)
が連続関数のとき,極方程式
r=r(θ)
で表される曲線と
θ=α,β
で囲まれる部分の面積は,∫αβ21r(θ)2dθ で表される。
この公式を用いると以下の式が直ちに得られます。
2SS=∫−3π021(2−cost1)2dt=∫03π(2−cost1)2dt=∫03π(4−cost4+cos2t1)dt
あとは上で述べたように計算すれば正答が得られます。
極座標の面積公式について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください
→極方程式の面積公式と例題
背景テーマ2:ニコメデスのコンコイド
コンコイド
コンコイドとは, 極方程式
r=cosθa+b
で表される曲線であり, ニコメデスのコンコイドとも呼ばれる。
この問題では a=−1, b=2 の場合のコンコイド曲線の一部が軌跡 C として出題されています。
実際にはコンコイド曲線は軌跡 C のみではありません。
直線 OA 上で, AB=AD となるような点 D を, 点 A に関して点 B と反対側に取ることができます。
点 A が直線 x=1 上をくまなく動くときの点 D の軌跡もまたコンコイドの一部です。
コンコイドをテーマにした問題は, 東大(理系)でも2017年度入試に登場しています。
コンコイドのチャレンジ問題として, 「2017年 第6問」にチャレンジしてみましょう。
→東大理系数学2017 解答・解説